チェリーの音楽幕府

音楽の話題が多いと見せかけてそうでもない

イチロー引退

ついにこの日が来た。イチロー引退。

自分にとって野球は、子供の頃はそれなりに夢中になったが、大きくなってからは徐々に興味の対象外になりつつあった。

そこに現れたのがイチロー
そのスリムでいてシャープなバッティング、守備も打撃もセンスそのものといったプレー、そしてその独特な感性はそれまでのプロ野球選手では見たこともない鮮烈な衝撃だった。

もうすでにペナントレースには興味がなくなっていたが、ただただイチローの姿を見たくて毎晩のスポーツニュースをハシゴした。(オリックスの試合は中々中継してくれなかったので)

のちにメジャーリーグに行ってからは毎試合中継してくれるようになったので、毎試合釘付けになった。
ただ、試合を観るというよりはやっぱりイチローだけを見ていたというのは否めない。
そう考えると、相当ミーハーだったんだな、俺。

中でも最も印象深かったのはやはり何と言っても2009年のWBC決勝での韓国戦のタイムリーヒットだろう。
野球を観ていてあの時ほど心臓が破れそうなくらいに感動し興奮したことは後にも先にもない。
「神がかり」というのはまさにこのことで、その全てが頼もしくカッコよかった。

 イチロー選手と同時代に生きて、そのプレーをテレビ越しとはいえ逐一体験できたことは、自分にとって最高の幸せであり、誇りに思う。

しかしイチローがいなくなってしまって、自分がこれから野球を観ることがあるのだろうか?

それくらい、この20数年間というもの、自分にとっての「野球」といえば「イチロー」そのものだった。

これからの彼が何をするのか、興味深く見守っていきたいと思う。

 

今更ながらの後追いで聴くユーミンアルバムレビューーその11ー(2003)

1973年の『ひこうき雲』から2016年の『宇宙図書館』まで、実に43年間に及ぶユーミンの全てのオリジナルアルバム38枚を辿ってきたが、その間2003年にユーミンが他者に提供した楽曲のセルフカヴァーアルバムがあった。
全曲新録でおまけにかなりクオリティも高かったので、書き留めておくことにする。

39. Yuming Compositions: FACES('03)松任谷由実

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まず特筆すべきは、ユーミンのアルバムはこれまでほぼ全曲松任谷正隆氏の手によるアレンジだったが、このアルバムではその多くがその手を離れリッキーピーターソン氏に委ねられたことで、他のアルバムでは味わえない新鮮な感覚があった。

セルフカヴァーと言っても、ユーミンが他者に提供した楽曲の極々一部に過ぎず、知らない曲もあったが、それにしたってどれもこれも名曲ばかり。
1曲めの稲垣潤一に提供した『オーシャン・ブルー』のイントロが流れたときから、今までなかった世界にワクワクする。

やさしさに包まれたなら』では、若き日の荒井由実とのデュエットも面白い。

『星のクライマー』は初めて聴いたが、マッキンリーで消息を絶った冒険家の植村直己さんをイメージした歌詞とのことで、グッとくる。
曲は麗美なのに敢えてセルフカヴァー集に収録したということは、ユーミンもかなり気に入っている歌詞なのだろう。

松田聖子の『瞳はダイアモンド』ではユーミンお得意のオートチューンでガッチガチに固めた中低音域のクローズドなハーモニーの壁が気持ちいい。

名曲『ベルベット・イースター』もハイセンスなアレンジに乗って、歳を経てこその歌が身にしみる。

一曲一曲が名曲である上に、それぞれのクオリティも高いので、オリジナルアルバムに引けを取らない何度も聴ける優れたアルバムだと思う。

しかしそれにしてもこのアルバムジャケットは一体どうしたことか…(^_^;)

 

【この1曲】

『Woman”Wの悲劇”より』

オリジナルの薬師丸ひろ子バージョンは、自分にとってかなり思い入れが深く、これ以上のアレンジはありえないくらいに思っていたのだが、こちらのアレンジもオリジナルに勝るとも劣らないほど素晴らしい。

やはり名曲は年月を超えて、永遠に輝きを失わない。

 

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8年目の3.11

3月11日。

今年もこの日がやってきた。
この日がやってくる度に、今こうして自分が元気に生きて、ささやかながらも平穏で幸せでいられることに改めて感謝している。

しかしその一方で、ある日突然この日常の平穏とささやかな幸福が一瞬にして崩れ去り、大切なものを何もかも失ってしまうことがあるということも、紛れもない現実としてまざまざと見せつけられた。

長い人生では、いつそれが起きても不思議ではないという覚悟は常に持っていなければならないことも学んだ。

これから何年経っても、自分のそれまでの人生観を一変させたこの日のことは、忘れることはないだろう。

 

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今更ながらの後追いで聴くユーミンアルバムレビューーその10ー(2013-2016)

長きに渡って荒井由実デビュー作『ひこうき雲』から1作ずつ追ってきたアルバムレビューもついに最新作までたどり着いた。

時代はいよいよ2010年代。還暦を迎えようとするユーミンである。

 

37POP CLASSICO('13)松任谷由実

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冒頭、オーケストラのチューニングから始まり、否応なしにワクワク感が刺激される中始まる『Babies are popstars』の最初のメロディーがとてもいい。
これは自身が産まれた時のことを歌っているのかな?

この曲を始め、他の曲もどこかクラシカルなフレーズを用いた曲が多く、オーケストラもふんだんに使われていて、まさに『POP CLASSICO』というタイトル通り。

しかしアルバム中の当たり外れの曲の差が大きい事が多いユーミン、今回の「当たり曲」が後半に集中していることで、最初聴いた時は途中でかなりテンションが下がって「今回はイマイチか」と感じてしまったのが残念。
何度も聴くといい曲もたくさんあることに気づくんだけど。
特にM9〜M12『Early Springtime』『夜明けの雲』『シャンソン』『MODELE』の名曲4連チャンは圧巻。
もうちょっとバラせばよかったのに(^_^;)

それ以外でも『Your Eyes Are Magic~終止符をおしえて』は70年代の頃のような懐かしい(古臭いとも言う)イントロから始まり、当時を彷彿とさせる余裕のアレンジでユーミン節満載の安心の良曲。

 この頃になるとユーミンの声の衰えを感じざるを得ないが、よく聴いてみると明らかに衰えたのはファルセット部分であって、低域部分は逆に迫力を増している。
昔は封印していたビブラートもバリバリ全開で、これはこれでシャンソン歌手のような年齢にふさわしい味わいが増しているとも言える。

しかしその表現も感情を込めすぎるとやや過剰でくどく感じる時もあり、その名も『シャンソン』などは、昔のような突き放すような歌い方だったら崇高な名曲になっていたのに…と思うとやや残念。

★7

 

【この1曲】

『Early Springtime』

歳を取ってさすがユーミンとうなってしまう曲もまだまだあるのだが、正直昔のようなメロディのキレが薄れつつあるかな〜と感じていた所にこの曲。
ユーミン永遠の憧れプロコル・ハルムを彷彿とさせるオルガンのイントロから始まり、この全てがひれ伏す圧倒的なサビのメロディーときたらどうだ! 
いやいや、参りました。還暦目前でまだまだこんなメロディが書けるユーミン、さすがです。

 

 

38. 宇宙図書館('16)松任谷由実

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さあこれが現時点でのユーミンの最新作。ついにここまで来た。

『宇宙図書館』という壮大なタイトルの表題曲。
そのイントロから確信する高まる期待通りの、どこを切っても完璧な名曲。

この曲を筆頭に、今作はかなりの高レベルの曲が並ぶ。

『あなたに会う旅』は「これぞユーミン!」と言うべきとてもいい曲。
イントロのギターは自分には大貫妙子の『五番目の季節』を思い出してしまう。

『私の心の中の地図』もしみじみいい曲。

還暦を迎えてもまだまだユーミンの創作意欲は衰えていない。

ただやっぱり「この曲なんで入れたんだろう?」と疑問に感じてしまう曲もわずかにあるのがユーミンらしい。
例えば『星になったふたり』のチープなシンセの音は、まるで我々世代が学生時代に初めてアナログシンセ(JUNO106とかPOLY800とか!)を買って嬉しくてとりあえず作ってみました的雰囲気(ちょっと言い過ぎすみません)があるし、『月までひとっ飛び』は若い頃ならいざしらず、この歳になってどジャズをやられてしまうと、どうしても「ユーミンJAZZを唄う」的大御所歌手の企画モノの匂いがしてしまってどうもいけない。

ユーミンの歌の中で常に時を越えて、夢の中でも会いたい「あなた」や「君」はかつては別れた元彼だったものだが、年齢を重ねた今では、もう永遠に会えない死者を連想させるようになった。 
そういう意味で人生そのものを想起させる重厚な歌詞が多い。

★7

 

【この1曲】

『宇宙図書館』

やはり表題曲のこの曲。
壮大なタイトルといい、感情を揺さぶられる歌詞といい、クラシカルで荘厳な曲調といい、全てが完璧で素晴らしい名曲。
これも死者を懐かしむ歌。

 

 

 

さて、ついに最新作まで追いついた。

次回はまた最初に戻って全てのアルバムを聴き直して、総括編としたい。

結構あとから聴き直すと最初の印象と変わっていたりするんだよね(^_^;)

 

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体組成計で体調管理

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毎日体重を測るのを習慣にしているせいか、20代の頃から体重はほとんど変わっていない。
特にダイエットということはしていないのだが、体重の増加傾向が見えてきたら間食を控えたり食事の量を減らすことで、不思議とキープできてきた。

これまでずっと手書きで体重を記録してきたのだが、最近はスマホで自動管理できるらしいので、新しいのを買うことにした。
当初は2000円台からある安い中華製のにしようと思ったのだが、記録するアプリや通信サーバーが終わってしまったらそれまでなので、多少高いが安心の日本製(オムロン)を買った。

これがスグレモノ!
体重計に乗るだけで電源が入り、人物を自動判別し、勝手にBluetoothスマホにデータを送ってくれるので、自分は何も操作する必要がない。
血圧計もオムロン製のを買えばこのアプリに自動転送して体重も血圧もまとめて一括管理くれるらしいので、この際だから血圧計も買うことにした。
便利になったね〜(*゚∀゚)

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J☆Dee'Z(ジェイディーズ) 9thシングル 『明日も、世界は回るから。/Re:100万回の「I love you」』を聴いて

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J☆Dee'Zの9thシングル 『明日も、世界は回るから。/Re:100万回の「I love you」』がリリースされた。
この記事はその時(去年の11月)に途中まで書いていたのだが、気がつけばもう次のアルバムがもうすぐリリースとなるので、慌てて公開することにする。うっかりしていた。時間が経つのは早い!(^o^;)

まず表題曲『明日も、世界は回るから。』軽快でちょっと切ないポップチューン。
3人それぞれの表現力が今まで以上に磨かれ、細かい歌いまわしなどにも工夫と成長の跡が見られる。
Nonoが歌う「つながっていたらいいな〜」の「が」の所とか凄くいいよね。
ハーモニーもかなり高度なことをやっていて、ボーカルグループとしての自信の芽生えが窺える。
ラストの「歩いてく〜」の繰り返し部分での、J☆Dee'Zお得意の同じメロディーをユニゾン→ハモリへの広がりが気持ちいい。
大サビ「幸せもラッキーも」から「だから顔上げて」への展開部分がゾクゾクするほどカッコイイ。
間奏であの『Answer』のイントロのフットステップによく似た(同じ?)音が現れてニヤリとさせられたりと、とても良く出来た曲。


「明日も、世界は回るから。」/J☆Dee’Z(ジェイディーズ)


続く『Re:100万回の「I love you」』は、ヒット曲のアンサーソングとのことだが、自分は元曲を知らないので完全に新曲として聴いた。
この曲でも3人それぞれの歌いまわしなどの表現に工夫の跡が感じられる。
ただそれにしてもキーが高すぎる。J☆Dee'Zはライブのダンスも激しいので、もうちょっと安定して出せるキーで聴いてみたかった。
あと、ギターソロ(だよね?)が小さいのはなんで〜???

それに両A面のこの2曲、どちらもピアノのイントロで始まり、曲調も似ているので時々区別がつかなくなる。


『Re:100万回の「I love you」』360°Video/J☆Dee’Z(ジェイディーズ)

そして3曲めは『君にStrike』。
出だしは「げっ、アイドルソング!?」と思ってしまうが、「いつかいつか絶対」で突然真っ黒ファンキーになって安心する。そのギャップが実に面白い。
「アウトでもセーフでもない〜」でのNonoのとろけそうな色気たっぷりの歌がたまらない。こういう表現のNonoはピカイチ。

 ラストは『Secret Dancer』。
待ってましたのファンキーナンバー!
自分にとっての今回のベストトラック。
曲調もノリノリでライブでも盛り上がること間違いなし。

全て通して感じたのは、ボーカルディレクションの確かさ。
実は前作では個人的に「え、これをOKにしたの?」という部分があり、ややディレクションに疑問に感じるところがあったので、今回はそれがなくなって安心した。

そして個々の歌に関して気づいたのは、amiの歌に軽くビブラートが掛かるようになっていたこと。
これは今まで禁じられていたものが解禁されたのか、ナチュラルで掛かっていたものをコントロールできるようになったのかは定かではないが(おそらく後者だと思う)、いわゆるこれみよがしなものではなくて、ナチュラルで控えめで好感の持てるものなので、これまでひたすら真っ直ぐ一辺倒だった(それも魅力ではあったが)amiの歌の表現力の幅が広がるのでいい事だと思う。

そしてMOMOKAは、ボイトレの効果が出ていて、よく喉が開くようになり、発声に余裕が出てきて声量も増し、以前の線の細さがなくなって安定してきた。
そしてウィスパー唱法を会得しつつあるようだ。これは今後大きな武器になると思う。
元々ライブでのピッチと声量の安定感はピカイチなので、ますます頼もしい存在になってきた。
もしNonoとamiだけだったら歌声ではJ☆Dee'Zはかなり男前のグループになっていたところを、MOMOKAの女の子らしい声で華やかさを彩っているので、そういう意味でもJ☆Dee'Zにとって重要な存在。

そしてNono。
元々J☆Dee'Zの歌では頭一つ抜きん出てリードしてきたが、前作ではどうしたことかやや迷いが見られた気がした。
それが今作では自信を取り戻して堂々たるNonoが戻ってきた。
歌割りパートも重要な部分を多く任され、やはりJ☆Dee'Zの歌のエースは今でもNono。
MOMOKAとamiも凄い勢いでグングン迫ってきているので、これからもいい影響を与えあってJ☆Dee'Zを引っ張っていって欲しい。 

そうこうしているうちについに間もなくJ☆Dee'Zにとってのファーストアルバム『Jewel』が発売される。
ついに訪れたブレイクのチャンス。
今年のJ☆Dee'Zの大きな飛躍に期待したい。

Little Glee Monster 日本武道館

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リトグリの武道館から数日が経過してもまだその興奮と感動から抜け出せない。

リトグリにとって2年ぶりの武道館公演。
その2年前の時は見逃していたので、自分にとっては初めて武道館で観るリトグリ
その初日に参加した。

今回の武道館公演は『Calling Over!!!!!』と題されており、昨年秋の『Calling!!!!!』ツアーからさほど時間も経っていないので、いわば秋ツアーの追加公演的位置づけだと思っていた。
ところがどうだ!彼女たちは秋ツアーからまた更に一皮も二皮もむけ、格段に成長した姿を見せてくれた。まさに『Over!!!!!

リトグリは毎回ライブを観るたびに、驚くほどの成長を見せてくれてはいたが、今回のその幅は史上最高レベル。 
間に4thアルバムリリースを挟んでいたことも大きいだろうが、この短期間でこれほど進化した姿を見せてくれるとは正直思ってもみなかった。

 どの辺が成長したのか?
全て!
と言いたいところだが、特に際立っていたのは、それぞれの歌の表現力のアップ。
歌いまわしはもちろん、息の使い方、音の出だしと消え際の抜き差しの処理、正確なピッチ感と、あらゆる部分が格段にブラッシュアップされていた。
もはやCD音源とは別物と言っていいほど。
そしてそれぞれのメンバーが、それぞれなりの表現で、歌詞をとても大事に伝えようとする強い意志が伝わってきた。
中でも『明日へ』は圧巻だった。

 以前はライブ中ごくわずか「おっとっと?」という場面があったが、今回はそんなことは全くなく、安心して歌の巻き起こす渦に身を委ねることができた。

メンバーみんなそれぞれ素晴らしかったが、中でも特に凄いと思ったのが芹奈
芹奈といえばリトグリの中でもずっと前から歌の面でもパフォーマンス面でも常にグループをリードして矢面に立ってきた立場であり、いつしかどこか「出来て当然」的やや不憫なポジションにあるのは気の毒だが、そんな常にのしかかるプレッシャーの中本当によく頑張っていると思う。
今回改めてそんな彼女の凄さを思い知った。
一時期感情過多な表現が目立ったが、それもすっかり落ち着き、いよいよ円熟味を増して、歌の表現においての緩急の付け方が絶妙だった。

バックを支えるバンドも鉄壁の演奏でリトグリの歌を支えてくれた。
CDを聴いた時に感じた音のチープさも生演奏によって全く感じられなかった。
やはりリトグリはライブに限る。

最新アルバム『FLAVA』を聴いて、彼女たちの今後の課題は「恐るべきガキども」からの脱皮だと感じたが、今回のライブでの旧曲の大胆なリアレンジは、そこに彼女たちが出した一つの答えだと思った。
もはや彼女たちはただの『歌うま少女』ではない、超一流のヴォーカルグループだ。

 演出もお見事で、途中中だるみ感を全く感じさせず、最後までステージに釘付けだった。
特に光の使い方が素晴らしかった。

 MCでは、彼女たちの武道館に対する並々ならぬ思い入れをそれぞれの表現で伝えてくれた。
そして一方では、一見順風満帆に見えるリトグリの活動の中でも、個々のメンバーにはそれぞれ色々な悩みがあることも窺わせる。
そんな中でもこうして素晴らしい歌を届けてくれる彼女たちには本当に感謝するしかない。
活動の幅が広がるにつれて、様々なプレッシャーに押しつぶされそうになることも多いだろうが、どうかみんなで力を合わせて頑張ってほしい。
なぜなら、歌の力で人の心に大きな感動を与えることのできる唯一無二のグループだから。

そして最後に触れておきたいのが、今回始めて導入された「着席指定席」。
これは素晴らしい試み。
特に武道館という会場では見晴らしがよく利き、疲労や苦痛を全く感じることなくステージのパフォーマンスに集中することができて非常にありがたかった。
「ライブは立って観るのが当然!」
「ライブ中に座って観るなんてアーティストに対しても失礼でしょ?!」
という風潮に一石を投じ、敢えてアーティスト側から提示されたこの試みは高く評価されていいと思う。
今まで「ライブは疲れるからどうも…」といった人たちにも幅広い年齢層にライブの入り口を広げることにもなると思うので、是非今後も続けて欲しい。
特にリトグリのような音楽は耳の肥えた年配の音楽好きの人たちにも是非体感してほしいしね。

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Little Glee Monster 4thアルバム『FLAVA』を聴いて

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リトグリ待望の4thアルバム『FLAVA』がついにリリースされた。

今回も昨年リリースされたシングル曲&カップリング曲に新曲4曲というラインナップは昨年1年間のベスト盤といった内容。

このアルバムの印象を一言で言うと、陳腐な言葉になってしまうが「少女から大人の女への狭間」という感じ。
これまでの女友達とワチャワチャ騒ぎ、時には仲違いしつつも互いを応援し合ったり、時には初々しい恋をしたりといった内容から、歌詞の内容も曲調も確実に大人の女への入り口を開き始めている。
そういう意味では今この時期のこのアルバムでしか表現できなかった儚い刹那を描いた世界と言えるかもしれない。

一通り聴いた中で自分にとってのベストトラックは『CLOSE TO YOU』と『君のこと』の2曲。
『CLOSE TO YOU』は以前にも言及したことがあるのでここでは詳しく述べないが、改めて聴いてもそのめくるめく折り重なる華やかなコーラスアレンジに心ときめく。

そして『君のこと』は今回初出しのまっさらな新曲。これが素晴らしい。
曲調は落ち着いたバラードで、その端正なアレンジと曲調は、ツイッターで言及している方がいたが、まるで初期のオフコースを彷彿とさせる。
歌詞も従来の初恋のトキメキから成長して、穏やかな将来を見据えた大人の恋愛。
リトグリもこんな歌が歌えるようになったんだな。
歌い方もそれぞれ新たな表現力を発揮していて、特にアサヒのウィスパー気味の歌唱は絶品。
リトグリはライブで更に魅力が2割増しになるので、この曲もライブでどんな表現をしてくれるのか今から楽しみでならない。

『CLOSE TO YOU』にしても『君のこと』にしてもどちらもアサヒがかなりフィーチャーされている。
ここからもわかるように、このアルバムではアサヒの成長と自信が著しい。
付属のライブDVDでの自信に満ちてひときわ輝いているステージ上のアサヒは、数年前の自信なさ気に一歩退いてはにかんでいた少女と同じ人物とは思えないほど。
そんなアサヒが気がつけばいつの間にかリトグリのエース格に育っていた。

太くて男前の声が多いリトグリの中にあって、アサヒの甘いのに抜けのいい声は、アイドルファン層にも訴求力がある。

以前からメンバー間からもメンタルの強さには定評がありながらも、天然ボケ担当のいじられキャラでかつ妹キャラとして可愛がれながら、人知れず努力を怠らず虎視眈々と密かに日夜牙を磨いていた小林あさひのサクセスストーリーにこれからも注目したい。

他の曲にも触れておくと、『世界はあなたに笑いかけている』は昨年あらゆる場面で披露されることが多く正直食傷気味ではあったが、やはり改めて聴いてみるとその完成度と楽曲の持つパワーはケタ違いに高く、堂々たるリトグリの代表曲の座を確立したと言える。

I BELIEVE』のメロディーは自分世代にはどうしても大事マンブラザーズバンドを思い出してしまって困る。イントロも大仰でちょっと自分の好みではない。
ただ力強い歌詞や曲調などは今の若い人にはウケるのかもしれないね。

 『恋を焦らず』は、まさにこういう曲を待っていた!というおじさんたちの大好物な曲。
随所で聴かれるバリサクやドラムのフィルの音色とかもうたまらないよね。
その60年代のモータウンミュージックをオマージュしたレトロなサウンドは、今は亡きエイミー・ワインハウスを彷彿とさせ、manakaが昨年の秋ツアーでエイミーをカヴァーしたのもこういう流れがあってのことと得心。
個人的にはあのカヴァーはとても嬉しかった。
「いやいやダメ彼はダメ〜」は最高だね。よくぞ攻めてくれたと思います。

『夏になって歌え』は、さすがいきものがかり水野良樹というべきソツのないポップバラード。今後長く歌われていくことになるだろう。
ちなみにこの曲がもしイントロドンで出題されたら、ユーミンの『ダンデライオン』か、オフコースの『さよなら』のどちらかと盛大に間違える自信がある(^_^;) add9つながりで。

『青い風に吹かれて』は、自分が思う「これぞリトグリ!」という曲。
こういう曲がたくさんあると個人的には嬉しい。

 さて、こうしてアルバム全体を聴いてみて、リトグリの歌の完成度は非常に高くて文句のつけようがないのだが、少し気になる点を挙げると、そのゴージャスなコーラスに比べてトラックのサウンドが生楽器不足でややチープに聴こえてしまうこと。

今のリトグリに制作費がないとも思えないので、もしかするとこの軽いサウンドは敢えて意図したものかもしれないが、せめてドラムやブラスやストリングスはもっと生音をふんだんに使ってほしかったところ。

 もう一つは、これまでのアルバムに比べて、やや新曲のインパクトが弱いかな〜ということ。
例えば前作では『Love To The World』『Get Down』というこれぞリトグリの真骨頂というべき強力な2曲があった。
今回それに当たるのは『恋を焦らず』なのだが、大好きな曲ではあるのだが、やや狙いすぎで飛び道具的でもあり、今後長く歌われ続ける名曲かと言うと疑問が残る。
その分新境地を開いた『君のこと』は大きな収穫だったが。

そしてもう一つ。
デビューからここまで、リトグリの衝撃はひとえに「このあどけない少女たちがここまで本格的な歌とハーモニーを!?」という、言葉は悪いが「恐るべきガキども」の底知れなさだった。
それが年齢を重ねて成人を迎えたメンバーも出てきたことで、ようやく実力に年齢が追いついてきて、当初の文字通りの「モンスター感」がそろそろ薄れてきたこと。
世間のイメージ的にも、リトグリといえば最早歌が上手いのは当然であり、これからもどんどんハードルが上がってゆく。
冒頭で述べた「少女から大人の女への狭間」というのはそういう意味もある。

そのハードルをどう乗り越えていくか、これから制作陣の腕の見せ所だと思う。
とはいえリトグリの制作チームは現在のJ-POP界最強だと信頼しているので、これからのリトグリがどんな方向に進むのか、楽しみにしていようと思う。

付け加えると、付属のライブDVDの出来が今回も素晴らしい。
自分にとってはどちらかと言うとこちらのほうがメインというくらい、何度観ても飽きない。
本当にリトグリのライブの素晴らしさはどんな言葉を尽くしても言い表せない。
これまで事あるごとに言っているが、今回も言わせてもらおう。

リトグリのベスト盤を出す時は是非ライブ録音で!!!」

Qlair → J☆Dee'Z へと受け継がれた楽曲派アイドルの系譜

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その昔、Qlairという3人組がいた。

当時のアイドル界においては驚くほどの優れた楽曲と3声のハモりを取り入れた楽曲派グループだったが、時はアイドル冬の時代、優れた作品を残したものの志半ばで解散してしまった。

自分は今J☆Dee'ZにQlairの幻を見ているのかもしれない。
歌やダンスのレベルは桁違いに進化しているものの、その楽曲派としての系譜はQlairから四半世紀の時を超えて着実に受け継がれているものがある気がしてならない。

そう思うのはJ☆Dee'ZのNonoがQlair吉田亜紀に似ているということもある。
そうなるとあとの二人が当てはまるのはMOMOKAが井ノ部さん、Amiが今井さんかな〜。いや、逆かな??

12年前にQlairについて書いた当ブログ記事。
力入ってるなぁ(^o^;)


【偶然よく似た衣装の両者比較映像】

Qlair『秋の貝殻』(1992)


J☆Dee'Z『流星のパノラマ』(2018)


稀勢の里引退

稀勢の里がついに引退した。

最後の引き際は決して潔いとは言えず、やや晩節を汚してしまった感があったが、若い頃から注目され、期待され、大きなプレッシャーの中、よくぞここまで孤独と不安と批判に耐えて頑張ってきたと思う。

彼のあまりに愚直さ故に、つねにどこか足りない、届かないもどかしさ。
これに多くのファンは感情移入し、一喜一憂し、喜びや悲しみを一緒に体験してきたのだろう。
そういう意味ではこれほど愛されたお相撲さんもあまりいないのではないか。

個人的には大関昇進の時も横綱昇進の時も星が足りず、正直甘い昇進だったと今でも不満に思うし、それが故に成績不振の際の「ほら見たことか」という批判の大きな理由にもなってしまった。

何より不運だったのは、横綱昇進直後、連続優勝してそんな不安と不満を全て自らの力でふっ飛ばすかに思えた矢先の致命的な大怪我。
結果これにより、その後の相撲生命を絶たれてしまったのは本当に気の毒というほかない。
どれほど無念だったであろうことは想像するに余りある。

しかし横綱として結果を残すことは出来なかったとはいえ、多くの人の記憶に色々な意味で残る横綱であったことは間違いない。

長い間お疲れ様でした。そしてありがとう。