チェリーの音楽幕府

音楽の話題が多いと見せかけてそうでもない

UNIQLOCK~去年マリエンバートで

最近UNIQLOCKの存在を知った。ブログパーツの配布もしていたので、早速取り入れてみた。

←是非クリックして大きな画面で、そしてサウンドをONにして聴いてみてくれ!

正直言ってかなりの衝撃だった。なんなんだこのセンスは!?音楽も素晴らしい!!

余りにも素晴らしいのでスクリーンセーバーもダウンロードしたのだが、それからというもの、スクリーンセーバーを作動するたびに思わずその画面を何分も見入ってしまう。

この独特な空間美と、その間。そして決してあからさまでない潜在意識に訴えかけるような奇妙なエロティシズムが何とも言えずよろしい。まだ全てを把握してないが、定時におもむろに現れるパントマイムや、深夜0時を過ぎるとお休みモードに入る隠し技も憎いね。

特に講堂のような場所で繰り広げられるシーン、___無表情で踊る人を、頬づえをつきながら微動だもせずに、それを見ているような見ていないようなやはり無表情な人々、ゆっくりと平行移動するカメラワーク___この、何と表現したらいいのか、「不安定なシンメトリー感覚」とでもいうのか、切り取られた絵のような摩訶不思議な感覚、どこかで体験した事があると思っていたら、ようやくハタと気がついた。

去年マリエンバートで』という映画だ。


アラン・レネ監督のこの作品、高校の時に授業を抜け出して自転車で行ける所にあった下高井戸の名画座で初めて観た時の衝撃は忘れられない。その後も当時は色んな場所にあった名画座で繰り返し見た回数はたぶん十数回。アホのように観た。

それだけにはとどまらず、後にこの映画の中の音をサンプリングしてanalersの曲の中で使った事まである。

下高井戸と並んで特にたくさんお世話になったのは飯田橋にあった「佳作座」という名画座。確か500円で二~三本立て(!?)でいつも昔の外国映画、特にフランス映画が多くかかっていたような気がする。毎月のように学校をサボっては入り浸っていた俺は、アラン・レネはもちろん、ルイ・マルだとかゴダールだとかはほとんどここで洗礼を受けた。その他にもフェリーニをはじめ、チャップリンやらキートンなんかも、大体はここでお世話になったはずだ。今はもうこんな名画座なんてないのかな?

ヌーヴェルヴァーグ三本立て一挙6時間なんて、今思えば拷問に近い気もするが(笑)よく耐えたもんだ。そんな強烈な作品の中でも、飛び抜けて衝撃的だったのが『去年マリエンバートで』。

十数回も観たにもかかわらず、未だにどんな結末だったのかよく思い出せない。というかそもそもこの映画にはストーリーなんてあってないようなもので、とにかく絵画のような映像と、延々と繰り返される言葉の羅列の渦にひたすら身を任せる映画。それが心地よく感じる人と苦痛に感じる人とでこの映画の評価は極端に分かれるんだろうね。

この映画の楽しみ方は、ストーリーや字幕なんかはこの際無視して、画面の隅々に目を凝らして部屋の調度品や建物の装飾、人々の仕草や表情を観察すること。そして重厚だが主張しない音楽と意味のないセリフの響きにどっぷりと身を任せる。こうすればいつしかその世界に入り込み、何度観ても新しい発見があって飽きないのだ。

marienbad3.jpg

この映画の中の象徴的なシーン、それは何度となく繰り返されるマッチ棒を使った簡単なマジックなんだけど、UNIQLOCKでまさしくそれに相当するのがあやとりのシーン。身近なアイテムを使って煙に巻くというのが共通する。それにしてもこれ、外国人が見たら結構驚くのかもね。あやとりと折り紙って、実はものすごくレベルの高い日本の庶民的な芸、というか技だと思う。

marienbad4.jpg

そんなこんなで、また久し振りにこの映画を観たくなってアマゾンを覗いてみたら、今は手に入らないみたいだね。うーん残念!!!

marienbad2.jpg

marienbad5.jpg