ついに彼女に会える日がやってきた。
mixiミュージックのランキングを見てもらえばわかると思うが、俺はもっぱら古い音楽ばかり聴いていて、最新の音楽の動向にはどうにも疎い。
そんな俺が唯一、現在リアルタイムでその動向を追いかけている人物。
彼女の音楽は、五感の全てを集中して、彼女の作り出す音の全てを聴き漏らさず、大音量で心と身体全体で受け止めなければならないので、かなりの集中力を必要とする。BGMとして流しておくのにはふさわしくない類いの音楽ゆえに、いざ聴く時には「これからビョークを聴くぞ!」という気構えが必要だ。なので聴く回数はそれほど多くはない。
そんな彼女とついに会える日がやってきた。
ロックフェスなどのイベントでは何度か来ているが、単独ツアーとしては実に7年振りとの事。俺にとっては初ビョークだ。
場所は日本武道館。つい何日か前に東京ドームを経験したばかりなので、武道館がとても狭く感じる。
金管ブラスのファンファーレでライブが始まり、彼女が声を発した瞬間に、その場の空気が一変した。
俺はというと、「うわぁ~、あ、あ、ぁ、ぁ、ぁ」と声にならない声を発し、身動きが取れなくなってしまった。何なんだこの人の声は!!これは人間ではない!!!
今、目の前でクルクルと子供のように回りながらチョコマカ動き回っているこの小柄な人物が、ほかでもない、ビョークその人なのだ!!!!!
これがにわかに信じられるだろうか?
そして彼女の肉体から溢れ出たその声は、その瞬間に強烈な魂を持った生命体となって、俺の脳を、心臓を、直接震わせる。
この現代という時代に、この人の肉体から音楽が生み出され、その瞬間瞬間に歴史が作られていく。
この人の存在そのものが奇跡なのだ。
そしてその同じ時代に自分が同時に生きていることの奇跡。
ビョークの生み出す世界は、ロックだのハウスだのエレクトロニカだの、そんなジャンルなどとっくに超越し、それどころか、すでに「音楽」というカテゴライズですら説明する事のできない領域。
それはもはや、ビョークの生み出す、「得体の知れないもの」。
その「得体の知れないもの」に五感の全てを集中させて、肉体と精神の全てで感じて受け止める。
その度に何故か何度も何度も涙が込み上げてくる衝動を抑えきれなかった。
何故だ!?
俺は歌詞なんか全くわからないのに!
そう、もうすでに「歌詞」すらも超越してしまっているのだ。
その声だけで、その息づかいだけで、その空間だけで・・・
伝わる。
伝わる。
もはやビョークという人はミュージシャンですらない。
人々の魂を直接揺さぶり、操ることのできる、呪術師なのだ。
ステージも、Tp3、Tb3、Hr3、Tu1の計10人の金管ホーン隊が、ビョークの周りを囲み、不協和音を奏でながら踊り狂う。まるで古代の宗教儀式を見ているようだった。
シャーマニズム、まさしくその言葉がふさわしい。
俺はその魔術に、すっかり取り込まれてしまったのかもしれない。
ちょっと変な言い方をするが、俺はもし彼女が死んでしまったら立ち直れないかもしれない。
こんなステージを体験してしまった俺は一体これからどうしたらいいのか?
人生において重大な体験をしてしまった。
日本公演はまだ22日の東京と25日の大阪がある。
い・・・行きたい。
まだ体験していない人は、当日券やダフ屋から買ってでも、生きてる間に一度は見ておく事を強くお勧めする。
あなたの人生にとって必ず何らかの衝撃をもたらす事は間違いない。
そして圧巻だったのはステージ中央に据えられたこの楽器!
reactableというらしい。
ステージ上のモニターでは常にこの楽器のオペレーションの様子が映し出されていた。
この摩訶不思議な楽器をバックに平然と歌うビョーク。
その姿はもはや人間をも超越していた。
↑これを
↓このように使う(これスゲェェェェェ!!!!!)