チェリーの音楽幕府

音楽の話題が多いと見せかけてそうでもない

号泣日誌

archives.jpg

NHKアーカイブスは俺の最も大好きなTV番組だ。

以前も何度かこのブログでも触れているが、中でも最も衝撃的だったのが、7年前に放送した佐々木昭一郎監督のドラマ「夢の島少女」(1974年作品)だった。

この時の興奮はその時の日記に詳しく書いてあるので見てね。

http://ongakubakufu.blog21.fc2.com/blog-entry-259.html

その後もコンスタントに心を揺さぶる良作を流し続けてきているが、やはり最も面白いのは昭和40年代のドキュメントもの。もちろんドラマも面白い。

最近は昭和60年代から平成の作品をやる事も多いが、そこまで来るとどうもつい最近のような気がしてイマイチ萌えないんだよな~。

やはり「現代の映像」や「日本の素顔」「新日本紀行」みたいな昭和のドキュメンタリー番組独特の、あのおどろおどろしいBGMとナレーション、陰影の強調された質感溢れるフィルム映像と毛筆体のタイトルが、子供心に強烈なトラウマとなって残ってしまっているような作品が最高だ。

特に去年から始まった『年間シリーズ“にっぽん くらしの記憶”』は、そんなゾクゾクするような映像が満載でめちゃめちゃ面白い。

ただ最近はなかなかゆっくり観る機会がなく、ついついHDDにどんどん溜まっていく一方だったりするのだが、先日HDDの整理をしていたら、二年前に放送されてそのまま観るのを忘れていたのを見つけた。それは、

NHK特集「夏服の少女たち~ヒロシマ・昭和20年8月6日~」(1988)

これはマイッタ。ひたすら号泣だった。

昭和20年の広島で勤労奉仕に励んでいた少女たちの日記を基に作られたアニメを中心に、現在に遺された年老いた肉親たちの姿を交えたドキュメントなのだが、この手の戦争ものにありがちな、安っぽい反戦イデオロギー的なものは余り感じられず、純粋に若い命を散った少女たちの儚さ、空しさが描かれていた。

ここで朗読される少女の日記がまた素晴らしい。例えば女学校に入学した喜びの場面では

「日本の女学生として恥ずかしくないように、日々の生活に心がけ、一生懸命に頑張ろうと思う」

と決意が綴られる。

今の時代、これほどの社会に対する自覚と決意を持って日記を記す事の出来る人はどれだけいるだろうか。靖国神社遊就館で若く散った兵士たちの遺書を読むのと同じ感覚に襲われた。この時代の人はこれが普通だったのか。立派すぎて言葉も出ない。

しかしこの日記は原爆投下前日の8月5日で終わり、そこから先は永遠に書かれる事はなかった。

原爆の落ちる直前に、クラス全員で余り物の布切れを使って夏服を仕立てる。それも白い服だと敵の目標になるという理由で、地味な灰色に染めた夏服。

それでもそれは彼女たちにとっては最高のオシャレであり、心躍る出来事だったのだ。

そして彼女たちはみなその夏服を着たまま8月6日に逝ってしまうことになるわけだが、そんな運命など知らずに、その夏服を初めて着た日に、先生にお願いしてみんなで「夏は来ぬ」を合唱したシーンに至っては、俺はメシを食っていたにもかかわらず、涙と鼻水とあとなんかヘンなもんが吹き出して何も見えなくなってしまった。

そして最後は、少女の唯一の遺品となったボロボロに焼けただれた夏服を、40年に渡ってずっと大事にしまっていた両親が、「自分たちも歳でこれからどうなるかわからないから」と、その大事な遺品を原爆資料館に寄贈するシーンで終わる。

これで泣くなという方がどうかしている。

今調べてみたら、DVD化されていたんだな。これほどの名作、当然だ。

ああ、このジャケ絵を見ただけで涙が吹き出て来る・・・。

夏服の少女たち夏服の少女たち
(2005/12/22)
濱田真帆、藤重すみれ 他

商品詳細を見る

そしてなんと番組で紹介された少女の日記も出版されているらしい。これは読まねば。

広島第一県女一年六組森脇瑶子の日記広島第一県女一年六組森脇瑶子の日記
(1996/06)
細川 浩史、亀井 博 他

商品詳細を見る

最近ここは「号泣日誌」と化しているな。それもたまたま見つけた物にやられている。

たぶん何の先入観もないのがいいんだろうなぁ。

全米が泣いた!」とか大袈裟な事言われるとかえって構えてしまって、「あれ、これで終わり?しまった泣きそびれた!つーかどこで泣くんだよ!!」なんてことが多いもんね。

どうも近頃涙腺が決壊してしまっている俺の次の号泣日誌は何だ!?