チェリーの音楽幕府

音楽の話題が多いと見せかけてそうでもない

恥ずかしながら、帰って参りました

三ヶ月に渡って繰り広げられた坂本ソーシャルプロジェクトが1月9日の韓国ソウル公演でひとまず終了した。

坂本ソーシャルプロジェクトとは、坂本龍一ライブコンサートUSTREAMを使ってリアルタイムで無料で配信するというプロジェクト。

ツイッター上での何気ない一言から始まったこの企画、北米ツアーから大貫妙子さんとのUTAUツアー、そして最後の韓国ソウルでのソロコンサートでは最終的には16万人の人を巻き込む大きな物に成長した。

既存のマスメディアではなく、個人個人が参加するソーシャルメディア発と言うこの試みは、最初は単なる傍観者であった自分もいつしかその試みに一緒に参加している気分になった。

そしてその参加者たちもただ送られてくるものを観るだけでなく、自らパブリックヴューイングの主催者となって積極的にこの試みに携わることができた。

自分ももちろん自宅をPV会場として登録した。

まあ完全プライベートだったけど。

完全が求められるマスメディアと違い、ものを作り上げていく過程での様々な失敗も共有していくという感覚が自分も一緒に参加しているという一体感につながるのかもしれない。

そしてそれを動かしていたのはほとんどがボランティア。

その中心にはもちろん坂本龍一という大きな求心力があってこそ無償で参加する人が膨れ上がったのは事実。

なので今後これを継続し発展していくには、それをいかにビジネスとして成り立たせるかが課題なのかもしれない。

今回の企画は、それを見ていた人達にもこれからの大きな可能性を示唆してくれた。

これを自分たちに置き換えると、今後は最初は全く無名なコンテンツをいかに参加者同士で魅力的なものに育てていくことができるか、が問われることになる。

そこにはまずは参加者同士の信頼感と共有感がまずは必要になってくる。

スタッフ同士で反目していては何も始まらない。

今回もWEBスタッフが「平野隊長(この企画の中心人物)がよくもこんなどこの馬の骨のものともわからない自分たちに丸投げしてくれるよね」といった意味の事をつぶやいていたのがとても印象的。

その信頼感があってこそいい仕事をする。

うん、求められるのは大きな求心力と信頼感だ。

今回は失敗もいくつもあったけど、それもこれまではマスメディアに頼っていた発信を、素人でもソーシャルメディアを使って発信することができるという勇気を与えてくれた。

その可能性はまだ未知数だけど、今回の流れをつぶさに見ていく中でヒントは沢山あったと思う。

それをどう発展させていくか、これはこれからの新しい時代の始まりに過ぎない。

そして何より、かつては神と崇めるくらいの熱狂的ファンであったにもかかわらず、この20年近く離れてしまっていた自分のようなファンを再び教授の元へ呼び戻したというだけでも、この試みは大成功なのである!!!

恥ずかしながら、帰って参りました。

自分はやはりこの人からは一生離れられないんだと確信した。

20年間も遠ざかってしまった罪滅ぼしに、遠ざかっていた時代の教授の映像を。

自分がほとんど興味を失っていた90年代にもこんなにすごい事をやっていた。

1999年に大ヒットした『energy flow』によって、いわゆる「癒し系」などと呼ばれてしまう以前の名盤『1996』の時の凄まじい演奏。

またいつかこの時のような真剣の上を歩くような火の出るような演奏を生で聴いてみたい。

期待してます、教授。