チェリーの音楽幕府

音楽の話題が多いと見せかけてそうでもない

4月に読んだ本

日本人の誇り藤原 正彦
あやし うらめし あな かなし浅田 次郎
ドミノ恩田 陸
エネルギーと原発のウソをすべて話そう武田邦彦


日本人の誇り (文春新書)日本人の誇り (文春新書)
(2011/04/19)
藤原 正彦

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あの『国家の品格』から六年。

あの本がベストセラーになった当時は日本にも戦後レジームからの脱却というスローガンで生まれ変わろうとする希望がみなぎっていた。

しかしその後の六年間であれよあれよという間に政権交代が起こり、国力はどん底まで落ち込んでしまった。

六年前には著者もまさかこんなことになるとは想像もしていなかっただろう。

そこであえてまた日本人とは何かを問う。

今度はGHQから刷り込まれ戦後わが国を覆い尽くした自虐的歴史観から問い直す。

といっても戦前は何が何でも良かった的思考ではなく良かったこと悪かったことを冷静に分析。

比較的公正な歴史観なので、すべての日本人に読んでほしい。

それでも戦後歴史教育を信じている人にはやっぱり驚くのかな。

あの震災で人々の意識が変わったことを大きなきっかけにして、憲法、教育、歴史、そこからやり直す大きな転換点に来ていることは間違いない。

★★★★★


あやし うらめし あな かなし (双葉文庫)あやし うらめし あな かなし (双葉文庫)
(2008/09/11)
浅田 次郎

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幽霊をモチーフにした短篇集。

とはいっても怖さよりも読後の何ともいえない余韻と日本的情緒がこの人ならでは。

その後を読者の想像力に委ねる手法でそれぞれのお話がしみじみと胸に心地良く残る。さすが。

特に最後の「お狐様の話」が何とも言えず凄い。

★★★★


ドミノ (文芸シリーズ)ドミノ (文芸シリーズ)
(2001/07/27)
恩田 陸

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全く関係のない登場人物がそれぞれある一点に向かっていくというよくある手法。

かなり早い段階でほとんどの人物が登場し、登場人物は非常に多いにもかかわらずそれぞれキャラ立ちがしっかりしているので、前半ではこれがどこに向かっていくのだろうとワクワクした。

しかし後半はその登場人物同士の絡みが強引でご都合主義的ありえないドタバタ展開にうんざり。

最後まで読み切るのが苦痛だった。

★★


エネルギーと原発のウソをすべて話そうエネルギーと原発のウソをすべて話そう
(2011/06/01)
武田邦彦

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福島原発事故で一躍時の人となった武田先生。

講演と同じく本も専門的な事柄ながらとてもわかりやすい。

原発をはじめエネルギー全般やエコ、そして地震科学まで様々の分野での科学のウソが明らかにされ目から鱗が落ちまくる。

もちろん専門的分野なので数字を出されても自分には検証するすべがないので丸ごと信用できるのかは分からないが、原発の例一つをとってみても今まで無邪気に信じていた「科学」というものがいかにいい加減で出鱈目なものであったかがよく分かる。

原発にしても地震にしても津波にしても、危険なものをまずは「危険だ」と認識するところからはじめなければいけないのに、目をつぶって避けてきたことが最大の問題。

危険だからこそ、ではその危険のリスクをいかに低減して活用していくか、と言うことを前提に議論されなければいけない。

「全く安全」か「絶対ダメ!」の両極論しかないところでは全く議論は進まない。

その中間で冷静な議論ができるようになればいいのだが、まだまだなかなかそれは難しい状態か。

★★★