筒井康隆『繁栄の昭和』
宮沢賢治、太宰治と並んで10代の頃の自分の三大作家だった筒井康隆。
当時全集を読破する程だったが、あの断筆宣言以降は全く遠ざかってしまっていたので久しぶりに新作を読んでみた。
御大独特の読者を煙に巻くメタフィクションの世界は齢八十でも健在で嬉しくなった。
奥田英朗『田舎でロックンロール』
70年代ロックが最も熱かった時代に岐阜の片田舎の中学生だった著者がロックに出会い熱狂していく様が面白おかしく克明に描かれていて非常に面白かった。
著者より8つ年下の自分はロックが商業化しMTV世代だったのでこの時代の空気がとても羨ましい…。
湊かなえ『Nのために』
ドラマの出来が素晴らしかったので原作を読んでみた。
しかし謎を引っ張った割には「はぁ?」という結末。
魅力的な人物がおらず読後感が非常に悪いのもこの人の作品独特。
こんなに殺伐とした話をよくぞあれだけ胸ときめく映像に仕上げたドラマ制作陣の力量の方に感銘した。
こちらは前回読んだ森達也氏とは正反対の麻原首謀論の正攻法な視点の事件から16年後の取材録。
今だからこそ話せるという関係者の証言はそれぞれ貴重なものだが、決してこの「未解決事件」の謎が解明されることはない。
竹内精一『上九一色村発 オウム2000日戦争―富士山麓の戦い』
当時TVにもよく出演していた上九一色村で先頭に立ってオウムと戦った竹内氏。
先日実際に現地をを訪問したので、あの美しい酪農地帯に突如入り込んできたオウムという異物の異様さをよりリアリティを感じることができた。
古賀義章『場所―オウムが棲んだ杜』
オウムのサティアンの最後の姿を記録した写真集。
あの草が生え放題のただの野原にこれだけの信じられない程の奇妙な建造物が林立していたとは、今となっては全くその痕跡を残さないだけにとても貴重な記録。
廃墟マニアにもたまらないだろう。
森達也『A3』
『A』『A2』と過去にオウムの内部に入り込んで映像化したシリーズが今回は文章で。この人の芸風のとにかく反体制スタンスからのかなりオウム寄りとも言える厨二病的考察には鼻白んでしまう面も多々あるが、画一的な報道の中にあってこういう視点もまあ貴重ではあるか。
- 作者: 森達也
- 出版社/メーカー: 集英社インターナショナル
- 発売日: 2010/11/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 2人 クリック: 89回
- この商品を含むブログ (30件) を見る