チェリーの音楽幕府

音楽の話題が多いと見せかけてそうでもない

THE BEACH BOYS

 僕が生まれたのはビートルズが『SGT.Pepper's~』を出し、ブライアン・ウィルソンが『Smile』を断念した1967年。だからもちろん全盛期をリアルタイムで知っている筈もなく、全て後追いで聴いた。

 ひと昔前は「ビーチボーイズが好き」と言うと、「あぁ"Surfin' U.S.A."でしょ」と多少侮蔑まじりに言われたものだけど、さすがに今はそんなことはなくなったと思う。

 ビーチボーイズについて語り出すと止まらないし、ブライアンのロックミュージックに果たした功績なんかもあちこちで語り尽くされていることなので、ここでは僕個人のビーチボーイズとの出会いについてのみに触れたいと思います。

僕がはじめてビーチボーイズを聴いたのは十代の時、確か『Endless Summer』というベスト盤だった。

 ヒット曲ばかりを集めたアルバムだったので非常にとっつき易く、すんなり入り込めることができた。

 中でも『Don't Worry Baby』に代表されるような美しいメロディと、ブライアンのファルセットが印象に残った。

 特にバラード曲の美しさはただならぬものがあり、『Surfin' U.S.A.』くらいしか知らなかった自分にとっては「へ~、ビーチボーイズ、なかなかいいじゃん」と認識を改めるのには充分だった。そう、『Pet Sounds』を知るまでは。

 そんなある日、学校の先輩に「ビーチボーイズを聴くならこれを聴け!」と貸してもらったのが『Pet Sounds』だった。

 最初に聴いた時の印象は「地味なアルバム」だと思った。いわゆるバンドサウンドではないし、音もモノラルでなんだかモコモコしているし、彼等の最大の魅力であるコーラスすら入っていないインスト曲なんかもあったりして、正直言って退屈で、まさかその後の人生を左右するようなアルバムになるとはとても その時は思わなかった。

 そんな第一印象があってしばらくほったらかしにしていたのだけど、何故かふとあの独特の雰囲気を思い出して味わいたくなる時があり、たまに引っぱり出して聴いたりしていた。

 そうこうして段々曲に馴染んでいくうちに、このアルバムのあらゆる面での「とてつもなさ」に段々気付いていくわけです。

 まずは全ての曲に通じる、内面に向かった哀しいまでのメロディの美しさ、そして折り重なるコーラスの波、歌に埋もれていて一体どんな楽器で編成されているのかわからない演奏、軽い気持ちでコピーしようとしてみてもベースがルートを弾いていないので容易にコピーできないアレンジの不可思議さ、そして他の誰のどのアルバムにもないこの独特の空気感。。。

 その全てが自分の心の中に入り込んでいくのにそう時間は掛からなかった。

今となっては僕の人生になくてはならないもの。

 年がら年中聴くわけではないけれど、嬉しいこと、悲しいこと、楽しいこと、辛いこと、何か物事の節目には必ずこのアルバムを手にしている。

僕のこれからの人生においても、きっと常に傍らにあるのがこのアルバムです。