チェリーの音楽幕府

音楽の話題が多いと見せかけてそうでもない

私を通り過ぎた音たち 『JAPAN』

Tin Drum Tin Drum
Japan (2006/05/29)
Virgin
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俺が生まれて初めて観に行ったライブ、それがJAPANの武道館でのラストライブだった。

今思えばこれってかなり幸せな事かもしれない。当然そのサウンドがもたらす衝撃はいたいけな俺を完膚なきまで打ちのめした。

特にベースのミック・カーンのプレイとその奇妙な動きには圧倒された。

中学生の頃、JAPANはその耽美的なルックスでアイドル的存在だった。みな透明下敷きに雑誌(サウンドールとか)の切り抜きを挟んで学校に持って来ていた。ビジュアル系の走りってことかね?

しかしそのミーハーなルックスとは裏腹に、その音楽はアルバムを出すごとに独自の世界を構築し、ラストのこの「Tin Drum」に至っては誰も追随できない程の高い次元に到達していた。

実は俺はデビッド・シルヴィアンのボーカルは正直言って好きではない。

何と言っても魅力はミック・カーンの縦横無尽のフレットレスベース、そしてアナログシンセ(Prophet5だね)の極限まで使い倒した独特のシンセサウンド。しかもそれがいわゆる「テクノ的ピコピコ音」ではないところがスゴイ。

しかしさすがに今の耳で聴くと、ミックスは低音が物足りなくてミック・カーンのベースをもっと出してほしいところだが、これは時代のせいか。

ところで当時はJAPANのメンバー自身が「デビュー直後の二枚のアルバムは自分たちのものではない」的発言をしていたこともあって、その二枚は聴いた事がなかったのだが、最近になってその二枚を含めたアルバム全部揃える事が出来た。

確かに初期の二枚は後期とはサウンドが全く違うが、いやいや、これはこれで想像していたよりずっとよかったので驚いた。当時から最後の到達点に通ずる萌芽のようなものは十分に聴き取れる。

よほどのファンでなければ、JAPANの音楽が最高の高みに達している5枚目の「Tin Drum」を聴けば事足りると思うが、最近久しぶりに聴き直して4枚目の「Gentlemen Take Polaroids」の一曲目のイントロのフランジャーの掛かったドラムとギターのアルペジオとディレイの掛かった単純なシンセのリフの絡みにゾクゾクした自分がいた。