チェリーの音楽幕府

音楽の話題が多いと見せかけてそうでもない

坂の上の雲を見た

俺が今まで読んできた本の中で最も面白かったものといえば、文句なしに司馬遼太郎の『坂の上の雲』だ。

これを初めて読んだ時の高揚感と読み終わった時の感動は忘れられない。

2003/05/31の日記

2003/06/30の日記

2003/07/31の日記

自分にとって人生の物の見方が劇的に変わるくらいの本だった。

これをきっかけに、それまでほとんど知識がなかった日露戦争、ひいては明治の日本に興味を持つきっかけとなった。

これからの人生で何度も何度も読み返す事になるだろう。

それくらい、自分にとって大切な本です。

そして同じ頃、その「坂の上の雲」がNHKでドラマ化されるという発表を聞いてひっくり返った。

まず生前の司馬氏が映像化を許していなかったし、そもそもあの日露戦争というスケールの大きな舞台を映像化するのは至難の業と思われた。

しかしそこはNHKの威信を賭けて、史上例を見ない莫大な予算を投じて全く新しい枠で数年を掛けて作る一大プロジェクトということなので、大いに期待は高まった。

しかし個人的に心配は沢山あった。

まずここ最近の大河ドラマに共通する傾向。

これもまた例に漏れず、ジャニタレを起用してつまらん恋愛ホームドラマになってしまうのではないか。

なにしろここ数年の大河ドラマは、最初の一、二回で見るのを止めてしまう物がほとんど。

愛だの平和だの現代の価値観で戦国時代を描くとは何事だ。

かつての重厚な大河ドラマと比較すると余りの凋落ぶりに憤懣さえ覚えていた。

唯一最後まで見た例外は『篤姫』だったが、あれとて大河ドラマという価値観で見れば最悪のシロモノ。

しかしながらホームドラマとして純粋に面白かったので、あくまでも大河ドラマと意識ではなくホームドラマとして割り切ったら最後まで楽しんで見ることができた。

ただ「これって大河ドラマじゃなくて朝の連続テレビ小説でもよかったんじゃね?」という疑問は残ったが。

同じく重要なのが、個性的な登場人物にどの役者を割り当てるのかというキャスティング。

まあこれは同じ坂の上の雲ファンであるちゅ~☆と仮想配役をしあって大いに盛り上がったが。

そして一番心配だったのがNHK特有の妙な歴史観

こればかりは本当に、ぶち壊しになるような余計なエピソードなど付けずにどうか原作通りにやってくれと願うばかりだった。

そんな様々な思いを持った制作発表から実に7年近く。

ずっとこの日が来るのを楽しみに待ち望んでいた。

その間、脚本の野沢尚氏のショッキングな自殺など頓挫があり、当初の計画よりも延びた事で、あの当時はこうして見られるのはまだまだ先だと思っていた。

でも経ってみればこの7年、あっという間だった。

予告編を見て「え!?もう始まるの!?」って驚いたくらい。

ついにこの日がやってきた。

『坂の上の雲』公式サイト

期待半分、不安半分。

高ぶる気持ちを落ち着かせて第一話90分間、テレビに見入った。

・・・・・

これは・・・・・

これは・・・・・!!!!!

素晴らしい!!!!!

これは予想以上の出来。

あまりの素晴らしさに前述した様々な懸念は全て吹っ飛んでしまった!!!

こんなに素晴らしいテレビドラマを見たのは一体何年ぶりだろうか。

俺が大河ドラマに求めていたのはこれなんだ!

まずは冒頭の、当時の写真をバックに語られる原作のナレーション(渡辺謙か!)でもう一気に引きずり込まれた。

心配だったキャスティングも,子役を含めて全く文句がなかった。

秋山兄弟の兄好古の阿部寛はまさにイメージぴったりだし、弟真之のモックンはイメージとは違っていたけれど、いやいやどうして、これはこれで素晴らしかった。

登場シーンがいきなり四十代のモックンが十代を演じていて全く違和感がなかったのがすごい。

そして内容も素晴らしかった。

原作全編に流れる、明治の日本人の持っていた希望と高揚感が余す所無く表現されていた。

心配していた妙な歴史観も今のところ全く感じなかった。

さすがは野沢尚だ。

お金をかけているだけあってセットも素晴らしく、特に真之が初めて上京してきた時の新橋駅前の電車通りの情景がよかったな~。

当然CGも使っているが、まずまず今のところありがちな安っぽくなる事もなくてホッとした。

ただこれは後々実写では絶対に不可能な会戦シーンで多用される事になると思われるので、その時がNHKの腕の見せ所だろう。

音楽も素晴らしく(久石譲か!)、クライマックスでこのテーマ曲が流れたら120%間違いなく号泣する自信がある。

こんなに期待していたドラマが、実際にその期待を上回る出来だっていうのはこれはものすごい事だ。

そんなこの第一回目を見終わった瞬間、我が家の地デジ化が満場一致で決定した。

実は、我が家は地デジには全く興味がなかったのだ。

そもそも俺はテレビなんてせいぜい競馬と相撲と日曜朝の討論番組とたまに昼メロくらいしか見ないので、ハイビジョンなど全く必要なかった。

「アナログ放送は終了しますだと?上等じゃねーか、そんならテレビなんて金輪際見ね~よ!」

と本気で思っていた。

スパマの2ndCDも地デジのアンチテーゼで「アナログ」というタイトルにしたくらいだ。

しかしこのドラマを見終わった瞬間、これは是非とも地デジの高画質で大画面で見たいと心から思った。

このたった一つのドラマが俺のポリシーを90分でいとも簡単に変えてしまった。

ここに遅まきながらの我が家の地デジ化を宣言します。

目的は「坂の上の雲を高画質で見る事」です!!!

第一回目でこれほどの感動を与えてくれた『坂の上の雲』。

第一部は11月29日から12月27日<総合>午後8:00~9:30の5回、第二部は来年の秋、第三部はなんと再来年の秋。

完結するのはなんと実に二年後という長丁場だ。

これは絶対に見ずに死ねない!

このドラマのお陰でお年寄りの長生きする気力にもなるだろうし、この二年間は自殺者も減るんじゃないか?

なんていう期待もしてみたくなるほどの何とも楽しみな素晴らしいドラマです。

第一回目の再放送は12月5日<総合>午後1:05~2:35。

見逃してしまった人は是非この素晴らしいドラマをその目で見て下さい。

そしてドラマを見て興味を持ったら是非原作も読んでみて下さい。

そしてその感動を一緒に共有しましょう!

坂の上の雲〈1〉 (文春文庫)坂の上の雲〈1〉 (文春文庫)
(1999/01)
司馬 遼太郎

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