チェリーの音楽幕府

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由紀さおり&ピンク・マルティーニ『1969』の衝撃

噂の由紀さおり&ピンク・マルティーニ『1969』早速ダウンロードした。

「海外で大ブレイク!」という謳い文句をそのまま額面通り真に受けるほどうぶではないけれど、そもそも由紀さおりがビッグバンドをバックに歌謡曲が一番面白かった1969年の流行歌を唄う、というその企画だけでそんなの素晴らしいに決まってる。

1969年といえば筒美京平が本格的に歌謡曲にポップスを持ち込む70年代直前、グループサウンズの影響も色濃く、歌謡曲が演歌とポップスに完全に分化する直前の独特の進化の極限に至った年。

まずこの年を選んだプロデューサー佐藤剛氏の慧眼に敬服。

そしてそれを唄う由紀さおりの何といっても「唄い過ぎない」唱法が絶妙に素晴らしい。

これだけ上手い歌い手だと得てして「唄い過ぎ」がちなものだが、実に軽やかに聴き手に負担を感じさせずに聴かせるテクニックが凄い。

これが仮に坂本冬美石川さゆりあたりだととにかく頑張って「唄い過ぎ」るところだっただろう。

(ちなみに二人とも大好きです☆)

そして何といってもその低音の深み!

これが意外だった。

実際に一緒に歌ってみると男の自分でも唄えるくらいの低音域。

普通女の人が低音で唄うと重苦しい感じを想像するのだが、それを全く感じさせない軽やかさは意外な新発見。

昨今のとにかく高い声でキンキン押し付けがましい歌ばかりがもてはやされる風潮に辟易していたので、これは心底安心する。

とにかく御歳63にしてこの衰えを知らぬ声はまさに我が国の至宝。

是非その声が衰える前に二匹目のどじょうでも何でも構わないので1968でも1970でも1969-2だろうがこのシリーズで記録して欲しい。

全部聴かせていただきます。

それにしてもこういう音楽が売れたというのは、音楽が中々商売にならなくなっている昨今の業界に一石を投じたと思う。

そしてそれは個人的にもとても興味深くワクワクさせてくれた。

絶対何かここに色々なヒントがある。

同時に改めて昭和の歌謡曲の楽曲のクオリティの高さを再認識した。

「いいじゃないの幸せならば」ってこんなにいい曲だったんだ…とか、「夕月」なんかは外人に受けそうだ、とか。

1969と言えば名曲揃いだが中でも最大の名曲『人形の家』を選ばなかったのは何故なんだろう?

いつか是非彼女の歌で聴いてみたいのだ…。

あと1969年といえば東大安田講堂事件なんかもあったりして学生運動最高潮の年で、そんな時代背景とともに団塊の世代に訴えかけるには最高な年だよね。

ウッドストックもこの年だったっけか。凄い年だよね。

そうそう、この由紀さおり&ピンク・マルティーニの『1969』、こないだ箱根に行った時にずっと車で聴いてたんだけど、これが夜の高速道路に驚くほどピッタリ!

騙されたと思って聴いてみて。

http://itunes.apple.com/jp/album/1969/id467797559


19691969
(2011/10/12)
由紀さおり&ピンク・マルティーニ

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