佐藤正午『アンダーリポート』
この作家の作品は初読だったが、とにかくその構成の妙に作者の手の平で転がされる心地よさ。
最後まで読んだ人は間違いなくまた第一章を読み返すだろう。
幕末の池田屋事件であまり語られることの少ない新選組に斬られた側の志士たち一人一人の物語。
全てのエピソードが元治元年6月5日の池田屋へと向かう悲劇的な結末がわかっているだけにそこに至るまでの一人一人の懸命な生き方が切ない。
とても面白かった。
岩井志麻子『岡山女』
例によって独特の語り口が素晴らしいが、『ぼっけえ、きょうてえ』ほどの陰鬱さはなく、読後感もさほどあとに残らなかった。
岩井志麻子『ぼっけえ、きょうてえ』
岩井志麻子といえば『5時に夢中!』の中でも一番面白い木曜日の爬虫類顔のスケベなおばさん、という認識しかなかったが、初めて作品を読んだ。
岡山の貧しい寒村の土俗的な陰惨な物語。
その独特な語り口は他の追随を許さない。
認識を改めねば。
いや無理かw
奥田英朗『ナオミとカナコ』
現在最も好きな作家の一人奥田氏の最新刊。
この作品もスリルとテンポがありとても読みやすく面白かった。
まるで映像化を前提として書かれた小説のようで、間違いなくドラマか映画化されるだろう。それも楽しみ。
元オウム幹部上祐と村井秀夫刺殺犯との対談はセンセーショナル。
しかし個人的には殺人犯がのうのうと持論を展開するのにどうしても抵抗がある。
この二人によって村井刺殺事件を始めとする陰謀論は完全否定されるがそれもどうしても納得いかない。
青木由美子『オウムを生きて』
事件当時末端信者で事件のことは全く知らずにいた人々が事件から15年後に改めて当時の生活と自らの人生を振り返る。
信者側からの証言は貴重で興味深い。
こうして読んでみると当時オウムにハマった人々の共通点がぼんやりと見えてくる気がする。