2016年秋。世間を騒がせたあのシンゴジラとほぼ時を同じくして襲来し、瞬く間に我が心の中に大きく居座ってしまったモンスターがいる。
それがLittle Glee Monster。通称リトグリ。
女子高生6人組のボーカルグループである。
2年くらい前から「とにかく歌の上手い子ばかりを集めたグループがあるらしい」という噂は知っていた。
昨年は『表参道高校合唱部!』というドラマの主題歌にもなり、ドラマは面白くて毎週観ていて主題歌も聴いていたのだが、その時はイマイチピンとこなかった。
今年に入ってから段々と様々なところで名前を目にするようになってきたので、「じゃあちょっと聴いてみようか」と今年リリースされた1stアルバム『Colorful Monster』を聴いた瞬間に度肝を抜かれた。
「何だコレは!?」
歌が上手い子を集めたということで、聴く前はたぶん「船頭多くして船山に登る」といった具合に自己主張がぶつかりあって暑苦しいんだろうなと想像していた。ところが予想は大きく裏切られ、一聴してまずその洗練されたコーラスワークに驚いた。これはボーカルグループというよりコーラスグループではないか!
これだけ個性と自己主張の強そうなメンバーをよくぞここまで息の合ったコーラスグループとして鍛え上げてくれた。
彼女たち一人ひとりは既にソロシンガーとしても十分勝負になる力量を持っているが、仮にそれで世に出ていたら恐らく自分は全く関心を惹かなかっただろう。
それほど6人の声が合わさったパワーは計り知れない。
『100%生歌宣言!』のスローガンを堂々と謳う彼女たちの実力は特にライブで遺憾なく発揮され、動画を見ると激しく動き回りながらも全く乱れることなく複雑なアレンジのコーラスワークを完璧にこなすのは驚異的ですらある。。
MVもそんな彼女たちの最大の魅力である生歌を大胆に取り入れた独自のもので、どれも素晴らしい出来。
そしてそのサウンドは、古き良きR&BとJ-POPが絶妙なバランスで融合したもの。
R&Bといってもイマドキのシャレオツなやつではなく、60〜70年代のモータウンに代表されるガールズポップスやジャクソン5を彷彿とさせる泥臭い香りがするモノで、これだけでもうおっさん世代にはたまらない。かといってコテコテにはならず、とても耳触りの良いポップな仕上がり。
歌詞は「本当の自分」だの「なりたい私」みたいな自己啓発的ワードが連発するいかにもなJ-POP風味なものが多く、普段の自分だったら全く興味をそそられないものだが、これが彼女たちのその「親しみやすいルックス」も相まって同世代の女子中高生に大いなる共感を生んで絶大に支持されはじめているようで、今後幅広い年代に訴求する意味で戦略としては正しい。
しかもそんな歌詞もひとたび彼女たちが歌うと俄然説得力を持ちはじめ、気付くとこんなおっさんでも思わずグッときて涙してしまうという不思議。
楽曲のクオリティも非常に高い上に、歌が上手いのは当然、それに加えて曲のアタマからオシリまで全編息をつかせずたたみかけるしびれるほどにカッコいいコーラスワークの連続、そして要所要所に6人分のフェイクも現れては消えるといった具合で、大人の鑑賞にも充分耐えるどころか、何度繰り返し聴いても全く飽きるということがない。
彼女たちのその一見アイドル然とした見た目でナメて掛かると痛い目にあう。自分もそうだった。
そもそも彼女たちはアイドルなのか?と問われると、間違いなく世間一般に定義されるアイドルなどではなく超一流の「アーティスト」だと断言できるが、もしこれがもっと歳のいった子たちだったら自分はこんなに夢中になれたか?というと甚だ自信がないので、きっと自分にとっては紛れもないアイドルなんだろう。それでいいじゃないか。
そもそも自分は、キャンディーズ、ピンクレディーから始まり、聖子ちゃんで育ち、その後もおニャン子や乙女塾系、モーニング娘。なども比較的好んで聴いてきたアイドル好きではあったはずなのだが、それ以降の昨今のアイドルブームに乗った女子グループには全くそそられるものを感じず、興味を持つことがなかった。
それが近年、BABYMETALの出現で、ようやくアイドルも実力至上主義で淘汰されるいい傾向になってきたと感じていた。
残念ながら自分はハードロックやヘヴィメタルの素養が全く無いのでベビメタにのめり込むことはなかったが、ここに来てついに自分にとってドンピシャの本命真打ちリトグリが出現してくれたことは感涙に耐えない。
昨今のアイドルブームを毛嫌いしながらも、心のどこかでこんなグループが現れるのを待ち望んでいたのかもしれない。
来年正月早々には彼女たちにとって初の武道館公演も決まり、同時に2ndアルバムも発売され、急速に認知度が高まりつつある。
自分は武道館には行けないが、春の全国ツアーで初リトグリ体験ができる。
まだまだ成長途上の彼女たち。
そんな彼女たちのこれからの成長をリアルタイムで目撃できるのが楽しみで仕方ない。
彼女たちの成長を見届けるまではまだまだ死ねない。