一時的に読む本がなくなったので、手元にある、坂口弘『あさま山荘1972〈上〉』を再読した。
連合赤軍事件当事者の著作の中では一番詳細でかつ読みやすいのがこれ。
もうかれこれ読むのは5回目くらいだが、読むたびに自分の受け止める感覚は若い頃から少しずつ変化しているのが面白い。
初読の際は、事件の凄惨な描写に衝撃を受ける一方、「反体制」という部分でどこか少なからずの同情と共感性を感じていなかったと言えば嘘になるが、現在はそんな感覚は全く失せ、当時の左翼運動の情勢認識の決定的な誤りや、彼らを背後で操っていた大きな存在の正体が無邪気なほどに描かれていることに気付かされる。
もちろん当時渦中にあった彼らはそれに気づくはずもなく、今だからこそ見えてくるものなのだとは思うが。
それにしてもこれほどの社会に対して害悪と影響を及ぼした左翼テロリズム運動の組織の「指導部」の実体が、サークル活動の延長のような未熟で幼稚なものであった事に震撼する。
これは45年前の話だが、しかしそれが過去のものかというと、一部マスコミやSNSを見ていると、いまだに同様のメンタルと構造が根強く残っていることがわかる。
そして常にこうした構造は若者特有の、グレーな存在を認めない、白か黒か、敵か味方か、の潔癖すぎる正義感を上手く利用する。
そしてそれは自分たちを絶対的な正義であると信じる彼らの思い込みによって過激に先鋭化するのが世の常なのだ。