チェリーの音楽幕府

音楽の話題が多いと見せかけてそうでもない

衆議院選挙が終わって

衆議院選挙が終わった。

各選挙区を個別に見てみると、個人的には「え、この候補が落ちてあんな候補が当選?」みたいな所はいくつもあるが、まあ選挙とはそういうもの。
全ては国民それぞれの選択の結果ということで受け止める。

全体を見てみると、憲法改正を掲げた選挙の結果、いわゆる改憲派が大多数を占めたということで、ようやく国会で憲法改正の議論が堂々とできるようになったことは喜ばしい結果。
何しろ今までは憲法の条文にもしっかり明記されているはずの改正の入り口の議論すらできなかったという異常な状態。それはもちろん改憲を党是に掲げながら逃げてきた自民党の責任も重大だった。
何か勘違いしている人が多いようだが、改憲派の議員が3分の2になったからといって国会議員憲法を勝手に変えられるわけではない。国会議員が出来るのは国会で議論をして、発議して国民に提案するまで。
最終的にするかしないかを決めるのは我々日本国民の国民投票なので、もし仮に変な改正案を出してきたら国民が却下すればいいだけの話。
どうもそこがすっぽり抜け落ちて、改憲派!→即改正!?と短絡的に考えている人が多い気がしてならない。また、メディアもそんな誘導をしている節あり。

何にしろ、制定後70年も経過しているわけで、時代にそぐわず曖昧な部分を毎回解釈で騙し騙し乗り切る現状は健全ではないので、現代の時代にふさわしい憲法を国民みんなで考え議論するいい機会が来た事は間違いない。
徹底的に議論して、その結果やっぱり駄目だ!ということになれば、国民の意思として却下することが出来るのだから。

さて、今回の選挙戦を見て一番強く感じたのは、日に日に刻々と激変する「風」の恐ろしさ。
とはいえまず自民党大勝という結果については、朝日新聞やテレビメディアが主導したモリカケに代表される有象無象の「安倍おろし」キャンペーンに対して、脊髄反射で安易に流されることなく比較的冷静で大局的な目を持つ有権者が多かったということが言えるだろう。これが一昔前だったら朝日新聞の思惑通り政権はとっくに打倒されていただろうと考えると隔世の感あり。

しかしその分、選挙序盤の希望の党旋風からあっという間に終盤の立憲民主党に吹き荒れた風は、従来通りマスコミの起こす風にそのまま乗っかる人々がまだまだ多いことを実感させられた。

 まず去年の都知事選から続く小池氏に対するメディアの異常な持ち上げは、都知事就任後の豊洲問題の迷走で、いつでも手の平返しの効くかなり危ういものになっていた。
そんな状態で迎えた今回の選挙、序盤こそ話題を集めることに成功したが、よく言われるように「排除」発言で完全に潮目が変わった。
とはいえ、政党とはあくまで同じ政治理念を持つものの集まりであるはずで、決して政治家の救済機関ではないわけで、「意見の異なるものを排除するなんてけしからん!」などという批判はそもそもの立脚点からおかしい。
もちろん小池さんにとってみたら希望の党憲法改正を標榜し安全保障を重視する保守政党なので、よもや共産党共闘するような人を入れるわけにはいかないのは最初から自明の理のはずで、当然の事をしたまで。
なので小池さんもあの場面で質問者の発した「排除」という言葉をそのまま返すのではなく、今までのように「排除ではございません。一緒にやっていく上での政治理念の統一の確認でございます。オホホ。」と上手く交わせていればよかったのだが、それができなかったのは売り言葉に買い言葉的応酬の咄嗟の余裕の無さと、やはり自らの人気に対する過信がもたらしたもので、悔やんでも悔やみきれない痛恨の発言になってしまった。
同時に、どうも思い通りに動いてくれない小池氏に対して手の平返しのタイミングを狙っていたマスコミに、絶好の機会を与えてしまったということもあるだろう。
更には希望の党の選挙公約のあまりの薄っぺらさが致命傷となった。

そこから一気に風向きを変えた立憲民主党の戦略とマスコミのタッグはお見事というほかない。よくよくメンバーを見るとかつての民主党政権の最も象徴的な部分を凝縮しただけで何の目新しさもない上に、希望の党に入りたくても入れてもらえなかった左派的思想を持つ人たちの吹き溜まりのはずなのに、この短い選挙期間中に何となく「筋を通した人たち」というイメージを定着させたのと、演説の上手い枝野さんのキャラクターを最大限に活かした戦略は本当に見事で、自民党はこの辺をよく研究した方がいい。
しかし瞬間風速的ブームで議席を増やしたものの、国会が始まってみれば結局は不毛な質問を連発するただの何でも反対党で「あれ?なんだ、よく考えたらこれ民主党じゃん」と多くの人が気付くであろうことは目に浮かぶので、立憲民主党の存続はそこからが正念場だろう。

色々とめまぐるしい動きがあった今回の選挙だが、終わってみれば与党と野党のバランスは解散前とほとんど変わっていないのが面白い。要するにこれが国民が求めている形なのだろう。
とはいえ、希望の党はこれからもまだまだ分裂の余地ありではあるが、改憲派から共産党との共闘派までが混在していた以前のわかりにくい民進党が、穏健な保守とリベラル左派にはっきりと分かれてくれたことは、結果的にはとてもわかり易くなったともいえ、この部分だけでも小池氏の果たした功績は大きい。

これからの国会は、これまでのように不毛な足の引っ張り合いではなく、建設的な議論の場になってくれることを期待している。