1978年発売の高橋ユキヒロ『Saravah!』。
数年あと追いだったが、子供の頃の自分にとって多大な影響を及ぼし、まさに擦り切れるほど聴き倒した「超」をいくつ付けても足りないほどの超名盤。
そんな名盤がこの度、40年の年月を経てヴォーカル新録音でリミックス(!)・リマスター盤として現代に蘇った。
早速聴いてみると、薄皮が何枚も剥がれ、全ての楽器がまるで目の前で演奏しているかのようにクリアになったことで奥行きと立体感が幾倍にも増し、坂本龍一の弦とブラスをふんだんに使った洒脱でゴージャスなアレンジが一層引き立つ素晴らしい出来上がり。
奇跡的に当時のマスターテープが現存しており、リミックス&リマスターが成されたことで、例えば『C'EST SI BON』の冒頭ヴァース直後のスネアのフィルのキレの良さだったり、才気ほとばしる若き坂本教授のハードコア・フュージョン『ELASTIC DUMMY』でのブラスの生々しさで改めてこんなにカッコいい曲だったのか!と気付かされたり、『LA ROSA』のとろけるようなハモンドの音は何度聴いてもいい。
高橋ユキヒロも坂本龍一も当時26歳。この若さでこんな音楽を作れた才能と実力は尊敬するしかない。
26歳にしてエリントンナンバーの『ムード・インディゴ』をカヴァーするなんていくらなんでも渋すぎる。
ふと気づいたのだが、このアルバムがリリースされた1978年というのは、自分にとって好きなアルバムがとても多い。
たとえばYMOにしてみたら結成直前、ユキヒロさんのこのアルバムをはじめ、坂本龍一『千のナイフ』、細野晴臣『はらいそ』と、3人とも素晴らしいソロアルバムを作っている。
他に考えてみると、この界隈だけでも大貫妙子『MIGNONNE』だったり、ムーンライダーズだと『NOUVELLES VAGUES』だったりとか、ユーミンの『悲しいほどお天気』とオフコースの『Three and Two』は…どちらも79年か、まあとにかくこの時代は好きなアルバムばかり。
フェンダーローズとウォームなギター、きっと自分はこの年の音が特に好きなんだろうと思う。
翌年の79年になると、ニューウェーヴの嵐が押し寄せ、尖った音ばかりになる直前、成熟しきった最後の幸せで優しい音の中にも、その後の時代を担う若き才能が現れ、ニューウェーヴ前夜の高揚が密かに伝わってくる感じ。
細野さんが『はらいそ』のラストで、曲が終わった後わざわざ走って戻ってきて「この次はモアベターよ!」とエコー付きで叫びたくなった興奮がよく分かる、そんな高揚した時代。
そんな年にまるで何かに引き寄せられるように出会った3人の若き才能が、YMOとして次代の音楽を引っ張っていったのは必然だったのだろう。