チェリーの音楽幕府

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Little Glee Monster 4thアルバム『FLAVA』を聴いて

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リトグリ待望の4thアルバム『FLAVA』がついにリリースされた。

今回も昨年リリースされたシングル曲&カップリング曲に新曲4曲というラインナップは昨年1年間のベスト盤といった内容。

このアルバムの印象を一言で言うと、陳腐な言葉になってしまうが「少女から大人の女への狭間」という感じ。
これまでの女友達とワチャワチャ騒ぎ、時には仲違いしつつも互いを応援し合ったり、時には初々しい恋をしたりといった内容から、歌詞の内容も曲調も確実に大人の女への入り口を開き始めている。
そういう意味では今この時期のこのアルバムでしか表現できなかった儚い刹那を描いた世界と言えるかもしれない。

一通り聴いた中で自分にとってのベストトラックは『CLOSE TO YOU』と『君のこと』の2曲。
『CLOSE TO YOU』は以前にも言及したことがあるのでここでは詳しく述べないが、改めて聴いてもそのめくるめく折り重なる華やかなコーラスアレンジに心ときめく。

そして『君のこと』は今回初出しのまっさらな新曲。これが素晴らしい。
曲調は落ち着いたバラードで、その端正なアレンジと曲調は、ツイッターで言及している方がいたが、まるで初期のオフコースを彷彿とさせる。
歌詞も従来の初恋のトキメキから成長して、穏やかな将来を見据えた大人の恋愛。
リトグリもこんな歌が歌えるようになったんだな。
歌い方もそれぞれ新たな表現力を発揮していて、特にアサヒのウィスパー気味の歌唱は絶品。
リトグリはライブで更に魅力が2割増しになるので、この曲もライブでどんな表現をしてくれるのか今から楽しみでならない。

『CLOSE TO YOU』にしても『君のこと』にしてもどちらもアサヒがかなりフィーチャーされている。
ここからもわかるように、このアルバムではアサヒの成長と自信が著しい。
付属のライブDVDでの自信に満ちてひときわ輝いているステージ上のアサヒは、数年前の自信なさ気に一歩退いてはにかんでいた少女と同じ人物とは思えないほど。
そんなアサヒが気がつけばいつの間にかリトグリのエース格に育っていた。

太くて男前の声が多いリトグリの中にあって、アサヒの甘いのに抜けのいい声は、アイドルファン層にも訴求力がある。

以前からメンバー間からもメンタルの強さには定評がありながらも、天然ボケ担当のいじられキャラでかつ妹キャラとして可愛がれながら、人知れず努力を怠らず虎視眈々と密かに日夜牙を磨いていた小林あさひのサクセスストーリーにこれからも注目したい。

他の曲にも触れておくと、『世界はあなたに笑いかけている』は昨年あらゆる場面で披露されることが多く正直食傷気味ではあったが、やはり改めて聴いてみるとその完成度と楽曲の持つパワーはケタ違いに高く、堂々たるリトグリの代表曲の座を確立したと言える。

I BELIEVE』のメロディーは自分世代にはどうしても大事マンブラザーズバンドを思い出してしまって困る。イントロも大仰でちょっと自分の好みではない。
ただ力強い歌詞や曲調などは今の若い人にはウケるのかもしれないね。

 『恋を焦らず』は、まさにこういう曲を待っていた!というおじさんたちの大好物な曲。
随所で聴かれるバリサクやドラムのフィルの音色とかもうたまらないよね。
その60年代のモータウンミュージックをオマージュしたレトロなサウンドは、今は亡きエイミー・ワインハウスを彷彿とさせ、manakaが昨年の秋ツアーでエイミーをカヴァーしたのもこういう流れがあってのことと得心。
個人的にはあのカヴァーはとても嬉しかった。
「いやいやダメ彼はダメ〜」は最高だね。よくぞ攻めてくれたと思います。

『夏になって歌え』は、さすがいきものがかり水野良樹というべきソツのないポップバラード。今後長く歌われていくことになるだろう。
ちなみにこの曲がもしイントロドンで出題されたら、ユーミンの『ダンデライオン』か、オフコースの『さよなら』のどちらかと盛大に間違える自信がある(^_^;) add9つながりで。

『青い風に吹かれて』は、自分が思う「これぞリトグリ!」という曲。
こういう曲がたくさんあると個人的には嬉しい。

 さて、こうしてアルバム全体を聴いてみて、リトグリの歌の完成度は非常に高くて文句のつけようがないのだが、少し気になる点を挙げると、そのゴージャスなコーラスに比べてトラックのサウンドが生楽器不足でややチープに聴こえてしまうこと。

今のリトグリに制作費がないとも思えないので、もしかするとこの軽いサウンドは敢えて意図したものかもしれないが、せめてドラムやブラスやストリングスはもっと生音をふんだんに使ってほしかったところ。

 もう一つは、これまでのアルバムに比べて、やや新曲のインパクトが弱いかな〜ということ。
例えば前作では『Love To The World』『Get Down』というこれぞリトグリの真骨頂というべき強力な2曲があった。
今回それに当たるのは『恋を焦らず』なのだが、大好きな曲ではあるのだが、やや狙いすぎで飛び道具的でもあり、今後長く歌われ続ける名曲かと言うと疑問が残る。
その分新境地を開いた『君のこと』は大きな収穫だったが。

そしてもう一つ。
デビューからここまで、リトグリの衝撃はひとえに「このあどけない少女たちがここまで本格的な歌とハーモニーを!?」という、言葉は悪いが「恐るべきガキども」の底知れなさだった。
それが年齢を重ねて成人を迎えたメンバーも出てきたことで、ようやく実力に年齢が追いついてきて、当初の文字通りの「モンスター感」がそろそろ薄れてきたこと。
世間のイメージ的にも、リトグリといえば最早歌が上手いのは当然であり、これからもどんどんハードルが上がってゆく。
冒頭で述べた「少女から大人の女への狭間」というのはそういう意味もある。

そのハードルをどう乗り越えていくか、これから制作陣の腕の見せ所だと思う。
とはいえリトグリの制作チームは現在のJ-POP界最強だと信頼しているので、これからのリトグリがどんな方向に進むのか、楽しみにしていようと思う。

付け加えると、付属のライブDVDの出来が今回も素晴らしい。
自分にとってはどちらかと言うとこちらのほうがメインというくらい、何度観ても飽きない。
本当にリトグリのライブの素晴らしさはどんな言葉を尽くしても言い表せない。
これまで事あるごとに言っているが、今回も言わせてもらおう。

リトグリのベスト盤を出す時は是非ライブ録音で!!!」