チェリーの音楽幕府

音楽の話題が多いと見せかけてそうでもない

今更ながらの後追いで聴くユーミンアルバムレビューーその12ー短評とまとめ

去年の9月にサブスクリプション音楽配信サービスで全アルバムが配信されたのをきっかけに、これまでほとんど聴いてこなかったユーミンをこの機会に聴いてみようかなと軽い気持ちで思い立った。

正直、ユーミンは以前はあまりいい印象がなく、それどころかどちらかと言うと「嫌い」に属する方だった。
なのでさすがに全38枚ものアルバムを制覇できるとは考えておらずどこかで挫折すると思っていたが、聴き進めば聴き進めるほどにどっぷりとハマっていき、すべてを聴き終えた今となっては、ユーミンの音楽は自分のこれからの人生において欠かすことの出来ないものにまでその位置は多くを占めるようになっていた。

聴き始める前は「荒井由実はいいけど結婚してからはちょっとね〜」というイメージだったが、今では荒井由実以上に松任谷由実の音楽に心奪われているのは自分でも予想外の展開。
まさに典型的な聴かず嫌いだった。
まだまだ彼女が現役バリバリのうちに彼女の音楽に触れることが出来て本当に良かった。
おかげで現在進行中のTimeMachineツアーに2回も参加することが出来た。

それにしてもこれまで出会ってこなかったユーミンを時系列に沿って体験させてくれたサブスクリプション音楽配信サービス(現在自分が利用しているのはAmazonMusicUnlimited) には本当に感謝するしかない。
これがなかったらきっとユーミンの音楽を聴いてみようという気にはならず、こんなに素晴らしい音楽に一生出会えることはなかっただろう。
音楽好きにとっては本当に夢のような時代になった。

これまでに上げたアルバムレビューは、聴いていくにつれて段々と思い入れが増してレビューの量が膨らんできてしまい、初期の頃と最近作とでは文章のボリュームがかけ離れてしまったことは否めない。

というわけで、ここで改めて各アルバムを聴き直し、まとめて短評を述べることにする。 
最初に聴いた印象と、時間をおいて改めて聴き直したときの印象が変わっているものもあり、自分でも面白かった。
そして誠に僭越ながら独断と偏見による点数なども付けさせてもらった。
単に自分の好みによるものなので、その辺はご容赦を。

 

1.ひこうき雲(1973)

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後の作品と比べると荒削りではあるが、このアルバムの持つ日本の音楽界における歴史的意義だけで満点しかありえない。どれほどの衝撃だったことか計り知れない。一人の少女の出現によって日本のポップスを劇的に変革させた燦然と輝く作品。全ての原点がここにある。
★10

2.MISSLIM(1974)

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衝撃のデビューから2枚目にしてエヴァーグリーンなスタンダードナンバーの連続。ありえないほどの名曲の嵐。永遠に聴かれ続けることだろう。
★10 

3.COBALT HOUR(1975)

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弾き語り私小説風だった前2枚と比較して、ここでは一気に職業作家としての可能性を突き詰め、あらゆるジャンルの曲調でバラエティ豊か。内向きだった歌詞の世界も一気に視野が広がる。
★9 

4.The 14th Moon(1976)

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サウンドが更に洗練され都会的でおしゃれなものに。のちのリゾートミュージック的要素の萌芽が既に見られる。『中央フリーウェイ』の転調は衝撃だっただろう。
★10

 5.紅雀(1978)

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前作の都会的サウンドとは一転して南米の香り漂うアルバム。のちのワールドミュージック趣味が既に現れている。彼女の全キャリアの中でもとりわけ地味で、結婚後初アルバムだが浮ついたところが全く無い。
久しぶりに聴き直すと、南米っぽいのはA面だけで、B面は名曲揃い。
★7 

 6.流線形'80(1978)

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地味だった前作を反省してか、今作は一転してポップな曲が増え、アレンジもブラスやストリングスをふんだんに使った派手なものが多くなる。
歌詞においてもスキーやサーフィンなど後のリゾートミュージックの要素が現れ始める。
そんな中にあって『埠頭を渡る風』『かんらん車』という飛び抜けた名曲が光る。
★8 

 7.OLIVE(1979)

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ポップ指向が更に進んでここでは歌謡曲路線へ。というよりのちに歌謡曲方面で散々引用されて陳腐化してしまった部分もあるのだろうが、今聴くとちょっと辛い。
★6 

 8.悲しいほどお天気(1979)

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数作試行錯誤を続けてきたが、ここでついにかつての荒井由実の作風に戻った。
それどころか歌詞も楽曲もあの頃よりも更に洗練され、唯一無二の個性と素晴らしい完成度を誇る70年代を締めくくる傑作。
★10 

 9.時のないホテル(1980)

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それぞれの楽曲にストーリー性と重厚感があるトータルアルバム。
歌詞を物語として綴る作家としての才能が爆発している。
★8

 10.SURF&SNOW(1980)

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やや陰鬱だった前作から一転して、正反対の軽佻浮薄なリゾート気分満載の多幸感あふれる作品。
まあこうした振れ幅の大きさが彼女の魅力の一つなのだろう。
歌詞はこっ恥ずかしいが、それぞれの楽曲の完成度はかなり高い。
★7

 11.水の中のASIAへ(1981)

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「アジア」をテーマにした企画モノっぽいミニアルバムだが、出来は中々のもの。
★7 

12. 昨晩お会いしましょう(1981

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ユーミン黄金の80年代の頂点に位置する彼女の全キャリアの中でも最大級の傑作であり、日本のポップスの歴史に燦然と輝く超名盤。
お洒落で都会的な大人のAORサウンド
どこを切ってもセンスに溢れていて素晴らしい。
★10

 13.PEARL PIERCE(1982)

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前作からの絶好調はここでも続き、AORに更にブラックコンテンポラリー要素を加味したサウンドはまさに油が乗り切っていて、余裕と貫禄さえ感じる。
★10

 14.REINCARNATION(1983)

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2作続けて超名盤を叩き出して絶頂期かと思われたが、このアルバムは一転して「姫、ご乱心?」と言いたくなるような、80年代のダサさを凝縮したような出来。
★6 

 15.VOYAGER(1983)

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ここではまた落ち着きを取り戻し、お洒落なサウンドに戻ってくれた。
ユーミンのヒット曲を生み出すノウハウが完成の域に達し、いい曲がいくらでも作れる感じ。同時に松任谷正隆氏のアレンジがとにかく冴え渡っている。
★9 

 16.NO SIDE(1984

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これ1枚でベスト盤と言っていいくらいの名曲の連続。
彼女の長いキャリアの中でも、『昨晩お会いしましょう』と並んで、曲、歌詞、アレンジ全てが噛み合った金字塔的作品。
『昨晩お会いしましょう』のアレンジはややマニアック指向だったのに比べて、こちらはよりポップさを増し、幅広く人口に膾炙したと思われる。
もはや溢れ出る才能が止まらない。
★10 

 17.DA・DI・DA(1985)

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好調はここでも続き、『メトロポリスの片隅で』という極めつけの名曲を筆頭に、めくるめく押し寄せる名曲の数々。
従来のアナログサウンドに新しいデジタル楽器が程よく融合し、バブル直前という当時の世相を抜きに今聴いてもキラキラワクワク得も言われぬ独特の高揚感に包まれる。
当時の興奮はいかばかりだったか。
★10 

 18.ALARM à la mode(1986)

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有名曲が入っていないので地味な印象だが、ここでも各楽曲のクオリティは極めて高く、癖になる曲が多い。
本当にこの時期のサウンドはいいなぁ。
隠れた名盤。
★10 

 19.ダイアモンドダストが消えぬまに(1987)

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時代はバブルと突入し、ユーミンサウンドもこのアルバムを境にド派手なデジタルサウンドにガラリと変わる。
明確に「売れ線」を意識した感じだが、曲のクオリティは相変わらず高い。
★9

 20.Delight Slight Light KISS(1988)

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これまで時代を取り込みながら高いクオリティを誇ってきたが、このアルバムでは派手なサウンドは更にエスカレートする一方、どうしたことか肝心の楽曲の魅力が一気に低下してしまう。
★5

 21.LOVE WARS(1989)

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楽曲は前作より持ち直すものの、派手な音作りとお手軽な印象は相変わらず。
★6

 22.天国のドア(1990)

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まさにバブル絶頂期でもあるこの時期の作品は自分はどうも繰り返して聴きたいとは思えない。
★6

 23.DAWN PURPLE(1991)

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相変わらず楽曲ごとのバラツキは大きいが、やたら派手な音作りはようやく落ち着きを取り戻してきた。
★7

 24.TEARS AND REASONS(1992)

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曲ごとのバラツキはあるが、徐々に良曲の比率が多くなってきている。ハウス系の音作りは時代を感じてしまう。
★7

 25.U-miz(1993)

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真夏の夜の夢』という大ヒット曲が出て長いスランプから復活の機運が高まってきたが、その他の曲はかつてのユーミンと同じ人物とは思えないほどの迷走気味。
★5

 26.THE DANCING SUN(1994)

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『Hello,my friend』そして『春よ、来い』というユーミンの全キャリアを通しても極めつけの名曲が収録され、何度目かの創作のピークを迎える。
他の曲も好調さがうかがえる90年代の名盤。
ボーカルスタイルがこのあたりから変化を見せ始める。
★8

 27.KATHMANDU(1995)

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ヒット曲を立て続けに飛ばしたことで余裕が出たのか、今作は趣味に走ってワールドミュージックやアシッドジャズの影響が濃厚でやたらとカッコいい。
てかこんなにカッコよかったっけ?このアルバム!?
最初に聴いた時はかなり地味な印象だったが、改めて聴き直してみたら印象は一変した。自分も全アルバムを聴いたことでユーミンの音楽の楽しみ方を理解してきたということか。聴けば聴くほど味わい深い作品。
★9

 28.Cowgirl Dreamin'(1997)

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 かなりロックに寄ったサウンド
『最後の嘘』『Called Game』という名曲はあるものの、個人的にはあまり印象に残らないアルバム。
★6

 29.スユアの波(1997)

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前半は堂々たるユーミン王道サウンドの連続で、長らく続いた迷走から久しぶりの女王復活を印象づける。
ただ後半は前半とのギャップが大きすぎる。
★8

 30.FROZEN ROSES(1999)

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前作からの好調は続き、更にスリリングなアレンジも相まってアルバムとしてはかなりの完成度。
ドスの利いた声も効果的でユーミンの新境地。
とても味わい深い作品。
★10

 31.acacia(2001)

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さらなる創作意欲の高まりを感じ絶好調。高レベルの良曲が満載の名盤。
しかも珍しく捨て曲なし(^_^;)
★9

 32.Wings of Winter, Shades of Summer(2002)

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初聴時は曲数が少ないせいかやや地味な印象だったが、改めて聴くと味わい深い良曲揃いの好盤。同じ海や雪をテーマにしていてもかつてのようなリゾート気分ではなくこちらは物悲しい喪失感が漂う。
★8

 Yuming Compositions: FACES(2003)

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彼女が他人に提供した曲のカヴァーアルバム。
全アルバムの中で唯一松任谷正隆氏の手を離れた曲が多く、そういう意味では新鮮。完成度もなかなか。
★8

 33.VIVA! 6×7(2004)

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古い映画をコンセプトにしたようだが、個人的にはやや楽曲の出来が低調に感じるアルバムで残念ながらあまり印象に残らない。
★5 

 34.A GIRL IN SUMMER(2006)

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ジャケットのイメージの通りどこかうら寂しい海がテーマのコンセプトアルバム。楽曲、歌詞、アレンジ全てが非常に高いレベルでガッチリ噛み合い、ついに80年代の傑作に肩を並べる21世紀のユーミンの傑作が生まれた。「ユーミン昔は好きだったけど最近は…」という人にこそ是非聴いてほしい。
★10

 35.そしてもう一度夢見るだろう(2009)

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ピカデリー・サーカス』『夜空でつながっている』『人魚姫の夢』などの名曲はあるものの、その他の曲のバラツキが大きく全体的にはやや低調に感じるアルバム。
★6

 

 36.Road Show(2011)

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良くも悪くも曲作りがシンプルになっている傾向。『ダンスのように抱き寄せたい』などいい曲はとてもいいんだけど、全体的にかつてのような「おっ!?」と目を見張る「ひねり」が少なくなっている。
★6 

37. POP CLASSICO(2013)

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アルバムタイトル通り、クラシカルなメロディとゴージャスなオーケストラアレンジが気持ちいい。後半の名曲畳み掛けは圧巻。
★7

 38.宇宙図書館(2016)

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表題曲『宇宙図書館』はこの年齢でこそ生み出し得た名曲。その他の曲も総じて高レベルで、現時点での最新盤だがまだまだ現役感満載。
特に歌詞の世界は死や喪失などの匂いが濃厚で独特な重厚さがにじみ出る。
ただ「え、なんでこの曲入れたの?」と訊いてみたくなるような曲ごとのバラツキが大きいのもユーミンらしさは変わらず現役(^_^;)
★7

 

目出度く全アルバムを制覇したところで、勝手ながら自分にとってのユーミンアルバムベスト5を考えてみた。

1. 昨晩お会いしましょう(1981)  

2. NO SIDE(1984

3. 悲しいほどお天気(1979)

4. MISSLIM(1974)

5. A GIRL IN SUMMER(2006)

この辺は生涯聴き続けることになるだろうな〜。

まだまだ現役のユーミン、誠に頼もしい限りだが、今年は新作の噂もある。
自分にとっては初めて耳にすることになる「ユーミンの新作」はどんな感じなんだろう?

今から楽しみで仕方ない。

 

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