ユーミンのアルバム全てを聴き終わって、次は大貫妙子を制覇したいと考えた。
自分にとっては特に80年代は生活の中心にあったと言っても過言ではないくらいに聴きまくっていた大貫妙子だが、90年代以降はすっかりご無沙汰してしまっていたので、これを機会にぜひ聴いてみたいと思った。
とはいえ現在自分が利用しているAmazonMusicUnlimitedで配信されているのは、1985年の『copine』以降のみ。(※追記・現在はほぼ全作配信済み)
しかしこれ以前のアルバムはたぶんほとんど手持ちであるので、これは全制覇いけるかも!
というわけで始めることにしたが、なにぶんほとんど聴いたことのなかったユーミンとは違って、80年代は死ぬほど聴きまくっていた大貫さんなので、思い入れたっぷり過ぎて果たして冷静な評価ができるかどうか甚だ疑問ではあるが、90年代以降は聴いたことのないアルバムも沢山あるので楽しみに進めていきたい。
ちなみにユーミンと大貫さんは全く同世代であり、その同時代性の共通点やお互い影響し合った点にも興味があるので、折りに触れ比較することが出来たら面白いと思う。
1. Grey Skies('76)
伝説のバンドシュガーベイブを解散し、盟友山下達郎に先駆けて発表したソロ作第1段。
とは言え歌唱スタイルはまだまだ不安定で定まっておらず、音楽性もまだまだシュガーベイブの流れを濃厚に汲んでいて、これからどこへ向かおうとしているのか試行錯誤といった感じではあるが、楽曲面においてはもう既に随所で非凡な才能を発揮している。
同時期のユーミンでいうと『The 14th Moon』にあたる。
楽曲創作の才能とセンスと、歌唱力に関してはほぼ同等と思われるが、両者の違いはそのポピュラリティか。
方やユーミンはその才能がポップな大衆性の方向に向かうが、大貫さんの方はそれが尖った才気の迸り方面に向かう感じ。
このデビュー盤においても既にその才気は随所で迸しりを見せてる。
★8
【この1曲】
『When I Met The Grey Sky』
矢野誠氏のアレンジによる曲。
琴を取り入れた前衛的なアレンジは同時期の矢野顕子の『JAPANESE GIRL』を彷彿とさせる。
今手元にクレジットがないので詳細は不明だが、恐らく矢野誠氏の手による不協和音を交えたピアノがとてもスリリングでカッコイイ。
ファーストアルバムにして才能が煌めいている。
2. SUNSHOWER('77)
全ての編曲は、YMO結成前の新進気鋭のアレンジャー坂本龍一の手によるもの。
この二人でやりたいように作ったと言われるアルバムで、サウンドは当時流行りのいわゆるクロスオーヴァーフュージョン。
全編に渡って坂本教授のローズとハモンド+アナログシンセが炸裂している。この時期の教授は本当にいい仕事をしている。
特にラストを飾る自作曲の『振り子の山羊』のオーケストレーションが素晴らしすぎる。
そしてドラムはなんと当時一世を風靡していたスタッフのクリス・パーカー。
これはかなり話題になったんじゃないかと思うのだが、なぜか全く売れなかったらしい…。
他の参加ミュージシャンも当時の日本を代表するトップクラスで、そのサウンドのクオリティは極めて高く、リリースから40年以上経った今になってようやく海外から「日本のシティポップ」というカテゴリーでこのアルバムが再評価されているらしい。むべなるかな。
★10
【この1曲】
『都会』
初期を代表する名曲。
イントロのソプラノサックスから軽快でお洒落なタイトル通り都会的サウンド。まさにシティポップ!
彼女のコーラスはかなりジャジーなハーモニーなのだが、全くジャズには聴こえない辺りは彼女の声質と人徳の為せる業か。
坂本龍一の間奏のシンセソロは、同時発音数の制限やポルタメントがかかっていたりと弾きにくそうなものの、最後まで力技で押し切っていてメチャメチャカッコイイ。
3. MIGNONNE('78)
やりたいように作った前作が売れなかったことで、レコード会社を移籍した今作は「売る」ために新たにプロデューサー(小倉エージ氏)を立て、大々的にプロモーションを行った、とのことだが、やはり売れずにご本人はしばらく立ち直れなかったらしい…。
アレンジは坂本龍一と瀬尾一三で半々。
プロデューサーとぶつかりながら言われた通りに歌詞やメロディを何度も書き直したりしても結果が出なかったことが彼女にとっては嫌な思い出のようで、このアルバムのご本人評価が低いのはとても残念だが、いやいやこれ、とてもいいアルバムです!
実際、『横顔』『突然の贈り物』『海と少年』など、のちに多くのミュージシャンにカヴァーされるスタンダードな名曲ぞろいで、自分にとっても現時点で一番好きなアルバム。これから聴き進んでいってこれ以上に好きなアルバムが出てくるか楽しみ。
★10
【この1曲】
『横顔』
どれも名曲ぞろいで迷ってしまうが、軽快なミディアムシャッフルの美しいメロディのこの曲。
アレンジもお洒落なアコースティックで心地いい。