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実録・連合赤軍 あさま山荘への道程

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若松孝二監督『 実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(2008)を観た。

公開当時に一度観ているので12年ぶりの再見だったが、当時は個人的に連合赤軍メンバーの著作を片っ端から読み漁っていたので、それに比べるとこの映画はリアリティに欠ける感じがして正直物足りず、あまりいい出来とは思えなかった。

 しかし改めて観てみると、なかなか面白かった。
前述したように、連合赤軍メンバー自身のそれぞれの著作を全て読んで来た自分にとっては、メンバーひとりひとりの生い立ちや人間性、そして総括の際のそれぞれの追い込まれ方など、どうしても掘り下げが物足りなく感じてしまうが、この事件の詳細を知らない人には、当時の時代背景や連合赤軍結成に至るまでの流れも追うことが出来て、この凄惨な事件が起きるまでの経緯を追うには必要十分にして、衝撃的だろう。

この事件の著作や映像に触れるたびに思うのは、やはり「共産主義」の決定的な誤り。
その思想には常に血塗られた粛清が伴う。
その理由は指導者への権力の集中や、過度な無謬性を強調するための絶対的神格化、個人個人の「精神の共産化」を図るための洗脳的手法、等々、様々な要素が挙げられるが、結局その全てが到達する所は例外なく血塗られた粛清だったことは、これまでの20世紀の歴史が証明している。
20世紀は多大な犠牲を払って共産主義の誤りを証明した歴史だったということが出来るだろう。

その共産主義の誤りを、日本という限定された範囲で多くの若者たちの命の犠牲を払って証明したのが、この連合赤軍事件だったと言えるだろう。 
今振り返ってみると、当時の学生運動も決して自然発生的なものではなく、背後に蠢く大きな影を容易に見て取ることが出来る。彼らはその大きな影に利用された気の毒な駒だということも言える。

この21世紀、令和の時代に、いまだにその名を冠した政党が国会に議席を有しているというのもにわかには信じ難い事実だが、日本は思想信条の自由な国だというのを改めて感じるほかない。

実録・連合赤軍 あさま山荘への道程

実録・連合赤軍 あさま山荘への道程

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video