それまでのヨーロッパ路線から脱却し、様々な音楽性に手を広げて試行錯誤を続ける時代に入った。
14. PURISSIMA('88)
前作でのギターポップなサウンドからここでは再びゴージャスなオーケストラサウンドに回帰する。
しかも今作では徹底して生音にこだわり、ジャズやボサノバなど音楽性も多岐に渡り、その豊潤な響きは身も心もとろけそうなほどうっとりしてしまう。
楽曲のクオリティもどの曲も非常に高く、一曲たりとも捨て曲なし。
まさにこれまでの彼女のキャリアの集大成と呼ぶに相応しい完成度を誇る傑作。
★10
【この1曲】
『或る晴れた日』
矢野顕子のピアノと大貫妙子の歌のみで、お互いの音楽を理解し合った達人二人が阿吽の呼吸で語り合う、余計なものを一切取り払った究極に幽玄な禅の世界。
メロディも本当に素晴らしく、自分には逆立ちしても書けない永遠の憧れ。
15. NEW MOON('90)
前作『Purissima』でこれまでのキャリアの集大成を作り上げ、2年の休養後心機一転して新たに新進気鋭のアレンジャー小林武史と組んで新しい領域に突入した。
これから3作小林武史プロデュース作品が続くが、これがその1作め。
そのサウンドは時代を反映してゲートリバーブの効いたデジタルサウンドで、その研ぎ澄まされた透明感は只事ではない。
ただ個人的には音色の一つ一つはとても美しいのだけれど、あまりにも冷徹過ぎて作り手の体温を感じない。
当時の自分の印象も変わらず、それまでずっと追いかけていたのがこのアルバムを最後に離れてしまった。
★6
【この1曲】
『花・ひらく夢』
CM用の曲でとても短い曲だが、デジタルで硬質ななサウンドのこのアルバムの中にあって、ふくよかなオーケストラアレンジのアコースティックサウンドでこの曲だけ異質な感じ。
曲も日本情緒溢れる旋律でとても耳に優しい。
この和風なメロディーは4年後のユーミンの『春よ、来い』に影響を与えた…なんてことはあるのかな?
16. DRAWING('92)
デジタル感が強すぎてやや冷徹な印象だった前作から一転して、ここではやけにポップに振り切れる。
あまりにもポップ過ぎて、歌詞などかなりこっ恥ずかしいものも。
楽曲は全体的にやや往時の冴えを感じさせない。
サウンドも含めて、当時全盛期だったユーミンをかなり意識しているのだろうか。ちなみにユーミンだと『TEARS AND REASONS』の頃。
★5
【この1曲】
『哀しみの足音』
そんな中にあってこの曲はオーケストラアレンジの大貫妙子王道のバラード。器楽的な上下動の激しいメロディがとても美しい。
やはり彼女はここに落ち着く。
17. Shooting star in the blue sky('93)
売れ線追求ポップ路線はさらにエスカレートし、歌詞はかなりこっ恥ずかしい。
サウンドもモータウン風だったりグラムロック風だったりと、やりたいことはわからないでもないけれど、彼女の曲調とはもう一つ噛み合っていない。
やはり長年のライバルユーミンのようなことをやりたかったんだと思われるが、それが成功したとは言い難い。
自分が今後聴くことはもうないかな。
★5
【この1曲】
該当曲なし。