チェリーの音楽幕府

音楽の話題が多いと見せかけてそうでもない

大河ドラマ『太平記』(1991)

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NHK大河ドラマアンコール『太平記』の再放送が終わった。

この吉川英治の原作は以前に読んだことがあるが、正直退屈でつまらなかった印象があったので、ドラマではそれをどう料理したのかと興味はあったが、やはり原作の印象を一変させるほどの大転換は難しかったようだ。

原作では主人公足利尊氏の辿った史実的な部分はさておき、藤夜叉という直冬の母という設定の架空の人物との色恋沙汰がとにかくつまらなかったが、それはドラマでも全く同じで、藤夜叉を演じた当時人気絶頂の宮沢りえの演技の拙さも相まって前半はこのパートが退屈極まりなかった。
後半藤夜叉がいなくなって以降は戦や政治的部分の裏切り裏切られがメインになり、俄然面白くなった。

あと気になったのは当時売り出し中の若手を大胆に起用したのはいいのだが、赤井英和陣内孝則柳葉敏郎筒井道隆の演技があまりにもひどくて観るにたえなかった。
そんな若手陣の中、唯一光っていたのは尊氏の弟直義を演じた高嶋政伸
特に尊氏との最後のシーンは本当に素晴らしかった。

もう一人光ったのは北条高時を演じた当時役者としてはまだ未知数だった片岡鶴太郎
本当は闘犬や田楽をして楽しくお気楽に暮らしたかったのに、北条家に生まれてしまったばかりに時代の過酷な運命に翻弄される悲哀を余す所なく見事に表現していた。

若手の起用はあまり上手く行かなかったところはあったが、その分主演の真田広之をはじめ、緒形拳柄本明、大地康夫、武田鉄矢などの重みのある役者陣の演技は素晴らしく、ドラマに重厚さをもたらしてくれた。

前半は正直退屈だったが、後半尻上がりに面白くなっていったこのドラマ。
あまり馴染みのない上に分かりにくかった鎌倉時代末期〜南北朝時代を改めてよく理解することができた。
そして何より、昨今の軽薄短小大河ドラマと比べて重厚感に溢れ見応えがあり、毎回観終わった後の満足感は高かった。
今の大河ドラマもこの頃の重厚感を取り戻してほしいものだ。