チェリーの音楽幕府

音楽の話題が多いと見せかけてそうでもない

実写版映画『進撃の巨人(前・後編)』

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アニメ版『進撃の巨人』をまとめて観て激しく感銘を受けた。
その興奮冷めやらぬまま、実写版の映画もあることを知り、一体この壮大な物語が実写版でどう表現されるのかとワクワクしながら観た。

しかし、これは一体・・・???
製作者はこの映画で何を描きたかったのだろう?
いったいなぜこんなものを作ってしまったんだろう?
という疑問しか浮かんでこなかった。

とにかく物語初期の最大の核となるエレンが巨人と戦うことを決意する動機と、エレンとミカサとの関係性が全く異なる。
もちろん映画化するにあたって原作と設定を変えてくるのはよくあることだが、それにしても最も重要なこの部分から違うのでは、もう最初の段階からこれは「進撃の巨人」ではない。
その最も重要な動機が希薄なので、物語が進んでも巨人と戦うその意味すらわからなくなってしまう。

役者の演技もやたらと大袈裟な表情と台詞回しとオーバーアクションばかりでどういう演出意図なのかが全く意味不明で、演じる役者たちも一体どうしていいかわからないまま撮影が進んでしまったかのようで気の毒だ。

おまけにアニメには一切なかったエロ要素までもが加わる始末で興醒め甚だしい。

ただ特撮畑の監督だけあってCGやセットは見るべきものがあったがそこまで。
映画の中で一番よかったのがラストのSEKAI NO OWARI の曲だったというのがもうね。

これを書くにあたって「はて、ラストどうやって終わったんだっけ?」と、見返してしまうほど、ラストシーンすら印象に残らなかった。
続きがあるかのような終わり方だったが、それもこの出来ではもう無理だろう(役者も欠けてしまっているし)。

大ヒット原作を映画化するにあたって様々な制約や事情があったことをあらゆる面で窺わせるが、それによってこの歴史的傑作の価値が損なわれてしまうのは非常に悲しむべきことだ。