チェリーの音楽幕府

音楽の話題が多いと見せかけてそうでもない

9月に読んだ本

新・マイルスを聴け!!中山 康樹
マイルス・デイヴィスの真実小川 隆夫
マイルス・デイヴィス完全入門中山 康樹
国々の公―世界ありのまま見聞録大高 未貴
神々の戦争大高 未貴

新・マイルスを聴け!!新・マイルスを聴け!!
(1997/05)
中山 康樹

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最近ジャズばかり聴いている。これは高校の時以来で、あの頃もジャズばかり聴いていて、本格的にロックを聴きだしたのは二十歳を過ぎてからだ。それからずっとジャズからは遠ざかってしまったのだが、最近また戻って来た。

特によく聴いているのがマイルスだ。実はこれまでマイルスはどちらかと言うと食わず嫌いだった。高校生の頃は、主にコルトレーンドルフィーなどの「熱い」ジャズが好きで、マイルスのクールさはガキの耳にはもう一つ馴染めなかった。よりによって「Bitches Brew」を最初の頃に聴いちゃって「なんじゃこりゃ!?」って思っちゃったのも大きいかも。今じゃ「Bitches Brew」も楽しんで聴けるけどね。

マイルスに関してはそのうち『私を通り過ぎた音たち』で書こうと思ってるけど、50年代のコルトレーンガーランドとのクインテット、60年代のショーター、ハンコックらとの黄金のクインテット、70年前後のいわゆるエレクトリック・マイルス、どれもすべてよい。

何より素晴らしいのは、一旦到達した自分の世界に安住せず、常に新しいことに挑み続けた姿勢だ。これほどの人であれば、一度築き上げた自分の世界を守り続けて一生食っていくことも可能なのに、常にそこに安住することなくブチ壊して先に進んでいくというのは、これぞ本物のミュージシャンだと思う。

発表する作品ごとに全く新しい姿を見せる。俺にとってこんなミュージシャンはマイルスの他にはビートルズYMOだけだ。これをリアルタイムで体験した人の興奮はいかばかりか。

この本はそんなマイルスの作品を時代を追って紹介していて、片っ端からマイルスを聴きまくっている今の俺にとっては、格好のガイドになってくれる。内容に関しては、著者の個性もあり、かなり乱暴な部分や納得いかない部分もあるが、それもマイルスを愛するが故と思えば、笑って聞き流せる。人それぞれに感想はあっていい。マイルスを聴く上の時代を追ったガイドとしては言うことなし。★★★★★

マイルス・デイヴィスの真実マイルス・デイヴィスの真実
(2002/10)
小川 隆夫

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そしてもう一冊マイルス本。

こちらは晩年のマイルス本人と親しかった著者が、マイルス自身のインタビューと、マイルスに関わる様々な人物のコメントで、マイルスの音楽と生涯を浮き彫りにしてゆく。

取材も丁寧で、とてもよく出来た本だ。

何より、本の側面を左右にグイッと曲げるとそれぞれ違うマイルスの写真が浮かび上がる装丁が素晴らしい。★★★★★

国々の公―世界ありのまま見聞録国々の公―世界ありのまま見聞録
(2005/08)
大高 未貴

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以前「朝まで生テレビ」に出ていたのを見て気になっていたジャーナリストの本。

イスラエルパレスチナサウジアラビアキューバ、アメリカ、中国、韓国、チベット、これらの国々に実際に入り込み、そこに住む人々の生の声と、筆者の受けた印象が語られている。

そのほとんどが、普段テレビや新聞を見ているだけではなかなか伝わってこないような内容だ。テレビや新聞などの表面的かつ画一的なステレオタイプの報道だけで、「わかったつもり」になることの危険を思い知らされる。もちろんここに書かれていることも全てではなく、百人の人がいれば百通りの考え方があるという、当たり前のことではある。しかしいざそれが生活習慣や宗教の全く違う遠く離れた外国となると、どうしてもマスコミの報道だけを鵜呑みにしてしまい、そこに住む人々それぞれの考えにまで意識が及ばない。違う国同士が理解しあうということは中々難しいことなのだ。★★★★

神々の戦争 (サブラブックス)神々の戦争 (サブラブックス)
(2001/11)
大高 未貴

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同じ筆者の、アフガニスタンパキスタンイスラエルパレスチナサウジアラビア等、主に中東に絞った潜入レポ。もちろんここに大きくかかわって来るのはイスラム教だ。日本人にはイマイチ分かりにくい中東問題、主にイスラムの戦争観について、そこに住み様々な立場の人の生の声が聞ける。深い泥沼に陥っている中東問題の一端が分かる本。

それにしても、メッカというイスラムの聖地を擁し、ごく一部の王族が専横的に権力を握り、その他の国民は政治に参加しないことを条件に税金を免除されほとんどを遊んで暮らし、実際に働いているのは外国からやって来る出稼ぎ労働者だという、サウジアラビアという国の実情には驚いた。恥ずかしながらこの事を俺は全然知らなかったのだが、それで成り立ってしまっているのが驚異的だ。しかし将来石油が枯渇した時には一体どうなってしまうのだろう?国家としてのアイデンティティは???

そんな事も含めて近い将来的のも数多くの矛盾と問題を抱える中東問題は、果てしないループに陥っている。この先、全世界的に打開を計ることは可能なのだろうか?★★★★