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山岳遭難関連書籍

ちょっとした手違いでAmazon kindle unlimitedに入ってしまったので、この機会に山と渓谷社から出版されている羽根田治氏による山岳遭難シリーズをまとめて読んでみようと思った。

・十大事故から読み解く山岳遭難の傷痕
・ドキュメント生還 山岳遭難からの救出
・ドキュメント道迷い遭難
・ドキュメント滑落遭難
・ドキュメント気象遭難
・山岳遭難の教訓 実例に学ぶ生還の条件
・ドキュメント単独行遭難
全て羽根田治著

以前からYouTubeで山岳遭難関連の動画をよく観て興味を持っていたジャンルだったが、さすがこれらはしっかりと取材されていてどれも読み応えがあった。
主に実際に遭難から帰還した人の証言をまとめたものと、過去に起きた大きな遭難事故の記録からその時一体何が起きたかを推測してその原因を考察するものの二つに分かれる。
ただ「生還した」とはいってもそれは「歩き回っていたらたまたま登山道に戻ることができた」とか「たまたま普段は人の入らないところに人が通りかかった」とか「たまたま救助ヘリに発見された」など、そのほとんどが奇跡的な「たまたま」偶然によるものであり、不幸にも発見されることなく生還できなかった人との差はほんの紙一重に過ぎないことがよくわかる。

そのきっかけはいずれもほんの些細な勘違いや判断ミスで、自分もかつて山登りしていて道に迷いかけたことも何度かあるが、一歩間違うと遭難していたかもしれないと読んでいてヒヤリとした。

山岳遭難の大きな要素の一つは道迷いであり、その原因のほとんどは谷を下ってしまい引き返すこともできずに万事休すというのはよく知られている。
山登りをする人ならば「道に迷ったらまずは来た道を引き返す、来た道が不明瞭ならばとにかく尾根を目指して登り返す」ことが最適解だということは誰でも常識として知っているはずなのだが、いざその状況に遭遇すると何故か谷を下ってしまう。
自分に置き換えて想像すると、おそらくはそのほとんどは下山中に発生し、かなり疲労が溜まっている状態でこれから引き返して登り返すのも辛いしこのまま降りればきっと人里に下りられるだろうという希望的観測に支配されてしまうのだろう。
実際この本での証言もほとんどがそれが理由であり、理屈ではわかってはいても実際その状況に追い込まれると心理的に常識が通用しないことが容易に想像できる。

今後自分が山歩きをすることがあるのかどうかはわからないが、もしあるとすればその意識はしっかりと持って十分肝に銘じたい。