近衛文麿「黙」して死す
すりかえられた戦争責任 | 鳥居 民 |
あやつられた龍馬 | 加治 将一 |
ジャズマンが愛する不朽のJAZZ名盤100 | 小川 隆夫 |
近衛文麿「黙」して死す―すりかえられた戦争責任 鳥居 民 (2007/03/21) 草思社 この商品の詳細を見る |
先月の本でも暗示されていたが、近衛が戦争犯罪人として起訴された背景に木戸幸一内大臣の果たした役割は確実に大きかったようで、この本では一貫して木戸の陰謀説に則って書かれている。
終戦前に近衛が中心になって働いた終戦工作、終戦後にはマッカーサーに直々に憲法改正の検討を指示されたこと、それらの事実に裏付けられたGHQの近衛に対する評価が、ある時期を境に手のひらを返したようにひっくり返ってしまったことの不可解さが、木戸陰謀説を取ることで一応辻褄が合う。
これにより、近衛は自ら死を選び、木戸は死刑を免れる。
どちらかが死をもって責任を取らなければならなかったという極限に追い込まれたこの状況で、近衛は何を胸にしまって死を選んだのだろうか。
そしてこの本では、ルーズベルトの死によって大統領の座が転がり込んで来たことにより、図らずも核という魔の兵器を手にしてしまった興奮と、その魔力に魅入られてしまったトルーマンという人物個人の資質についても言及している。
もしルーズベルトが死んでいなかったら、その後の世界の歴史はかなり変わっていただろう。広島長崎へのアメリカの原爆投下について、近頃問題となった久間前防衛大臣の発言があったばかりで、これもタイムリーだった。★★★★
あやつられた龍馬―明治維新と英国諜報部、そしてフリーメーソン 加治 将一 (2006/02) 祥伝社 この商品の詳細を見る |
タイトルを一目見て、「あ~はいはいフリーメーソンフリーメーソン」と苦笑してしまったのだが、実際読んでみたらこれが非常に面白かった!
主題はフリーメーソン云々よりも、日本という国が大きな変革をしようとしている不安定な幕末期に、色々な国から入り込んで来た外国人(ここでは主に英国人)たちの果たした大きな役割について。
特にトーマス・グラバーや英国大使パークス、アーネスト・サトウという面々。そう言えばこの人たちの名前、幕末本には必ず登場する重要な名前であるものの、実際にはどうも今ひとつ何をしていたがわからんもんね、
日本の幕末の激動は彼らの工作によってもたらされたものであり、工作活動は主に薩摩藩、長州藩を中心に行われ、龍馬はそれを受けた土佐藩のエージェントの一人である。しかしこれらの工作は巧妙に行われたので証拠はほとんど残っていない、とのことで筆者の憶測で書かれている部分が目立つのだが、ところがどっこいこれがまた意外に説得力があって面白かった。
龍馬暗殺の場面の驚くべき新説の展開も新鮮で非常に興味深く読むことが出来た。★★★★★