チェリーの音楽幕府

音楽の話題が多いと見せかけてそうでもない

3月に読んだ本

江戸川乱歩全集 第11巻 緑衣の鬼江戸川乱歩
オリンピックの身代金奥田 英朗
流星ワゴン重松 清
神様からひと言荻原 浩

江戸川乱歩全集 第11巻 緑衣の鬼 (光文社文庫)江戸川乱歩全集 第11巻 緑衣の鬼 (光文社文庫)
(2004/05/13)
江戸川 乱歩

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『緑衣の鬼』『幽霊塔』

ネタ切れスランプに陥っていた乱歩が、一転、他に原作を求めた翻案に向かいそれが大いに成功する。

『緑衣の鬼』は海外探偵小説が原作、『幽霊塔』は同じく海外探偵小説の原作を黒岩涙香が翻訳した物を更に乱歩が書き換えたもの。

どちらも原作の面白さは保証済みなので、そこに乱歩の筆が加わる事によって素晴らしい効果を発揮している。

久しぶりに乱歩の面目躍如。

血湧き肉踊るお話が展開されて飽きる事がない。

★★★★★

オリンピックの身代金オリンピックの身代金
(2008/11/28)
奥田 英朗

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さて毎度お馴染み奥田英朗氏の近作であります。

彼の作品はシリアスものとコメディものの二つに比較的はっきりと分かれるが、これはシリアスものの方。

舞台は昭和39年東京オリンピック開幕直前の東京。

戦後の傷も癒えて、オリンピックを契機に東京中の町を掘り起こして、その後一気に高度経済成長に向かおうとしている時代の空気がとてもよく表現されている。

反面に伴い、華やかな都会の裏側に相変わらず貧しい地方生活者の苦しみも同時に存在する。

そんな時代のギャップに苦しむ真面目な若者が主人公。

随所随所に当時の時代の空気が感じられて、戦後マニアの自分にはとても面白く読むことができた。

★★★★

流星ワゴン (講談社文庫)流星ワゴン (講談社文庫)
(2005/02/15)
重松 清

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「もう死んでもいいかな」と思ったサラリーマンが、ある夜駅前で親子連れの乗る車に乗って走り出す。

その親子は数年前に事故で死んだ親子で、その車に乗って主人公は、その時は気付かなかったがのちに過去の運命の分かれ道となった瞬間をもう一度体験することになる。

その結果を知っている主人公は運命を変えることができるのか。

そこに今まさに息を引き取る間近の実の父親が絡む。

車の親子とともに、父と子の関係が物語を支配する。

どことなく浅田次郎の『椿山課長の七日間』にも似た設定のお話。

三者三様の父と子の関係には胸が熱くなる。

★★★★

神様からひと言 (光文社文庫)神様からひと言 (光文社文庫)
(2005/03/10)
荻原 浩

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大手広告代理店を退社して食品メーカーに就職した主人公。

そこの重要な会議で大失態を演じて、苦情処理担当に回される。

実はその部署はリストラ候補の吹きだまりで、キャラクターの濃い人物が好き勝手に過ごしている。

普段はちゃらんぽらんだが、クレーム処理に天才的な才能を発揮する先輩とともに様々な苦情処理を乗り越えて行く。

この映像が目に浮かぶキャラの立ち方とセリフ回しってまさしくドラマ向きだよな~と思いながら読んでいたら、やっぱり過去にドラマ化されていたらしい。

中々面白かったです。

★★★★