オウム-なぜ宗教はテロリズムを生んだのか- | 島田 裕巳 |
総天然色で見る昭和30年代の鉄道 西日本編 | 荻原 二郎 |
東京物語 | 奥田 英朗 |
2011年新聞・テレビ消滅 | 佐々木 俊尚 |
黒幕―昭和闇の支配者 | 大下 英治 |
オウム-なぜ宗教はテロリズムを生んだのか- (2001/07/30) 島田 裕巳 商品詳細を見る |
宗教学者島田裕巳による、オウム事件を宗教学的見地から考察した本。
島田氏といえば、当時オウムを擁護したとしてテレビ雑誌で猛烈なバッシングに遭っていたことを昨日の事のように思い出す。
氏はその中反論を試みていたが、何ぶんそんなバッシング禍の中ではかえって火に油を注ぐ格好になっていた。
この本ではそれが根拠のないバッシングだった事が改めて明かされる。
さてそんなオウム真理教、当時連合赤軍事件を追いかけていた俺はこの事件に何か通ずるものを感じて、何故こんな事件が起きてしまったのか異常に興味を持って、事件の渦中、近所のサティアンショップに現役信者の話を聞きに通ったりしていた。
もちろん入信などする気は更々なく、単純に信者はどういう気持ちで過ごしているのか聞きたかったから。
よく話してくれた信者は、ブルーハーツの好きなごくごく普通の明るい女の子だった。
入信するに至った経緯も、特に悪びれたり隠すような事無く、ありのままにざっくばらんに話してくれた。
一度だけ名前を聞かれたが、言いたくないと言うとあっさり了解し、その後も何度か通ったが、勧誘されるようなそぶりも全くなく、そのうちショップは店を閉じてしまった。
なので結局こちらの知りたかった事はよく分からないままだった。
当時はよくわからないままだったが、その後麻原の著作やその他の考察本を読んで、なんとなく大まかな教義等は知ることができた。
それがこの本ではオウムの設立から巨大化する過程や教義などから、事件に至った理由が考察される。
事件を起こすに至った要因の一つは、タントラヴァジラヤーナの教え。
詳しくここに書くのは避けるが、要するにこの世で悪業をなした人は、グルの導きによってその魂を天上界にポアすることができるというもの。
これによって、グルが認めさえすればその人の魂を奪ってもそれは罪にはならず,逆に善業になるという理論。
なので信者たちは人を殺すにもさほどの罪の意識は感じる事は無かったと思われる。
これは根本的に現代社会のルールに真っ向から反する。
しかし信者たちに取ってはそれが正しいルールなので、全く社会と相容れる事がない。
イスラム原理主義者の聖戦理論による自爆テロにも通ずるものだ。
もう一つはマハームドラーの理論。
これは、グルが弟子たちに与えるいわゆる「試練」のことで、グルに一見無茶な反社会的な事を命じられても、それには深い理由があり、その試練を乗り越え成就する事でより高い意識での解脱へと近づくことができる、というもの。
これによって信者たちは社会的には疑問に思うような事でも、率先して行動する事が可能になってしまった。
そしてこの教えは必然的に周囲の者がグルの考えを先回りして「察する」ことが恒常的になり、信者たちは競ってより過激な方向へとエスカレートしていってしまったのがこの事件だと言えるだろう。
この二つの理論の元で、あの一連の事件は起こされた。
そこには高度に洗練された洗脳技術があり、その過程としてクンダリニーの覚醒といういわゆる「神秘体験」へのプロセスが科学的にカリキュラムとして体系づけられ、オウムに入信すれば大部分の人がこの体験をすることができるという事でそれは強烈に根拠づけられていた。
これが当時オウム真理教が多くの信者を集めた理由だったと思われる。
当時の一連のオウム真理教事件の宗教学的見地からの考察は、恐らくこれでほぼ正解だろう。
しかしどうしても疑問が残るのは、いわゆるオウム事件としてその後裁判となった事例はあくまで氷山の一角で、その裏にはいまだに解明されていない大きな謎が数多く残っている事。
大部分の事件を主導したと言われる村井とは一体何者だったのか?
北朝鮮やロシアとの関係、第7サティアンは本当にサリン生成プラントだったのか?など。
それ以外にもひっそりと葬られたもっと大きな事があったような気がしてならない。
その謎が解明される日は来るのだろうか。
20年前、高学歴の若者たちが社会に喪失感を抱き、オウムに走った。
そんな若者たちにとって、自らの頭で考える必要がなく全面的に身も心も依存する事のできるオウムは、居心地のいい空間だったに違いない。
今はどうか。
当時と比べてケタ違いに若者たちの社会に対する喪失感は大きくなっているだろう。
もし、オウムが20年遅れていたら・・・?
あの事件をまだ起こす事無く、純粋に宗教団体として今の世に産まれていたら??
当時とは比較にならない若者たちが依存する場と救いを求めて殺到している気がしてならない。
オウムとしてはあの事件を起こしてしまった以上これ以上大きくなる事は考えづらいが、オウムでノウハウを学んだ者が全く新しい団体を興して同じ事をしようとする可能性は無いとは言えない。
今オウムがあれば爆発的に人を引き付け大きくなる危険性は否定できない。
その時一体どうなるのか。
漠然とした不安はいまだに残る。
★★★★
総天然色で見る昭和30年代の鉄道 西日本編(達人が撮った鉄道黄金時代5) (2009/03/28) 荻原 二郎 商品詳細を見る |
先月読んだ東日本編の次は西日本編。
こちらも素晴らし過ぎる。
半世紀以上前の日本の姿が保存状態のいいカラー写真で生き生きと目の前に甦る。
特に西日本のローカル鉄道の風景はまさにつげ義春の世界。
手書きの看板が並んでいたり、日傘をさした夫人が土手を歩いてたりね。
うわぁ~もう!って感じ。
★★★★★
東京物語 (2001/10/26) 奥田 英朗 商品詳細を見る |
さあ毎度お馴染み奥田英朗です。
この小説は1978年に東京に出てきた学生が、大学を中退して広告会社に就職し、やがてフリーのコピーライターとなりバブルの渦に突入していく過程を描いたお話。
大学生活の甘酸っぱい恋愛からバブル絶頂期のカネがうなり飛ぶ世界まで、それぞれその時々の時事ニュースを絡めてあり、時代の空気感を感じることができる。
やっぱり上手いな~。
ちなみにバブルの頃はこんな話を伝説のようにあちこちで聞いたけど、俺は全くバブルの恩恵は受けていないので遠い世界のような話。
バブルの頃が生涯で一番貧乏だったもんな~。
★★★
2011年新聞・テレビ消滅 (文春新書) (2009/07) 佐々木 俊尚 商品詳細を見る |
Twitterでもフォローしている佐々木氏の著作。
インターネットの普及によって、現在従来のマスコミが大きな存亡の危機に立っている。
それをどう乗り切るのか、果たしてマスコミに生き残る道はあるのか。
それは現時点ではかなり絶望的のようだ。
そこから先はアイデア勝負。
誰もが思いもつかなかったアイデアでインターネットとマスコミを結びつける者が出て来る可能性は残されているが、果たしてどうなるか。
いずれにしても従来のままの高みに立ったマスコミは滅びて行くだろう。
マスコミが世論を作って行くという役割はもう終わった。
★★★
黒幕―昭和闇の支配者〈1巻〉 (だいわ文庫) (2006/03) 大下 英治 商品詳細を見る |
昭和の黒幕児玉誉士夫の生涯。
謎に包まれた彼の人生を克明に描いた…と言いたいところだが、やはりこれを読んでも彼は一体何者で何をしてきたのかは謎のまま残る。
何故彼がこれほどまでに影響力を持つことができたのか?
それにしてもこの人の作品は文章がどうも読みにくい。
★★