今月も先月に引き続きレベルの高い豊作です!!!
父・山口多聞
―空母「飛龍」の最後と多聞「愛」の手紙 | 山口 宗敏 |
獄窓記 | 山本 譲司 |
潮騒 | 三島 由紀夫 |
40年前の東京―昭和38年から昭和41年 春日昌昭のトウキョウ | 佐藤 嘉尚、春日 昌昭 他 |
昭和を走った列車物語
鉄道史を彩る十五の名場面 | 浅野明彦 |
ブルーノート決定盤100 | 宝島JAZZ BOOK編集部 |
父・山口多聞―空母「飛龍」の最後と多聞「愛」の手紙 山口 宗敏 (2002/06) 光人社 この商品の詳細を見る |
大東亜戦争におけるミッドウェー海戦。ここで痛恨の敗戦を喫した日本軍は以後破滅への道を突き進んでいく。
ここまでは知っていた。しかしその海戦で唯一最後まで奮戦した空母飛龍、そこで指揮を奮り、飛龍撃沈に際して艦と運命を共にした司令官山口多聞と言う人物がいたこと。
これはこの本を読むまでは恥ずかしながら全く知らなかった。
これほどの人物の存在が全く教えられることがなかった戦後の状況はやはりどこかおかしい。
この本はその山口多聞の遺児が、当時父が母に送り続けた手紙を公開したものである。
その手紙の内容は妻を想う愛情にあふれ、残した子供たちを案じる、夫として、父親としての優しさに満ちあふれている。
日々緊張感を強いられる戦場において部下を思う厳しくも優しい上官としての顔と、一方では家族を思う父親としての顔。
靖国神社の遊就館に展示されている兵士たちの遺書といい、この時代の人たちは何故もこう立派なのだろうか。少なくとも現代を生きる自分には、いざその場に際して、動揺する事ことなく、かくも潔く最後を迎えられる自信はない。
今と何が違うかといえばやはり教育だろうなぁ。
戦後、自由と権利があまりに喧伝され過ぎた事で、それが拡大解釈されてしまったきらいがある。いかに自由と権利が大事だとは言っても、それはあくまでも社会に対しての義務と責任を果たした上に初めて主張されるべきものであることが忘れられてしまってきた。
教育勅語と修身教育の精神をもう一度呼び戻す事が必要なのかもしれない。★★★★★
獄窓記 山本 譲司 (2003/12) ポプラ社 この商品の詳細を見る |
秘書給与問題で実刑判決を受けて服役した元民主党衆院議員の刑務所生活を綴った手記。みちのくを一人旅したジョージじゃないよ。
あまり知られていない刑務所内のリアルな実態が描かれていて、特に障害者の受刑者に関わる部分は色んな意味でタブーであるのか、これまでほとんど語られる事がなかったのでかなり衝撃的なものだ。毎日受刑者の排泄物にまみれる生活や、工場で受刑者にひもの結び目をほどく作業をさせるのだが、その作業が終わるとそのひもを全部結び直してまた次の日に同じ作業をさせる・・・などといった不毛な実態にはショックを受けた。
その他にも刑務所の収容能力が不足している問題、出所後のサポート不足で結局また再犯を重ねてしまう問題など、まだまだ知られざる刑務所の問題は沢山あるようだ。しかしそれを大っぴらに語る事はタブーでもあるのでなかなか解決は難しい。★★★★
潮騒 三島 由紀夫 (1955/12) 新潮社 この商品の詳細を見る |
思想上の問題で嫌悪感があり、子供の頃からずっと三島由紀夫は敬遠して来た。
しかし今となってみて、彼の死に至った思想に対して、全面的にとは言えないまでも、自分の中である種の理解が生まれて来たことで、特に彼の作品に対する偏見は今や全くなくなった。
なので今更ながら読んでみようと思い立った。
「潮騒」。百恵ちゃんも堀ちえみもどちらも見た事はないが、「その火を飛び越して来い」の有名なシーンはなぜかよく知っている♪
さて読んでみると、想像していた三島由紀夫のイメージとは違い、あまりにストレートな純愛物語に驚いた。読み進めば読み進めるほど、美しい日本語と美しい島の情景と若い二人の繊細な心の動きのさまに、心が浄化されていく気がした。
なるほど、これは名作だ。これほどの名作を下らない偏見で避けていた自分を恥じる。★★★★★
40年前の東京―昭和38年から昭和41年 春日昌昭のトウキョウ 佐藤 嘉尚、春日 昌昭 他 (2006/06) 生活情報センター この商品の詳細を見る |
東京オリンピック前後の東京の情景。俺はまだ生まれていないが、今の俺よりずっと若い両親たちが一緒に見ていた風景。
この写真の中にはまぎれもなく若き日の両親の姿がある。それだけで泣けて来た。
春日昌昭の写真には、この手の写真としては人間の顔が沢山写り込んでいる。その時代時代を懸命に生きる人々の顔はどれもみな美しい。★★★★★
昭和を走った列車物語 JTBキャンブックス 浅野 明彦 (2001/10) JTB この商品の詳細を見る |
昭和の鉄道史の中でもテーマをいくつかに絞って、一つ一つを丁寧に調査した本。
色々なテーマがあったが、復員列車や集団就職列車や修学旅行列車など、余り語られる事のないテーマがとても興味深く読む事が出来た。
連合軍専用列車の項で、地方の路面電車にも連合軍専用列車があり、北九州では常に専用車が町中を流していて、停車場以外でも街で米兵が手を挙げればタクシーのようにどこでも停まらなければいけなかったというのには驚いた。★★★★