安倍総理が退陣を表明した。
正直言って、何故この時期に?という疑問で一杯だ。あれだけ大敗した参議院選挙を乗り切り、内閣改造をし、国会が始まり所信表明をした直後にこの発表というのは、どう考えても政権を投げ出したとしか思えず、無責任極まりないとの批判を受けるのは当然だ。これによって国政が停滞することは免れず、一日も早く進行させなければならなかった改革が止まってしまう責任は大きい。
しかし俺が安倍さんに同情的になってしまうのはここに至るまでの経緯があるからだ。
かつてここまで人格までもを破壊する勢いでマスコミによってたかって叩かれた総理はいただろうか? 森総理はこれに近かったが、彼の場合政権誕生のいきさつもあって、支持率も相応に低かった。しかし安倍総理は最後の方は落ちた落ちたと言っても、それでも3割近い人が支持していたのにこの有様である。その叩きようは常軌を逸していた。あんな攻撃をされ続けたら、常人であればとっくに人格が崩壊してしまっているだろう。我が国の最高責任者をここまで追いつめた責任は一体誰が取るというのか。
朝青龍に対しても同じことが言えるが、ここ最近のマスコミは、一度叩く標的を決めると、徹底的にエスカレートする一方で歯止めが利かなくなっている。ちょっとどうかしているんじゃないか? あまりにもマスコミの常軌を逸した叩きぶりには疑問を感じざるを得ない。
言葉尻をとらえてその部分だけをねじ曲げて叩くことに関しては、政治家は言質を取られないように最も注意しなければならないことだが、その辺の注意が閣僚に足りなかったことは確かだ。しかし政治資金問題もそうだが、あまりにもきれい事に潔癖性になリ過ぎてはいないだろうか。肝心な政策や能力よりも些細なことで足を引っ張られ過ぎている気がしてならない。もちろん政治家がクリーンであることに越したことはないが、些細なことに気を取られ過ぎるあまり、スケールの大きい政治家がいなくなり、小粒な者しか残れなくなってしまう恐れは大いにある。きれい事だけで済む話ではなくて、お金を集めるということも政治家には重要な能力なのだ。
さて、安倍政権の失策は何だったか。振り返って考えてみるとまず最も大きいのは、問題が発生したときの対処の仕方をことごとく失敗したことだろう。
政権発足当初の支持率の高さから、安倍さんは「ひたすら真面目に愚直に正しいことを進めていけば国民はわかってくれるだろう」と思ってしまった節があることは否めない。「美しい国へ」というスローガンも素晴らしく、俺は大いに賛同したものだが、この言葉がこれほど叩かれるとは思いもよらなかった。よほど「美しい国」になられては利権が失われて困る勢力が多かったということか。その後は何かあるたびに常に足を引っ張られ続け身動きを封じられて来たという印象しかない。おそらく思い描いていたことのほとんどは出来ずじまいだっただろう。それでもこれまで誰も出来なかった教育基本法や国民投票法、公務員改革を成し遂げたのは大いに評価に値する。
しかしマスコミを敵に回してしまったのが大きな失敗だった。安倍さんは日本では数少ない確固たる政治哲学と政治理念を持った政治家だが、マスコミを味方に付けた反安倍勢力はそんなの関係ねえとばかりに、閣僚の失言や政治資金の不始末を突つき出した。民主党も安倍さんの得意分野である天下国家を論じることを避け、年金や農業など生活に関することを重点を置くようになった。
安倍さんに最も足りなかったのは、根回しや策略などを要する狡猾さではなかっただろうか。何しろ相手は策略に賭けては古今東西右に出る者のいない政治家である小沢一郎氏と、世論を自在にコントロールすることのできるマスコミとそれを操る勢力である。政治にはある種のズル賢さが必要であるが、それに対抗する策略が及ばなかったのが大きな原因だ。高い理念や理想を持ち、真っ正直に直球で立ち向かっていけば国民は分かってくれるという期待と甘さにつけ込まれてしまった。最後はまさに全身に矢を浴びている状態で、気の毒で見ていられなかった。
さて、早速次の総理へとうごめき出しているが、現時点で最有力は福田さんか・・・。俺は何故毎回この人の名前が取りざたされるのかさっぱりわからない。この人からは「自分は日本をこうしたい!」という明確な意志が全く伝わってこない。それどころかこれまでのこの人のとって来た言動は全く支持できるものではない。なのでこうして毎回マスコミが作り出す「福田待望論」にはとても胡散臭いものを感じてしまう。一体これは何なんだ? しかし今回は本人もその気になっているようなので、決まってしまうかもしれない。麻生さんならともかく、福田さんとなれば旧態依然の自民党へ逆戻りすることは間違いないだろう。このままでは選挙にも勝てないだろうし、自民党暗黒時代の幕開けだ。
これを打破するにはもう政界再編しか道は残されていないのか。政策本位での政界再編が望まれる。その大仕事を成し遂げることの出来る人物はいるのだろうか?
安倍さん、今までご苦労様でした。
あなたの政治哲学、政治理念はまたすぐに必要とされる時が来る。それまでに英気を養ってその時はまた日本をよろしく頼む!!!