チェリーの音楽幕府

音楽の話題が多いと見せかけてそうでもない

4月に読んだ本

渡邉恒雄回顧録伊藤 隆 御厨 貴
総天然色で見る昭和30年代の鉄道 東日本編荻原 二郎
渡邉恒雄 メディアと権力魚住 昭
極秘捜査―政府・警察・自衛隊の「対オウム事件ファイル」麻生 幾

渡邉恒雄回顧録渡邉恒雄回顧録
(2000/01)
伊藤 隆御厨 貴

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言わずと知れたあの「ナベツネ」の回顧録。

学生時代応召され、復員後共産党に入党し除名。

その後読売新聞に入社し政治記者としてメキメキと台頭するあたりから現在に至るまで赤裸々に語られる。

これを読むに付け、とにかくこの人は日本の戦後政治のほとんどに裏から積極的に関わっている。

それどころか政治記者の立場で政治家の懐深くに食い込み、政治そのものを動かしている。

この手法の是非は評価が分かれる所だろうが、最近の大連立騒動などもこうして見るとその手法の延長線の一環であった。

最近も立ち上がれ日本の創設に関わっているとの噂もあり、まだまだ現役といった所か。

その手法には疑問点も沢山あるが、その主張はほとんどぶれる事無く一貫している。

論点も明晰で、さすがとうならされる部分が非常に多い。

いずれにしても、彼の人生を語る事がすなわち日本の戦後政治史の裏面が語られるので、戦後の政治史研究にも役に立つ本。

ただどこまで本当の事を語っているのかは謎。

彼の言い分をまともに信じるのもやや躊躇する。

戦後の政界裏面史として読むととても面白い本。

★★★★★

渡邉恒雄 メディアと権力渡邉恒雄 メディアと権力
(2000/06)
魚住 昭

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もう一冊ナベツネ本。

こちらは彼の生涯の中でも主にのし上がって行く為の権謀術策に焦点を当てて描かれる。

自分は会社勤めの経験がないのでよく分からないのだが、大きな会社で出世していくにはこれほどまでのドロドロとした陰謀や追い落としなどの権力闘争が日々行われているのだろうか?

ドラマの中ではよくあるが、にわかには信じ難い。

彼は生涯をかけてそれを繰り返し、ついに大読売のトップの座をつかんだ、とこの本では語られる。

読んでいる途中であまりの権力闘争のドロドロにうんざりしてしまう。

それにしても人のトップに立つ者というのは、味方に引き入れるとひたすら可愛がり、いざ敵と見ると徹底的に叩き潰すという猜疑心の固まりのようなタイプが多い気がする。

この人しかり、小沢一郎しかり。

田中角栄も同じタイプだが、あの人の場合は人間の器がもっと大きかったのだろう。

★★

総天然色で見る昭和30年代の鉄道 東日本編(達人が撮った鉄道黄金時代4)総天然色で見る昭和30年代の鉄道 東日本編(達人が撮った鉄道黄金時代4)
(2009/03/28)
荻原 二郎

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これは本当に素晴らしい。

タイトルの通り、昭和30年代の今ではもう見る事の出来ない鉄道が生々しいカラー写真で甦る。

カラーになる事によって、当時の空気や街並、人々の生活感までもが生々しく感じられることができる。

ずっと手元に置いておきたい本。

★★★★★

極秘捜査―政府・警察・自衛隊の「対オウム事件ファイル」 (文春文庫)極秘捜査―政府・警察・自衛隊の「対オウム事件ファイル」 (文春文庫)
(2000/08)
麻生 幾

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一連のオウム真理教事件の際に、警察自衛隊はどう動いたか。

なかなか表には出て来ない当時の動きを詳しくまとめたノンフィクション。

警察官たちも今まで全く経験のなかった大都会でのテロに、恐怖を覚え例えようもない緊張感の中、しっかりと職務を遂行していた。

驚くべきは誰も想像すらしていなかった毒ガス発生という事態を、それ以前から想定し訓練していた部隊があったという事。

そのいつ役に立つとも知れぬ地道な研究のお陰で、事件直後の混乱している中にもかかわらず、適切に薬が配備されそれ以上の大きな被害を防いだ事は特筆に値するだろう。

しかしオウム事件は表面に現れているのは氷山の一角と思えてならない。

その裏にはもっと奥深い闇が隠れているような気がしてならない。

★★★