チェリーの音楽幕府

音楽の話題が多いと見せかけてそうでもない

7月に読んだ本

幕末 維新の暗号

群像写真はなぜ撮られ、そして抹殺されたのか

加治 将一
朝日新聞の「戦後」責任片岡 正巳

幕末 維新の暗号 幕末 維新の暗号
加治 将一 (2007/04/21)
祥伝社

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幕末好きの間では有名な「幕末志士全員集合写真」。これには坂本龍馬中岡慎太郎をはじめ、西郷隆盛大久保利通高杉晋作伊藤博文岩倉具視勝海舟などなど・・・絢爛たる幕末の志士たちが一堂に会したとされている写真である。もちろんこれだけの人物がこの時期に一堂に会するなど、物理的にあり得ないということで、通常は一笑に付されるいわゆる『トンデモ写真』である。

しかしこの写真を改めて綿密に調査して行くと、様々な謎が浮かび上がり、その謎は最終的にある一点に集結する。その謎は遠く南北朝時代まで壮大なスケールで遡り、日本史最大のタブーに突き当たる・・・という内容をミステリー小説仕立てに仕上げた本である。

先月読んだ『あやつられた龍馬』と同じ作者の続編とも言える作品だが、テーマがテーマだけに小説形式にしたのは正解だろう。

「幕末志士全員集合写真」や「明治天皇すり替え説」など、幕末維新史の中でまことしやかに囁かれるトンデモ系の噂を元にした小説ではあるが、いざ読んでみるとその噂の一つ一つがが巧みにつなぎあわされて、これが意外に説得力があってグイグイと惹き付けられて非常に面白かった。

この結論の真偽は置いておいて、確かに幕末維新史にはあまりにも謎が多過ぎる。これが多くの人を惹き付けてやまない魔力の根源だろう。★★★★★

朝日新聞の「戦後」責任 朝日新聞の「戦後」責任
片岡 正巳 (1998/02)
展転社

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去年の9月8日の記事でも書いたが、自分は子供の頃から20代までの長きに渡って、どっぷりと朝日に身を浸かった正真正銘の『朝日信者』だった。高校時代には、あろうことか投稿が掲載されたこともある。

そこまで信じ切っていた朝日新聞。この強固な洗脳が解けるのには購読を止めてから実に10年近くの歳月を要した。それほどまでにこの洗脳は強力だった。

それもそのはず、戦後長きに渡って日本人のほとんどを巧みにリードして来た朝日新聞である。若き正義に燃える青年だった俺のような者など赤子の手をひねる程度でわけもない。

反戦、平和、人権、平等・・・なるほど、優しく正義感の強い日本人にとってこの自尊心をくすぐる美辞麗句は、媚薬のごとく響く言葉である。

しかし「優しさ」だけでは決して問題の解決にはならず、かえってこじらせてしまうということは、ある程度の大人になれば理解してゆく事だが、青雲の志に燃える若き青年にとってこれらの「優しい」言葉の数々は、自分の良心を満足させるには充分過ぎるものであった。

そんな誰もが反対する事の出来ない言葉を巧みに使って日本国民をミスリードして来たのが朝日新聞である。

しかしネット時代となり、新聞各社の記事を読み比べる事が容易にできるようになった現在、60年以上に渡って疑う事を知らなかった日本人も、ようやくにここに至って多くの人が朝日の際立った特異性に気付き始めてきたようだ。俺も恥ずかしながらその一人。

この本では朝日新聞が、戦後記事においてどのようにミスリードを繰り返して来たかを検証している。

その記事の多くは自分も目にして来た物だ。今改めて読み返すと明らかにおかしいと思える記事でも、もちろんその当時は疑いもしなかったことが恐ろしい。★★★