チェリーの音楽幕府

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The Beach Boys『1967 - Sunshine Tomorrow』

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最近ビーチボーイズの60年代後半のアルバムがリリース50年を記念してステレオリミックスされたりアウトテイクが大量にリリースされているので、備忘録を兼ねて記録していくことにする。

まずは『1967 - Sunshine Tomorrow』。
これの目玉は1967年リリースの『Wild Honey』の初の(かな?)ステレオリミックス。(1-11)
しかし1967−69年くらいの間はビーチボーイズの長い歴史の中でもとりわけ暗黒期と呼んでいい時期で、その時期にリリースされたこの『Wild Honey』も完成度は低く、自分のようなファンでも好んで聴きたくなることはほとんどないくらいの、まず初心者にはとてもお勧めできないアルバム(^_^;)
とはいえ愛着はあるので、今の時代にこうしてこのアルバムがこれまでの音源とはケタ違いの極めて高音質でしかもステレオで聴ける喜びはファンとしては大きい。
しかしそんな暗黒期にも『Darlin'』という飛び抜けた名曲を生み出しているのはさすが。

そして12-25と2枚目前半は67年に録音された『Wild Honey』だけでなく『Smiley Smile』などのアウトテイク集。
もちろん暗黒期のブライアン自宅スタジオでの録音なのでマニア以外には全く聴く価値のない資料的音源ではあるが、特筆すべきはその音質の良さ。かつて西新宿に通って手に入れたブート盤の劣悪な音質は一体何だったのかと。マスターテープはこんな高品質で録られていたのか。
本などの資料によると、この時期ブライアンは『Smile』制作頓挫のショックで精神を病んで閉じこもってしまい制作現場から遠ざかったとのことだったが、こうして聴いてみるとまだまだプロデューサーとしてバリバリ積極的に指示を与えていたことがよく分かる。
そして自宅録音になったことで、それまでのアメリカを代表するレッキングクルー錚々たる面々を思うがままに操っていたのと比べて演奏こそチープになったものの、コーラスパートへのこだわりはもはや異常レベル。

残るは当時のライブ音源なのだが、これはヒドい。
特にハワイでの演奏はどれもこれも気の抜けたような演奏と歌で、こんな演奏をしていたら当時ジミヘンなどが聴衆を熱狂させていたアメリカの音楽シーンで、ビーチボーイズが時代遅れと嘲笑され一気に人気が急落してしまったのもむべなるかな。
よりによってこれを元にライブアルバムを作ろうとしたがレコード会社に突っぱねられたのも当然だろう。
さすがのマニアでも聴き続けるのが苦痛レベル。