チェリーの音楽幕府

音楽の話題が多いと見せかけてそうでもない

『リング0 バースデイ』

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リングシリーズ4作目。

ここでは呪いのビデオ事件から30年遡り、貞子が怨霊化するに至った経緯が語られる。
とは言っても、おどろおどろしいホラーというよりは人間ドラマが主体になっていて、あまりにも不憫な貞子の生い立ちや恐怖や絶望に観る者は感情移入してしまう。

 主演に大抜擢された若き仲間由紀恵も拙いながらも熱演していて、その人間離れした素っ頓狂な発声が逆に貞子の人並み外れた人格を絶妙に表現しているとも言える。

その他色々腑に落ちない点はあるが、シリーズの中では一番物語に入り込めて面白く観られた気がする。

主題歌も、前作『リング2』の今井美樹にはズコーッとなってしまったが、今作のL'Arc~en~Cielの曲はハマっていてよかった。

リングシリーズはこの先も続いたようだが、この後は貞子がエンタメ化してしまったらしいので、リングシリーズ一気観はこれにて終了とする。

リング0-バースデイー

リング0-バースデイー

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 

大相撲7月場所

コロナ対策で本来の名古屋から両国に場所を移した大相撲「7月場所」が終わった。

結果は大怪我と病気で序二段まで落ちて今場所ついに幕内に復帰したばかりの元大関照ノ富士の劇的な復活優勝。
照ノ富士にはどれだけの賞賛の言葉を持ってしても足りない。その影にはどれほどの涙と努力があったことか。
涙はもうここまでにとっくに尽き果てたということか、感情を表に見せない姿も立派だったし、苦楽を共にした親方から授与される優勝旗など、全てが感動的だった。

横綱の休場は残念だったが、注目を集めた新大関朝乃山が最後まで優勝を争い、12勝は新大関としては立派だった。終盤重圧がかかって負けが込んだのも、今後のためのいい経験になったと思う。
何しろ右四つ左上手を取った時の圧倒的な強さはもう優に横綱級。久しぶりに安定した自分の型を持った力士が現れた。
このまま右四つの型に磨きをかければ大横綱も夢ではない。
終盤中々左上手を取らせてもらえなくなったが、そこは今後の課題だろう。
しかし千秋楽の正代戦では上手を取らなくても相手を圧倒することができたので、取れなければ取れないで上手にこだわることない相撲が取れるのも強い。

そして三役陣が揃って大きく勝ち越すなど、若手の躍進が目立ったのもとても面白かった。
正代、御嶽海、大栄翔と、大関候補が一気に3人も現れ、これからが益々楽しみになってきた。

そして今場所を最も象徴するのは、コロナ対策で少数の観客を入れて行われたこと。
館内での飲食や大声での応援も禁止されたので、聴こえてくるのは拍手のみ。
しかしその拍手も淡白な取組にはあっさりと、熱戦にはさながらクラシックコンサートのように長い拍手と、観ていてとても新鮮だった。
お客さんも土俵に集中しているのが伝わってきて、これはこれで面白いと思った。

以上、照ノ富士の感動的な復活優勝、新大関朝乃山の奮闘、若手の力のこもった熱戦と躍進、そして今まで観たこともないような観客の応援の姿、様々な要素を楽しむことができて、大相撲7月場所は近年稀に見る盛り上がりを見せ、人々の記憶に残る面白い場所になった。

 

www.nikkansports.com

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『リング2』

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何の前知識もなく観たので、てっきり『リング』→『らせん』に続くストーリーだと思っていたら、何故か『らせん』で死んだはずの人たちが次々と出てくる。
どうやらこれは『らせん』とは全く別のパラレルワールド的物語なのだ、と途中で気づくまでは若干混乱した。

この映画での主役は完全に中谷美紀。映画前半では彼女の演技と存在感がとにかく素晴らしい。

そして前作ではホラーよりもミステリー要素が強かったが、今作ではホラーとミステリーのバランスが丁度いい感じで、後半まではかなり面白く観ることができた。

しかし問題は後半。
クライマックスでトンデモ科学の実験で問題を解決しようとする所に至ってはもう支離滅裂。
ここまで素晴らしかった中谷美紀の演技ですら、どういうわけかつられて酷いものになってしまう。

ドウシテコウナッタ?

前半はいい映画だと思ったのに後半でぶち壊し。
実にもったいない。

リング2

リング2

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 

『らせん』

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『リング』の続編。

ここでは主に『リング』の呪いのビデオの謎解きに主眼が置かれるので、ホラー要素よりはミステリー要素の方が強く、あまりコケオドシ的な怖い場面は少ない。
その分、役者陣の演技がしっかりしているので、映画としては見応えがある。
そりゃ確かに松嶋菜々子中谷美紀では文字通り「役者が違う」としか言いようがない。
それほどこの映画での中谷美紀は実に魅力的である。

らせん

らせん

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 

paris match「ROUND 12」

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AmazonPrimeMusicの「今週のディスカバリー」で最近出会った音楽、キヲク座に続いては、paris matchの『ROUND 12』というアルバム。

70〜80年代のシティポップを基調にしたハイセンスなアレンジと演奏に、心地良い女性ボーカルが乗ってとても気持ちいい。
しかしこういうオシャレな音楽にありがちな鼻につく感じはなく、当時の歌謡曲へのリスペクトも感じて個人的にはとても好ましい。
80年代のユーミンが好きな人にはたまらないのではないだろうか。←俺

このアルバム1枚の中でも様々な曲調があり、おまけにどれもとてもいい曲ばかりで捨て曲なし。
あまりにも今の自分の音楽嗜好にドンピシャ過ぎて、大袈裟に言えば今の自分が音楽に求めているもののほとんど全てがこの1枚に用意されてるので、これから1年くらいはもうこのアルバムだけ聴いていれば満足なんじゃないか、と言ってもいいくらい。
いや〜こういう音楽を自分で作りたかったな〜(^_^;)

ちなみにこのparis matchというユニット、実は自分は今まで知らなかったのだが、このアルバムは実に12枚めになるキャリア20年近くになる有名なグループだそうだ。
日本の音楽シーンに疎い自分がお恥ずかしい限りで、今まで知らずにいて本当にすみません💦

逆に、ここで初めて知ったことで、これから残り11枚分の過去のアルバムを遡ってワクワクしながら楽しめるのが嬉しい。

ドライブにもとても合いそうなので、この夏は車でずっと聴いていそう。


paris match「さよならシーサイド」MUSIC VIDEO


paris match「スターダスト」MUSIC VIDEO


paris match「甘い予感」MUSIC VIDEO

 

ROUND 12

ROUND 12

  • アーティスト:paris match
  • 発売日: 2020/06/24
  • メディア: CD
 

 

キヲク座

AmazonPrimeMusicの『今週のディスカバリー』を聴いていて凄いのを見つけた。
その名は「キヲク座」。
誰もが知っている童謡を、大胆なリハーモナイズと再構築したリズムによって全く新しいものに生まれ変わらせている。
そのシンプルにしてセンスの塊のようなサウンドに久しぶりにガツンときた。
音楽にはまだまだこういう表現の仕方があるんだな〜。とても刺激を受けた。

AmazonPrimeMusicの『今週のディスカバリー』は以前は全く使えなかった印象があったけど、久しぶりに聴いてみたらいい仕事をしてくれるようになった。これから毎週チェックするようにしよう。


Kiwokuza - Waiting in Vain [Official Music Video]

 


Kiwokuza - Senro Ha Tudukuyo Dokomademo [Official Music Video]


Kiwokuza - Hiraita Hiraita [Official Music Video]


Kiwokuza - Kantaro, The North Wind KID [Official Music Video]

『リング』

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言わずと知れたジャパニーズ・ホラー代表作(だよね?)。

これまで何度もTVで放送されているので自分も観ているはずなのだが、どうも甚だ不真面目な視聴だったようで、最後に貞子がぐわぁと出てくるところくらいしか覚えてなく、どんな内容だったか印象になかった。

今回初めて集中して全編観たが、貞子が出てくる所以外の謎解きパートは、『火曜サスペンス松本清張劇場』に毛が生えたくらいのレベルで全然怖くないし、大して面白くない。
役者の演技も拙く、正直途中で退屈してしまって風呂場で寝てしまった。←危ない
以前テレビで観た時にほとんど記憶に残っていなかった理由が分かった。
主人公二人がいつの間にか超能力の持ち主になってたし。これ説明あった?
まあ見直して確認しようとも思わないけど…(^_^;)

唯一怖いのはいわゆる「呪いのビデオ」。これは何度観てもトラウマものに凄い。
不鮮明なノイズの中に浮かび上がる意味不明の人や物。よくぞこんな人間の恐怖の潜在意識に訴えかける映像を作ったものだ。

しかしこの映画の最大の功績は、「貞子」の発明に尽きるだろう。
古くから長いこと日本人にとっての幽霊の象徴的イメージだった「お岩さん」を、一気に「貞子」に置き換えてしまったインパクトは、将来歴史の教科書に載せてもいいくらいの大転換の出来事ではないだろうか。

リング

リング

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 

『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』庭田杏珠・渡邉英徳

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予約注文していた『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』が届いた。

古い白黒写真というのは、どこか遠い世界の出来事のような距離感を感じるものだが、それに色がつくだけで一気に距離が縮まり、そこに写る人々の息遣いまでもが伝わってきそうな身近なものになることに驚く。

戦争の写真も多く収録されており、それは教科書の中の歴史上の出来事でなく、まるで昨日の出来事かのような現実感を突きつけられる。

本を実際手にしてみるとずっしりと分厚く、収録写真も満載で非常に読み応えがありそう。

最近はすっかりリアルの書籍を買わなくなって久しいが、こういう貴重な資料は手元に置いておきたい。

 

『仄暗い水の底から』

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 『呪怨』がなかなか面白かったので、この機会に今まであまり縁のなかったいわゆるジャパニーズ・ホラーというやつを探っていこうと思った。

まずはこちら。タイトルからして怖いよ(^o^;)
古いマンションのくたびれた設備や壁のシミ、誰もいない暗い廊下など、誰もが感じる日常のそこはかとない怖さをこれでもかと増幅して表現するカメラワークやライティングは素晴らしいの一言。

物語はそんなさり気なく怖いシチュエーションの中、ただひたすらに降り続ける陰鬱な雨、そして離婚調停中の家族のゴタゴタに、無能極まりない登場人物など、どんどんと不快感ばかりが積み重なっていき、しまいにはどこもかしこも水だらけでジメジメジメジメ不快指数はMAXへ。
登場人物の行動もイライラを増幅させ、冗長なシーンも多く、観ていて気持ちがどんよりしてしまい非常に疲れる。
もう少し短い短編映画だったら名作になっていたかもしれない。

観ていて驚いたのは、マンションの一室にとめどなく滝のように水が降り注ぐシーン。
これは『ノスタルジア』のオマージュではないか!?
これほど酷似したシーンのある2つの映画をほぼ同時に観たのは全くの偶然ではあるが、何かに呼び寄せられたのだろうか?

ちなみに、雰囲気の表現は秀逸ではあるが、ホラー映画としてはさほど怖くはなかった。
これがジャパニーズ・ホラーの特徴なのかな?
もう少し色々観てみたい。

仄暗い水の底から

仄暗い水の底から

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

 

『ノスタルジア』A・タルコフスキー

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昔から名画の誉れ高い映画で、ずっと観てみたかったのに中々見る機会がなかったが、最近HDDレコーダーを整理していたら随分前に録画されていたのを発見して、ようやく観ることができた。

冒頭から期待通りの素晴らしい映像だったのだが、肝心の台詞の内容がほとんど理解できない。
途中まではそれでもなんとか理解しようと一生懸命考えたが、どうしても無理で先に進めない。
そこで、「これはロシアの詩や宗教の素養がないと理解するのは不可能だし、むしろする必要もないのではないか」と思い直し、そこからは台詞は単にBGMだと思うことにして、映像に集中することにした。

すると評判通り、どこを切っても絵画のような、この世のものとは思えない溜息の出るような映像美を存分に堪能することができた。
映像は本当に素晴らしい。
しかしやはり最後まで台詞の内容は理解できないままだった。

こんなアホな自分でも、若い頃はゴダールアラン・レネのような小難しい映画を好んで観ていたが、今思うと果たして本当に理解していたかというと甚だ怪しい。
おそらくは「こんな難解な映画を観ている自分」に酔っていただけなんじゃないかな。
若い頃にありがちなやつね(^o^;)
今『気狂いピエロ』や『去年マリエンバートで』を観たらどう思うんだろう?ちょっと興味がある。

理解できないことを正直に「わからない」と言えるようになったのは、自分も少しは大人になったのかな(苦笑)。

 


ノスタルジア(字幕版)