吉村昭『漂流』
江戸時代、南海の孤島に奇跡的に漂流し12年間生き延びついには自力で船を作って生還した男の物語。
極限状態の上に次々と襲いかかる絶望的な出来事、次々と死んでゆく仲間。
ついには一人となった孤独と絶望と生き抜く力が淡々とした筆致で描かれる。
我が国の漂流文学の傑作。
吉村昭『高熱隧道』
昭和初期黒部峡谷のトンネル建設で実に150℃以上という想像を絶する高熱地帯を掘り進んだ人々の死闘を描く。
工事そのもの以外にも強大な威力を持つ泡雪崩などによって大量の死者を出しながら進む工事は現在では考えられない。
著者独特の冷徹な筆致が悲劇を更に際立たせる。