チェリーの音楽幕府

音楽の話題が多いと見せかけてそうでもない

10月13日  -地獄の二日間 ~後編~-

なんだかんだで結局あまり眠れないまま翌日の朝を迎えた。

こんな日でも朝日はいつもと変わらず絶え間無く万物へ平等に降り注いでいる。

外では子供達のはしゃいだ声がさりげなく登校の時間を知らせる頃だ。

 空腹との戦いが始まった。

これが終わったらとにかく「いいモン」食うぞ!

そう自分に言い聞かせてとりあえずゲームをして気を紛らわすが、頭の中には様々な食べ物が居座って動こうとしない。

あらゆる物が食べ物に見えてくる。

そう。自分の身体さえも。

 ~お手軽3分クッキング~

 まずは太ももは柔らかいのでお刺身でいただきます。

 皮は剥がしにくいので丁寧に優しくゆっくりと剥がして下さい。

 皮を剥いだら今度は肉の番ですが、ここは脂身の多い部分なので・・・・・

閑話休題

なんとか水で騙しだまし午後2時半の検査の時間を迎えた。

再びここにやってこようとは…。

奴等の基地に単身乗り込んだ俺は武者震いを禁じ得なかった。

今日こそは、、、キョウコソハ奴等の息の根を止めてやる。

それには、騙されたふりをしてあの実験室へ潜入するしかない。

おれはじっとそのチャンスを待った。

…誰かが俺の名前を呼んでいる。

怪しげな白衣を身にまとったMad Scientistだ!

度の強い眼鏡の奥から不適な笑みを浮かべてこちらを睥睨している。

この前俺を宇宙空間へ放り込んだ奴とはまた違う奴のようだ。

ショッカーめ、何時の間にこんなに大勢の研究員を養成していたのだ! これは殊のほか急を要するようだ。

ここはひとまず、素直に従って後について行こう。まずは実験室へ潜入することが作戦の第一歩だ。

「はい」

俺はできる限り従順なモルモットを演じて席を立った。

「こんなはずじゃなかったのに」

思わずそんなトシちゃんの歌の一節を呟いている俺がそこにいた。

実験室に入るなり、一糸纏わぬ姿に身ぐるみ剥がれてしまったのだ!

その上にたった一枚の『検査着』のみを着せられて、まるでてるてる坊主のような格好にさせられてしまった俺は、もう既に奴等の術中にはまってしまっていた。

「しまった!騙されていたのは俺の方だったのか!!」

気付いた時にはもう既に遅かった。

俺は大きな板の前に「磔状態」にされていた。

と、突然背後の板が後ろへと回転を始めた。

もしやこれは忍者屋敷の「からくり扉」のような仕掛けになっていて、この裏側の「秘密の部屋」へと運ばれてしまうのか!?

そんな危惧をよそに、ちょうど水平になった所で回転は止まった。

 まさしく「俎上の鯉」とはこの事である。

「膝を曲げて横を向くように」

もうその指示に従うよりほかなかった。

覚悟をきめて静かに目を閉じていると、背後に何者かが近付く気配がした。

そっと薄目を開けて盗み見ると、髪の毛を茶色くしたイマドキの20代の女助手のようだ。

なにか喋っている声が聞こえる。

 「ダメだよ♪ そんなにつけちゃ」

 「えーだってぇ、痛いと思ってぇ・・・」

 「ダメだめ! そんなにつけたら抜けちゃうでしょ♪」

 「はぁい先生・・・うふ♪」

なんだかとっても楽しそう♪

この二人、デキてるに違いない。

どうやらチューブ状の機械の先端に、ローションのようなものを塗っているらしい。

い、一体何をするつもりなんだ!?

ま、まさか・・・・・

「はい、じゃあちょっと失礼しますね~♪」

いきなりその女助手がたった一枚の検査着をめくり、尻を丸出しにされてしまった!

よりによってこんなうら若き乙女に生尻を見られるとは、この期に及んで羞恥プレイを強いるつもりなのか!?

さすがの俺も動揺した。しかし動揺する間もなく、

「ちょっと痛いですけど我慢してくださいね~♪」

「痛い」って?「我慢」って??

 激痛はいきなりやってきた。

 その「まさか」だった。

・・・・・・・・・・

わたし、・・・お尻ははじめてでした。

「い、痛い」と言っても彼のモノは容赦なくわたしの中を掻き回すんです。

そのうち動きが止まると、先端から何か白い液体がわたしの中に流れ込んできました。

彼ったら、もう・・・・・。

でもその頃にはもう最初の痛みはなく、異物感すらも感じなくなっていたんです。

「痛いのは最初だけだよ」

って、その言葉は本当だったみたい。

と、すっかり安心していたら・・・

いきなり、お腹の中に大量の空気が送り込まれてきたんです!

「やめて!わたしは風船じゃないのよ!!」

こんな経験は生まれて初めてでした。

空気でパンパンに膨らんだお腹のせいで、身動きが取れません。

「これはなんというプレイなのかしら・・・?」

そんなことを働かない頭で考える私に、彼ったら矢継ぎ早にいろんなポーズを要求するんです。

お尻の穴に入れたまんま・・・

そしておまけに・・・・・

ああ、シャッターの音が!

カシャッ、カシャッとシャッターの音が響くたびに・・・

そうなんです。わたし、燃えてしまうんです・・・。

そんなわたしの恥ずかしい性癖を知ってか知らずか、彼ったら次々に新しいポーズを要求して様々な角度から写真を・・・。

いったい何十枚撮られたのでしょう。

終わった頃には私、すっかり気が遠くなっていたんです。

放心状態の私に、彼ったら、

「これを飲んで全部出してきて下さい」

って下剤を渡すんです。

あんな恥ずかしいことされた上に、更に下剤だなんて・・・。

しかも、もう普通の仲じゃないのに、彼ったら最後まで事務口調。

ちょっと寂しかったけど、彼とはこれっきりになるような気がしてたので、そこでサヨナラしました。

一生忘れない思い出を残して・・・。

そこはまたしても病院の待合室だった。

一歩外に出ると、冷たい風が頬を打った。

どこからともなく金木犀の香りを運んでくる、それは紛れもなく秋の風だった。

向いの幼稚園では丁度運動会。小さな小さな花達が咲き乱れている。

父親達の眼はビデオカメラのレンズの向こうに縮小されて並んでいた。

先ほどから異常なほどの空腹感を覚えていることに気がついた。

こんな時ほどきまって、小汚いラーメン屋の油ぎった「野菜炒め定食」が喰いたくなる。

随分と長く伸びた歩道橋の影をまたいで俺はゆっくりと歩き出した。

           ~完~