チェリーの音楽幕府

音楽の話題が多いと見せかけてそうでもない

8月17日  -覆水盆に帰省す-

ごぶさた~~~!!!!!

暑い日が続いておりますが、今年の夏は何を思ったか、ふと『クーラーを使わない』生活をしてみようと思い立った。

とても耐えられないと思ったけれど、やってみれば意外にできてしまうものだ!

暑くなったら冷水シャワー!そしてプールに行っては2km泳ぐ!!

というなんだか信じられない程の健康的な生活で、この夏は夏バテ知らずだぜぃ!!!

元々クーラーはあまり得意ではないのだが、こういう生活をしてしまうと、いざクーラーのある場所に行くと気分が悪くなるようになってしまった。

これはこれでどーしたモンか、ってところだが、まあ気にするな。

先日、こんな多忙の中、母方の実家にお盆の帰省をした。

幼い頃の思い出の多くを形作ってくれた祖父と祖母の墓前に手を合わせ、ひとしきりその思い出の場所を、遠い記憶をひも解きながら訪ね歩いた。

こうして改めて歩くのは実に20数年振りということで、さすがに街並も変化していて、頭の中の朧げな記憶と照合するのに戸惑ったが、当時の記憶のままに古い建物が残っていたりすると、やはり嬉しいものだ。あんなに大きくて立派だと思っていたスーパーが、実はこんなにこじんまりした建物だった、、、というようなありがちな発見もあった。

こんな話を聞いた。

かつて、この古い実家の仏壇の祖父の写真の隣に、学生帽姿の少年の写真がいつも飾ってあった。いかにも古ぼけたその写真に、幼心に「誰だろう?」という興味はあったが、結局訊ねる機会を失ってしまい、いつの間にか夏休みも遠いところへ行ってしまった。

今回親戚と話をしていると、叔母が小さな額に入った版画を出してきた。

話を聞くと、母の兄弟には実は母のすぐ上にもう一人兄がいて、その人は14才にして夭折したらしい。

長年の謎がようやくここにきて解けた。

あの写真の少年は、自分の叔父にあたるその人だったのだ!

そしてつい最近になって、彼の死後毎年必ずお盆になるとお線香をあげにくる彼の同級生の家から、一枚の古い版画が見つかった。

彼が生前、学校で描いた版画だった。

叔母が大事そうに出してきたのはその版画だった。

母の兄弟達は、信じられない表情で皆押し黙ってその60年以上前に描かれた一枚の画を食い入るように見つめるしかなかった。

母が「あんちゃん」と万感の想いを込めてそう呼ぶ彼の版画には、時節を反映して日の丸を背にした兵隊さんの姿が、非常に達者な腕で見事に描かれていた。

 皆言葉を発しなかった。

 長い間の沈黙が座を包んだ。

風鈴が真夏の風にそよいで一度だけ鳴った。

窓の外では蝉の鳴き声だけがきっと60年前と変わらずに聞こえ続けていた。

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城壁の天上には突き抜けるような空があった