チェリーの音楽幕府

音楽の話題が多いと見せかけてそうでもない

今更ながらの後追いで聴くユーミンアルバムレビューーその9ー(2004-2011)

最近になってユーミンを聴き始めた自分にとって、先日の紅白歌合戦出場は非常にタイムリーだった。
とはいえ、最近の彼女の生歌には不安のほうが大きく、生出演には半信半疑だった。
しかし蓋を開けてみたら、そんな不安はどこかに吹っ飛ぶほどのさすがのスターのオーラとエンタテイメント性で本当によかった。
本編で披露した『ひこうき雲』と『やさしさに包まれたなら』もよかったが、特にラストのサザンオールスターズのステージに乱入して桑田佳祐と『勝手にシンドバット』を歌ったシーンは、昭和と平成という二つの時代を駆け抜け、また新たな時代に突入しようとするこの稀代の二つの才能にひれ伏す思いだった。まさに平成最後の紅白にふさわしい歴史的シーンだった。いいものを観た。

さて、アルバムレビューに戻ろう。
2000年代になり、アルバムのセールスは激減してしまったものの、ここ数作はそんな中でもしっかりと高クオリティの作品を作り続けてきたユーミン

年齢もいよいよ50代に入り、更に円熟した作品を生み出してくれるのか、楽しみだ。

 

33. VIVA! 6×7('04)松任谷由実

f:id:ongakubakufu:20181220181312j:plain

冒頭、古い洋画の台詞のようなSEから始まり、田島貴男とのデュエットのスウィートソウルナンバー『太陽の逃亡者』、続いてゴージャスなアレンジのスパイ映画のような『恋の苦さとため息と』と来れば、まるで『女王陛下のピチカート・ファイヴ』を彷彿とさせる。
続く『Choco-language』の「イェイイェイウォウウォウ」コーラスもレトロな雰囲気を醸し出して中々面白い。

しかしそういうコンセプトアルバムかと思うのはここまでで、あとの曲は残念ながら正直もう一つ印象に残らない。

田島貴男とのデュエットも、もう一つハマっているとは言えない。

個人的にはやや低調に感じたアルバム。

★5

 

【この1曲】

『霧の中の影』

そんな中から1曲を選ぶのも難しいが、強いて挙げるならばこの曲か。
ユーミン安定安心のバラード。

 

 

34. A GIRL IN SUMMER('06)松任谷由実

f:id:ongakubakufu:20181220181327j:plain

しかしここで終わらないのがユーミンの底力。

これまでもそうだったが、基本的にクオリティの高い歴代ユーミンのアルバムの中でも、やや低調アルバムの次は必ず巻き返してくれる。
その例に違わず、今回も素晴らしいアルバムを作ってくれた。

 まず冒頭の波の音SEから始まり、そこに静かにフェードインしてくるストリングスとともに始まる1曲目の『Blue Planet』のイントロからもう一気に心引き込まれる。

そして2曲めにしていきなりこのアルバムのピークが訪れる『海に来て』。

それに続く『哀しみのルート16』は現代版サーフミュージックという感じで、ミュートギターの刻むリズムとアームを多用するサーフギターの音色が心地いい。

『もうここには何もない』は特に気合のこもったカッコいい曲。
「未来はいつもあとから来ては全てをさらっていく」という歌詞も冴え渡っている。

ユーミンといえば巧みな転調が魅力の一つだが、小室哲哉のような唐突な転調とは違い、必ず流れを伴った自然な転調なので、転調したことに気づかないこともあるくらいなのだが、『虹の下のどしゃ降りで』の転調は珍しくそんな中でも意外性を持つかなりインパクトの強いもの。
キーで言えばB♭からAそしてGそしてCという流れなのだが、そこにそれぞれのキーの基音となるトニックコードが一度も出現しない(多分意図的に)ので、一聴しただけでは調性の混乱が起きる。
ちなみにコードの流れは
E♭M7onF - B♭M7onF - E♭M7onF - Em7 - Bm7 - E13 - Bm7 - E13 - Am7 - D13 - Dm7onG
となるのだが、手元に楽器がある人は是非この流れを弾いてみてほしい。癖になるくらいに気持ちいい。よくもまあこんな流れを考え出すものだ。

 捨て曲なしのままラストの『Smile again』はビートルズテイストで、サビ前のギターのフレーズがかつての『セシルの週末』を思い出させて、古いファンも喜んだのではないだろうか。

うら寂しい曇り空の海のジャケットのイメージの通り、全編を通して憂いを帯びた落ち着いたトーンの良曲が並び、トータルアルバムとしての完成度も非常に高い。

2000年代にして、かつての80年代の名作に肩を並べる傑作が生まれた。
ユーミン実に52歳。その才能は枯れることを知らない。

ユーミン昔は好きだったけど最近はどうもなぁ」という人に是非聴いてもらいたい。

★10

 

【この1曲】

『海に来て』

イントロの波の音を切り裂いてドラムのフィルからイントロが始まり、ふくよかなストリングスとボリュームギターが交互に押し寄せる波を表現するかのように次々と現れ、そのすべての音が心地よく、快感中枢をこれでもかと刺激してやまない。

サビの内声部で木の葉が舞い散るようにハラハラと下降していく柔らかいアナログシンセのフレーズがたまらなくいい。

最後はストリングスの穏やかな旋律に包まれ、再び波の音とフェードアウトしてくところまで本当にパーフェクトなポップミュージック。素晴らしい。

それにしても「微笑めるように」という日本語は初めて聞いた。

 

 

 35. そしてもう一度夢見るだろう('09)松任谷由実

f:id:ongakubakufu:20181220181342j:plain

前作が久しぶりの傑作だったことで今作も期待して聴いたが、『Flying Messenger』 や『Judas Kiss』などユーミンらしいいいメロディの曲もあるが、うーむ、今回は全体的に低調か…。

とはいえ『Bueno Adios』ではタンゴに挑戦したり、『黄色いロールスロイス』では加藤和彦とデュエット(ほぼ加藤和彦生前最後に近い音源らしいのでそういう意味では貴重ではあるが)したりと色々工夫してはいるのだが、どうもパッとしない。
そもそもユーミンはこれまでデュエットだったりコラボだったりフィーチャリングだったり何人かとやっているけれど、どれも成功しているとは言い難い。
なんでかな?ユーミンの個性が強すぎて他人と合わせられない??

全体的にスネアのピッチが高い曲が多く耳に痛いことも気になる。

★6

 

【この1曲】

『人魚姫の夢』

このアルバム、イマイチかな…と思っていたら、最後の最後の『人魚姫の夢』でぶっ飛んだ。

過去のユーミンの数多の名曲に肩を並べる素晴らしい曲ではないか!
これがあるからユーミンはあなどれない。これ一曲でこのアルバムの価値は一気に上がった。

メロディ、アレンジ、歌詞、すべてがうっとりするほど素晴らしいが、特に最後のサビ直前の、ダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッタカトントコトンというひたすらスネアとフロアタムを2小節に渡ってクレッシェンドしながら8分で連打するだけという、これ以上ないシンプルなフィルインが最高にドラマチック。
このフィル、以前にも聴いたことある気がするけどどの曲だったっけ…?

 

 

36. Road Show('11)松任谷由実

f:id:ongakubakufu:20181220181351j:plain

個人的にもう一つの印象だった前作に比べ、『ひとつの恋が終るとき』『コインの裏側』『ダンスのように抱き寄せたい』といった佳曲もあり、ユーリズミックスのような出だしからいきなりポップなサビになる『今すぐレイチェル』も面白いし、『太陽と黒いバラ』ではビブラートをビンビンに効かせてユーミン全キャリアの中でも最もドスの利いたド迫力の歌唱を聴かせてくれたりと、聴きどころはたくさんある。
声もこのアルバムではかなり出ていてコンディションもいいようだ。

ただ、それぞれの曲はまずまずいいんだが、どうも以前あったようなユーミンならではの「うわーこう来たか!」と思わず唸ってしまうような部分が薄れ、曲がみんな妙に素直になってしまったような印象を受ける。

よく言えばシンプルでストレートとも言えないこともないのだが、個人的にはやや物足りない。

★6

 

【この1曲】

『ダンスのように抱き寄せたい』

ここはやっぱり安心安定のユーミン節のこの曲。
年齢相応の歌詞と味わいがよく出た曲。

 

ongakubakufu.hatenablog.com

 

今更ながらの後追いで聴くユーミンアルバムレビューーその8ー(1997-2002)

90年代に入り、『真夏の夜の夢』『Hello,my friend』『春よ、来い』と続けざまに大ヒットを飛ばしたあと、そう言えば自分の記憶ではパッタリとユーミンの曲の印象は残っていない。

実際、当時はドリカムなど若手の台頭があり、一気に世代交代の波が押し寄せたようで、ユーミンの売り上げも急激に降下してしまったようだ。

確かに前2作はやや低迷感を感じるものがあった。

当然危機意識は持っていたと思われるが、その意欲が空回りしてしまっている感じ。

ユーミンはこのまま過去の人となり、終わってしまうのか?と、当時の多くの人は考えたかもしれない。

29. スユアの波('97)松任谷由実

f:id:ongakubakufu:20181204221816j:plain

ところがどっこい、ユーミンは終わってなんぞいなかった。 

一曲目の『セイレーン』の軽快なリズムの爽やかなギターサウンドから、ユーミン流スペクターサウンドの『Sunny day Holiday』、グッとくる泣きのメロディーの『夢の中で~We are not alone,forever』、極めつけの名曲『きみなき世界』、Beach Boys風(実際歌詞に「Good Vibration」が出てくる)の『パーティーへ行こう』の前半5曲の流れは非常に心躍らされる。

時をかける少女』の歌詞はそのままでメロディをまるっと付け替えた『時のカンツォーネ』も、メロディなんていくらでも生み出せるのよ!と言っているようで面白い。

いや〜このアルバムいいねぇ。
堂々たる楽曲と生楽器主体のふくよかなサウンドは自信と風格を感じさせる。

ただ前半の充実度に比べて後半がやや弱いかな…。

★8

 

【この1曲】

きみなき世界

Stingの『Englishman in New York』を彷彿とさせるレゲエのリズムで歌われる悲しい歌。

淡々と刻まれるオルガンのリズムに、ストリングスとガットギターが更に物哀しさを強調する。

 

 

30. FROZEN ROSES('99)松任谷由実

f:id:ongakubakufu:20181204221745j:plain

更に好調は続き、このアルバムも良曲がずらりと並んでいる。
特にアレンジ面ではラップあり、ギターポップあり、高速ビートを刻むボサノヴァあり、インドあり、ジャズあり、レゲエありと、非常にバラエティに富んでいて攻めている感じ。 
特にストリングスのスリリングな使い方が際立っている。
かといって尖っているわけではなく、全体のサウンド的には円熟した優しさに包まれている。

この頃になるとユーミンも、以前のように売り上げを気にせず、やりたいことをやっている感じで非常に好ましい。

このアルバムも大好き。

ただ声の変化(「劣化」とは言いたくない)は更に進行し、その少しディストーションのかかったような声は一種独特の凄みと迫力を増している。
…と好意的に受け取ってしまうのはもしかすると俺も「ファンの贔屓目」に陥っている可能性もあるのかな?(^o^;)

★10

 

【この1曲】

『Rāga#3』

バラエティに富んだ良曲揃いの中でも極めつけはこの曲。
以前からか少しずつ見え隠れしていたユーミンのインド趣味がここで爆発。

電子音とブレイクビーツと歪んだギターと加工された呪術師のような声が、得も言われぬカオスな世界を生み出していて、何度も聴きたくなるほど味わい深い。

サビでおもむろに出てくるおおたか静流のコーラスがまたいい。

これはこの時期でないと生み出せなかった世界だろう。
ユーミンはまた新たな音楽の世界に足を踏み入れた。

 

 31. acacia('01)松任谷由実

f:id:ongakubakufu:20181204221740j:plain

 2000年代に入っても好調は続き、ついには収録曲も一気に増えて14曲入りの意欲作。
創作意欲の高まりと絶好調さがうかがえる。

『TWINS』はAABAという構成で、同じフレーズを執拗に繰り返すがそれが非常に印象的でクセになるのが、かつての『20minutes』を彷彿とさせてとても大好き。

荒井由実が現代に蘇ったような『Lundi』もとてもよい。

どれもかなりの名曲揃いで、14曲あっても全く長く感じない。

ここにまたユーミンの堂々たる名盤が生まれたと言っていい。

2000年代のユーミンもまだまだ大丈夫!

★9

 

【この1曲】

acacia [アカシア]』

名曲揃いのこのアルバムの中から1曲だけを選ぶのは非常に迷ってしまうが、「ユーミンらしさ」に溢れているのがこの曲。

サビの一発目のコードが Ⅴm7/Ⅰ というところが実にユーミンらしく、一瞬にして彼女の世界が眼前に広がる。


32.Wings of Winter, Shades of Summer('02)松任谷由実

f:id:ongakubakufu:20181204221808j:plain

1980年の『SURF&SNOW』VOL.2と銘打たれたアルバム。

たしかに夏の海と冬の雪をテーマにした曲が並んでいるが、そこにはあの頃のような多幸感に溢れた浮かれた能天気さは一切なく、喪失感や過去を振り返るしみじみとした感情が歌われていて、そこに22年の年月の経過がかなり強いコントラストで表現されていて実に味わい深い。

サウンドも堂々とした落ち着いた風格が漂っておりとても心地良く、それぞれいい曲だが、全体を通したイメージはやや地味で、曲数も7曲と少ないこともあり、前作のような圧倒的な満足感には及ばない。

★8

 

【この1曲】

『雪月花』

ユーミンのソングライターとしてのテクニックをこれでもかと詰め込んだ素晴らしいメロディーで、歌詞はいつになく情緒的で、歌も珍しく感情を込めて歌いこんでいる。

歌声も安定していて、この年齢なりの表現の仕方をしっかりと体得した感じで、余裕すら感じる。

 

ongakubakufu.hatenablog.com

 

J☆Dee‘Z YEAR-END PARTY!!!2018

f:id:ongakubakufu:20181217033552j:plain

12月14日にShibuya TSUTAYA O-WESTで開催された『J☆Dee‘Z YEAR-END PARTY!!!2018』に行ってきた。

チケットは早々にSOLD OUTしたようで、自分が入場した頃にはもう後ろまで一杯で、最近の急激なJ☆Dee'Zの認知の広がりと盛り上がりを実感する。

会場の期待が最高潮に達したところで始まったライブ冒頭は3人のダンスパートから始まり、いきなり『Fun Time Funk!!!』『君にStrike』という俺の大好きな真っ黒なファンキーナンバー2連発で一気に心を持っていかれた。
まるで「これがこれからのJ☆Dee'Zの目指す路線だよ!」と高らかに宣言してくれたようで個人的にはとても嬉しかった。
『君にStrike』の大サビのNonoの「アウトでもセーフでもない微妙な関係〜」が色気すら感じる妖しさムンムンで実にたまらない。
欲を言うならもっとリバーブをサービスしてとろけさせてほしかった所。

その後もノリノリナンバーからミディアムバラードまで怒涛の名曲連発。
聴いていて思うのは改めてJ☆Dee'Z曲は本当にいい曲ばかりだということ。
これなら初めて聴く人でも間違いなく心を掴むことが出来るだろう。

そして何より3人のパフォーマンスの向上のスピードの半端なさ。
J☆Dee'Zのライブを見るのは8月以来4ヶ月ぶりの3回目だったが、毎回観るたびにその急激な歌の上達とダンスのキレには目を見張る。

今回も3人それぞれの歌唱力はもちろん、ダンスで激しく動きながらでも全くブレることのない安定感のある発声と、何よりそんな中でもハーモニーのバランスをそれぞれの声量で自在にコントロールする技術の高さに唸ってしまった。

中盤お召し替えタイムで登場したゲストの11歳の超絶天才ウクレレ奏者近藤利樹くん、全く予想していなかったが、彼が実に素晴らしかったことを付け加えておく。
これまた渋い選曲の『コーヒールンバ』のカッコよさにはシビレた。今後要注目。

近藤くんとのコラボをはさみ、後半は3人それぞれのソロコーナーから。
それぞれの個性が発揮されていてどれも良かったが、やはりここでもNonoの『ひまわりの約束』の情感こもった歌声ににしみじみ聴き入ってしまった。

ライブ終盤はもう怒涛のダンスナンバー連発。
客席も一体になって盛り上がる盛り上がる。

こんな中にあって特筆すべきはMOMOKAの歌の安定感。
激しく踊りながらでも音程の確かさは素晴らしく、特に『Answer』でのMC後の静寂のあと、何のガイドもなくおもむろに発せられる「夜空に今」のスパーンと決まった正確なピッチがとても気持ちいい。
三人のハーモニーのピッチが怪しくなる場面でも、MOMOKAを基準に二人が合わせるようにしているようですぐに復活する。
発声も以前と比べて喉が開いて余裕が出てきたので声量も増し、その持ち前の伸びやかな歌声はライブでは実に頼もしい存在になった。

amiのひときわ目を引く存在感はますます凄みを増している。
その真剣な表情と眼力と魅力的な笑顔のコントラストとギャップには誰しも夢中になってしまうだろう。
最近の急激な歌の進化も素晴らしく、3人の歌のレベルが揃い、名実ともに他に例を見ない歌、ダンス、そしてルックスの3拍子揃った堂々たるボーカルアンドダンスグループとなったと言えるだろう。

アンコールでは待望の1stアルバムリリースが発表され、更には春のツアーの追加公演も発表された。
来年にはジェイディーズのさらなる飛躍が期待され、こんなライブハウスで観られるのも今のうちだけだろうな〜。

ラストの名曲『Melody』では撮影OKとなったが、この素晴らしさを目に焼き付けたく、途中カメラを構えるのも忘れて聴き入ってしまった。

前回のクアトロは自分の位置だと低音が回ってしまってやや聴きづらかったが、今回はそんなこともなく、スッキリしたとてもいいバランスで聴くことが出来た。
今回もバンドの演奏は鉄壁で、特にグルーヴ感があったように感じた。
素晴らしいバンドに拍手。

 ライブが全部終了しても、J☆Dee'Zのライブは非常に満足度が高く、12月の寒空の下でもとても心地よい爽やかな気分で帰路につくことが出来た。

本当に素敵なライブでした。ありがとう!

観るたび進化を遂げるJ☆Dee'Zにこれからもますます注目していきたい。

 

f:id:ongakubakufu:20181217033626j:plain

 

リアル流星のパノラマ

東京でのライブから日付が変わってから帰宅。
今日は雲が多いので楽しみにしていたふたご座流星群はあきらめようと思っていた矢先、自宅の前で車の窓から特大の流星目撃。

これはもしかして!?と予感がして、ダメモトで厳寒重装備で近くの公園へ。
しばらく我慢して見上げていると雲はみるみる晴れ、夜空を無数の流星が飛び交っている!

それこそ星が降り注ぐようだった17年前のしし座流星群には及ばないが、それでも感覚的には大体1分間に1個くらいのペースで流れていたので、こんなに凄いのはあれ以来の大当たり!

17年ぶりの流星のパノラマ。

もうあんな体験は二度とできないと思っていた。

気温はマイナス4℃。あきらめないでよかった。

f:id:ongakubakufu:20181215052042j:plain

紀平梨花時代到来

さてさて紀平梨花ちゃんGPファイナル制覇の衝撃からいまだ醒めやらず。
去年のジュニア時代からトリプルアクセルは飛んでいたし、いずれはフィギュア界を背負って立つ存在になるとは思っていたが、まさかシニア1年目からロシア勢を打ち破って世界の頂点に立ってしまうとは正直思わなかった。
トリプルアクセルももちろん凄いが、彼女の場合決してそれだけではなく、驚いたのは通常1年目は低く抑えられがちな演技構成点があのザギトワにほぼ負けていなかったこと。

ザギトワも決して本調子という感じではなかったが、演技構成点でここまで迫られてしまうと、全盛期の短いロシアっ娘ということもあり、来季以降はどうなるかわからない。

五輪金メダリストソトニコワを始めとしてラジオノワもポゴリラヤも今季はGPシリーズの出場はなく、どこへ行ってしまったのか…。(一番好きだったリプニツカヤは引退してしまった)
そんな中で我らがトゥクタミシェワたんの復活は嬉しい。

心配なのはメドベージェワ。ロシアのエテリコーチから離れカナダのオーサーコーチの元に拠点を移したことでまだまだ変化の途上とは言え、今季の演技は一体どうしたことか。昨季までのオーラがすっかりなくなってしまった。

しばらくはこの紀平梨花ちゃんの快挙の余韻に浸っていたいが、彼女とて決してうかうかしてはいられない。
来季以降は恐るべき4回転のトゥルソワ、シェルバコワをはじめ驚異のロシアっ娘ジュニアたちが続々と上がってくる。
紀平さんも4回転はもう既に練習では飛べているので来季以降は当然組み込んで勝負することになるだろう。
これからもますます女子フィギュアから目が離せない。

 

今更ながらの後追いで聴くユーミンアルバムレビューーその7ー(1993-1997)

80年代後半から90年代にかけてのバブル絶頂期のバカ売れ時期を過ぎ、社会的にはバブルは弾けるも更なるセールスを求められる中、新たな音楽を探求し続ける試行錯誤の時期に入った感がある。

さて、そんな状況で90年代のユーミンは一体どんな作品を作っていったのだろうか。
非常に興味深い。

 

25. U-miz('93)松任谷由実

f:id:ongakubakufu:20181114040414j:plain

2作前の『DAWN PURPLE』あたりから作風に現れ始めたワールドミュージックエスニック風味が、ここでついに大ヒット曲『真夏の夜の夢』として一気に結実する。

当時はよくわからなかったが、こうして時系列で聴いていくと、この曲の衝撃度がよくわかる。
曲調といい歌い方といい、これまでのユーミンからはちょっと想像つかない大転換だったのだな。
おそらく以前からのファンは当時この変化にかなり驚いたのではないだろうか。
それでも大ヒットさせてしまうという所がまさにユーミンユーミンたる凄い所。

この『真夏の夜の夢』のインパクトと完成度があまりにも強烈なこともあってか、このアルバムは他の曲の印象がすっかり霞んでしまっている。

色々と新たな試みをしようとしているのはわかるのだが、やや迷走気味で、成功したのは『真夏の夜の夢』だけだった、という感じ。

★5

 

【この1曲】

真夏の夜の夢

というわけで一曲を選ぶとしたらもちろんこの曲。 

言わずと知れたユーミン最大のヒット曲だし、この曲が主題歌だったドラマも観ていたので自分もよく知っている曲だが、正直当時はアクが強すぎてあまり好きではなかった。
しかし今聴くとキャッチーで本当によく出来たいい曲だとわかる。
おそらく自分もここまでの全アルバムを聴いてきて「ユーミンの曲の楽しみ方」をしっかりと掴んだということもあるだろう。
アレンジに関しても、当時松任谷正隆氏が多用していてやや食傷気味だったオーケストラヒットが、この曲にはバッチリハマっている。
「冬彦さ〜ん!」あ、これは「マリオさ〜ん!」の方か。

 

 

26. THE DANCING SUN('94)松任谷由実

f:id:ongakubakufu:20181114040448j:plain

しばらく迷走が続いていた中、ついに『真夏の夜の夢』の大ヒットで自信を取り戻したユーミンが満を持して世に送り出したのが、大ヒット曲『Hello,my friend』。
やや変化球気味だった前作『真夏の夜の夢』に対して、こちらは原点に立ち返ったかのような下降ベースの堂々たるポップスの王道で、漲る自信をひしひしと感じる。

しかしこれだけにはとどまらず、更に続けざまに送り出したのが、ユーミンの生涯を通じての代表作と言っていい『春よ、来い』というのだからこの時期の充実ぶりは凄まじい。

そんな大ヒット曲2曲が収録されているというだけで充分に名盤と呼べるのだが、それ以外の曲もこの時期の好調さを反映してかなりのクオリティを誇る。

中でも忘れてはならない重要曲が『砂の惑星』だろう。
近作見られていたワールドミュージックエスニック趣味が、『真夏の夜の夢』を経て更にここに深化している。
このアルバム全体を聴いて気付くのは、ユーミンの声や歌い方がこれまでとは変わりつつあるということ。
まあ若い頃からおばあちゃんのような不思議な声ではあったが、そんな中に時折見せる可憐な表情にキュンとさせられていたのが、このあたりになるとその可憐さが影を潜める。
特にこの曲などでは、ユーミン特有のちりめんビブラートをあえて強調し、更にホーミー的発声をまじえることで、さながら呪術師の老婆のような得も言われぬ妖しさを際立たせている。
この変化は、おそらく加齢的な声の変化が大きかったのだろうが、それを逆手に取って新たな表現の世界を手に入れるという、転んでもただでは起きない強かさが実に素晴らしい。
当時の自分はこの声がどうも受け付けなかったのだが、ユーミンの歌の楽しみ方を知った今では何とも言えず味わい深いものだ。

 久しぶりに90年代のユーミンに堂々たる名盤が誕生した。

★8

 

【この1曲】

『春よ、来い』

『Hello,my friend』も名曲だが、やはりここは『春よ、来い』にとどめを刺すだろう。。

近作のワールドエスニック趣味で無国籍調の曲が多くなってきたが、それが最終的にたどり着いて結実したのが、自らの生まれ育った「和」だったということか。
その純日本的「和」を表現するのに、安易に琴や尺八などの和楽器を使わずやり切るところに、松任谷正隆氏の心意気を感じる。

耳に残る印象的なピアノのイントロからラストの童謡『春よ来い』のコーラスに至るまで、どこを切っても完璧な紛うことなき名曲中の名曲。

 

 

 27. KATHMANDU('95)松任谷由実

f:id:ongakubakufu:20181114040525j:plain

前作は久しぶりに入魂の傑作だったが、ここではやや力が抜けて趣味に走った感じで、例によってワールドミュージックエスニック風味があらゆる場面で全開。

特に『真夏の夜の夢』〜『砂の惑星』と繋いできた路線を受け継ぐのが『輪舞曲(ロンド)』。
これもまたコッテリしたむせ返るようなエスニックの香りがする曲。

そんな中にあって『Baby Pink』『Delphine』『Midnight Scarecrow』『Walk on,Walk on by』などはかつてのユーミンを彷彿とさせるような作風をアシッドジャズなど新しいアレンジで彩った楽曲で、古くからのファンは一安心したのではないだろうか。

とはいえ前作に入魂しすぎて力尽きたか、今作は全体的にかなり地味で印象に残らない曲が多い。(追記・この印象はしばらく聴いたのちに一変する。聴けば聴くほど良くなるスルメのようなアルバム)

声の変化は前作から更に進行していてやや心配なレベル。

★9

 

【この1曲】

『Walk on,Walk on by』

中々一曲を選ぶのも難しい楽曲群だが、敢えて選ぶならばこれか。
バカラック風味満載のアレンジで、メロディはかつてのユーミン節満開で安心する。
彼女はきっとこういう曲ならいとも簡単に、鼻くそほじりながらでも出来てしまうんだろうな。




28. Cowgirl Dreamin'('97)松任谷由実

f:id:ongakubakufu:20181114040602j:plain

ジャケットを見て、「げっ、またバブリー路線に戻ったか!?」と不安になり、冒頭2曲は今までのユーミンには見られなかったハードなギターロックが続き、あげくの果てにはファイナル・カウントダウンのようなこっ恥ずかしいシンセブラスのイントロなんかも出てきちゃったりして「どうしたユーミン!?」と思ってしまった。

しかし全体を見れば『最後の嘘』という名曲を筆頭に、まずまずの佳曲が並ぶが、ラストの『まちぶせ』のセルフカヴァーは、残念ながら三木聖子や石川ひとみバージョンに遠く及ばない。どうして入れたのかな?

前作で心配された声だが、今作ではやや持ち直してしっかり出ている。

★6

 

【この1曲】

『最後の嘘』

堂々たる安心安定のユーミン節全開の名曲。
有無を言わせず圧倒的な感動を呼ぶ。

 

 

ongakubakufu.hatenablog.com

今更ながらの後追いで聴くユーミンアルバムレビューーその6ー(1989-1992)

時代はついにバブルに突入し、ユーミンのアルバムもシンクラヴィアを導入したド派手なデジタルサウンドや歌詞の内容などにその影響が色濃く現れるようになってきた。

 80年代前半はクオリティの高いアルバムを連発していたが、前作でその勢いが突然失速したことで一抹の不安を抱えながらも、そんなことにはお構いなくアルバム売り上げはうなぎのぼりに異次元のレベルで上昇して、いよいよバブル絶頂期へ。

 

21. LOVE WARS('89)松任谷由実

f:id:ongakubakufu:20181111115706j:plain

バブル絶頂の年にリリースされたこのアルバムは、ジャケットもサウンドもまさに絵に描いたようなバブリー!

相変わらずドッシャンバッシャンキラキラとド派手で本当にやかましいバブリーサウンドで、楽曲はアレレ?だった前作と比べたらやや持ち直しているが、曲によって大きな出来のムラを感じる。

いい曲もあるのだが、全体を通して歌詞もサウンドも聴いていてまるで何かに急き立てられているかのようで、聴き終わるとぐったり疲れる。

まさに色々な意味でバブルという時代を象徴するアルバムと言えるのかもしれない。

ユーミン独特の、本人の多重録音による動きのない機械的でグシャッと密集したクローズドなハーモニーのコーラスはこの辺から始まるのかな?
これは気持ちよくて好き。

★6

 

【この1曲】

『Valentine's RADIO』

このアルバムの代表曲といえば『ANNIVERSARY』なんだと思うが、個人的にあまり好きではないので、めっちゃお洒落な『Uptownは灯ともし頃』と悩みつつもアルバムトップを飾るこちら。

ユーミンお得意のアルバム1曲目冒頭のワクワクするようなお洒落で軽やかなソプラノサックスのイントロから、巧みに転調をからめることで、A〜Fくらいまで構成がたくさんあるように感じる曲。

ほとんどのフレーズが「・タラララ〜・タラララ〜」という全く同じリズムで構成されているのにそう感じさせないという非常によく考えられた曲。

 

 

22. 天国のドア('90)松任谷由実

f:id:ongakubakufu:20181111115818j:plain

一曲目はまるでプリンスかと思った。
まあまさしくそんな時代だね。

とにかくバカ売れしたようで、史上初めて200万枚を突破したお化けアルバムとして記録されているようだが、正直言ってユーミンのこの数年前、80年代前半の一連のアルバムと比較すると出来は格段に落ちる。
時代の勢いというのは恐ろしいものだ。

自分がこれまでユーミンにあまりいい印象を持っていなかったのは、もしかするとこの時期にラジオなどでさんざん流れていたのを嫌でも耳にしていたから、というのもあるのかもしれない。

★6

 

【この1曲】

『時はかげろう』

カルロス・トシキ&オメガトライブに提供した曲のセルフカヴァー。
オメガトライブバージョンも好きだったが、ユーミンバージョンもなかなか。

オメガトライブバージョンとキーが半音しか違わず、おまけに後半転調しているので、オメガトライブバージョンを聴いた直後にユーミンバージョンを聴くと同じキーに聴こえる。
超美メロ曲。
 

 

 23. DAWN PURPLE('91)松任谷由実

f:id:ongakubakufu:20181111115847j:plain

4作続いたドッシャンバッシャンキラキラのいわゆるバブリーサウンドが、ここでようやく落ち着きを取り戻してくれた。
バブルの狂騒がようやくここに終焉したか。

そして久しぶりに冒頭から畳み掛けるように4曲も良曲が続く。
これは今後に向けていい兆しと願いたい。

しかしその後は相変わらず曲ごとの出来のムラが大きい。
間に合わせで作ってしまった(実際はそんなことないんだろうけど)ような、首を傾げたくなるような曲も入っている。

 ハウスやワールドミュージックの影響が見て取れる。

★7

 

【この1曲】

『情熱に届かない〜Don't Let Me Go』

サビのメロディは今までのユーミンにはあまりなかったタイプで、とても力強くてグッとくる、ユーミンの新境地。
ティアーズ・フォー・フィアーズへのオマージュがあからさますぎるが(^_^;)久しぶりに「ユーミンの名曲!」と呼べる曲かも。
 

 

24. TEARS AND REASONS('92)松任谷由実

f:id:ongakubakufu:20181111120010j:plain

落ち着きを取り戻したかに見えた前作とは打って変わって、冒頭2曲がまた派手派手に戻ってしまって一瞬どうかと思ったが、その後はユーミンらしいミディアムな佳曲が多い。

バブルの時期を乗り越えてかつてのようなお洒落で落ち着いた作風が戻ってきたのは嬉しい。

『So High』では『青春のリグレット』で見せてくれたようなクロマチックな和音上昇が再び現れてニヤリとさせてくれる。

ただここ近作で、これまで一心同体で寄り添ってきたユーミンの曲と松任谷正隆氏のアレンジの齟齬を感じるようになってしまった。
「え、この曲でそのアレンジ?」というちぐはぐさが随所で浮き彫りになっている気がする。
たとえば『ミラクル』などは、曲自体もとてもいい曲だし、ベーシックなアレンジもお洒落で心地いいのに、無粋なオーケストラヒットがぶち壊している。
しかも92年といえば自分の記憶ではオーケストラヒットはもう既にかなり古臭いものになっていたはずなのだが…。

ユーミンのアルバムはそれぞれその時代の流行りものを取り入れているのが特徴だけど、このアルバムにもマイケル・ジャクソンかよ!?というアレンジも。

そしてハウスミュージックへの傾倒は更に深まっている。

★7

 

【この1曲】

『瞳はどしゃ降り』

このアルバムで一番の有名曲はトップの『無限の中の一度』かな。
ただ楽曲自体はサビがキャッチーでとても素晴らしい曲なんだけど、ハウスっぽいアレンジが地に足がついていないような感じがしてあまり好きではないので、このアルバムで数曲見られるかつての曲調に回帰した中のこの一曲。

歌い出しがいきなりⅡm7/Ⅴから始まるのも驚きだが、そのまま解決しないでどんどん展開していく所がいかにもユーミンらしい。

フリューゲルホルンとスライドギターがうっとりするほど気持ちいい。

 

 

ongakubakufu.hatenablog.com

 

今更ながらの後追いで聴くユーミンアルバムレビューーその5ー(1985-1988)

ユーミンのアルバムを時代順に1枚ずつじっくり聴くことを始めて、少しずつ時代を追って追体験していくうちに、いつしか「次のアルバムはどんなだろう?」と、ワクワクしてきている自分に気づいた。
同時に当時の時代の空気なんかも併せて思い出すことで、その昔夢中で音楽を聴いていた頃のあの感覚が蘇ってきて、これは思わぬ効果でとても嬉しい。

そして、聴き込めば聴き込むほどユーミンが好きになり、今や完全にユーミンの魅力にハマり込んでしまっている自分がいる。

どうやらユーミンの曲は聴けば聴くほどスルメのように味わいが出てくるようで、以前酷評してしまったアルバムの曲を聴き返すと、「あれ?こんなにいい曲だったのか!」というケースもよくあり、最初の頃はファーストインプレッションのつもりで書いていたのがこれではいかんと思うようになり、今は最低5回は聴き込んでから書くようにしている。

それにしても後追いではあるものの、ユーミンの音楽に出会うことが出来て本当によかった。こんな機会を与えてくれたサブスクリプション音楽配信サービスには感謝するしかない。本当に便利な時代になった。

リアルタイムでユーミン聴いてたら、もしかしたら自分ももっといい曲たくさん書けていたのかな〜…なんて思ったりもして(^o^;)

 

17. DA・DI・DA('85)松任谷由実

f:id:ongakubakufu:20181101220115j:plain

前作『NO SIDE』が、めくるめく名曲のオンパレードの超名盤だったことで、それに続く今作もドキドキしながら聴いた。

1曲目はこの時代らしくスクラッチの音から始まる『もう愛は始まらない』だが、イントロでいきなりハードなギターが出てきて、「これはもしや俺の苦手なロック寄りのユーミンか?」と一瞬思ったが、いやいやとんでもない!これも前作同様名曲揃いの名盤だった。

どの曲も楽曲のレベルが高いし、それぞれ趣向を凝らしたアレンジが施されており、とにかくお洒落で手抜きなし!
その丁寧な仕事ぶりは今聴いても古さを感じない。

名曲『シンデレラ・エクスプレス』はその美しさにうっとりトキメイてしまうし、『青春のリグレット』のクロマチックに上昇していくハーモニーは何度聴いても衝撃的だし、『たとえあなたが去っていっても』のコーラスは最初聴いた時は大袈裟だな〜と思ったが、何度目かで突然その力強さに感動してしまう。
どの曲も本当にクオリティが高い!

サウンド面で一聴してすぐに気がつく変化は、何と言ってもデジタルシンセサイザーYAMAHA DX7の導入だろう。
これまでのユーミンサウンドの最大の特徴は、ほぼ全ての曲で聴かれる松任谷正隆氏奏でるフェンダーローズの音色だった。
それがこのアルバムではついに一部の曲で当時世界中で一世を風靡していたDX7のエレピの音色に置き換わった。

どちらかというとくぐもった温かい音色のフェンダーローズと比較して、DX7のエレピは硬質できらびやかで透明感があるので、一聴して明らかにそれまでとアルバム全体の雰囲気が変化したのがわかる。
早速その特徴をふんだんに活かした『シンデレラ・エクスプレス』という名曲が誕生した。

当時あまりに世界中で多用されまくったことで、当時の時代性を強烈に感じてしまう音色ではあるが、楽器一つでこれだけ音楽の雰囲気を一変させてしまうほどのインパクトある音色はやはりエポックメイキングな楽器だったと言える。
ちなみに自分ももちろん大好きで、初代DX7DX7Ⅱの2台所有していた(^_^;)

DX7の他にも、ドラムにゲートリバーブが掛かったりなど、いわゆる80年代後半サウンドに着々と近づいているが、いわゆるドッシャンガッコンといったこれみよがしな感じではなく極めて抑制的な使われ方にとどまり、 安心して聴くことができる。

★10

 

【この1曲】

メトロポリスの片隅で』

アタマから最後までいい曲ばかりのこのアルバムの中でも有名曲は『シンデレラ・エクスプレス』『青春のリグレット』などもあるが、極めつけはこの曲!

メロディ、アレンジ、サウンド全てが不思議なほどどこを切っても完璧で、ユーミンはここにポップミュージックの真髄を極めたのではないか。

特にサビをもう一度繰り返してもいいところをそうせずに「♪私は夢見るSINGLE GIRL〜」と展開する所が溢れ出る才能を抑えきれない感じがして震撼する。

しかもそれだけにはとどまらず更に畳み掛けるようにシンセでそのメロディを追いかける所に至ってはもうどうにでもして〜とメロメロになってしまう。

 

 

18. ALARM a la mode('86)松任谷由実

f:id:ongakubakufu:20181101220403j:plain

このアルバムはシングルになったような有名曲がないので一見地味に感じるが、何度も聴いてみたくなるような味わい深い佳曲ばかり。

『白い服、白い靴』や『20 minutes』のような、どこかコミカルなストーリー仕立ての曲が多く、普段は意識して何度も聴かないと歌詞を聴き取れない自分にも一回ですんなり歌詞の世界が入って来るのは見事。

ユーミンの歌も『ジェラシーと云う名の悪夢』で顕著なように、珍しく(笑)上手く歌おうとしているようでよく声も出ているし、その分歌詞も伝わってくる。

『白い服、白い靴』はかつての『曇り空』を彷彿とさせる歌詞だが、あの頃のような重苦しさはなく、やはりどこかコミカルでフワフワした描写が心地いい。
それにしても女心はわからんね・笑

『Autumn Park』はUTYのスポットニュースで使用されており、山梨県民なら誰もが聴いたことのあるイントロ。
ユーミンの曲だったのか〜!
とてもいい曲。

『3-Dのクリスマスカード』のサビはアレンジ込みで何故か無性にグッとくる。
一体何なんだろう?

サウンド面に関しては、前作で目立ったDX7の音が影を潜め、再びフェンダーローズに戻ったようだ。マンタさんのお気に召さなかったのかな?

ドラムの音が少しずつ派手になりつつあるものの、全体的にはまだまだ落ち着いたサウンドでとても聴きやすい。

聴けば聴くほどスルメのように味が出てくる、地味だけど大好きなアルバム。

★10 

 

【この1曲】

『20 minutes』

特にこの曲は歌詞が非常に面白く、アレンジもそれに合わせてどこかすっとぼけた味わいで、何度も聴きたくなる摩訶不思議さ。
その秘密を探りたくなる。
「いやだ久しぶりね」の歌い方が最高!

途中でおもむろに脈絡なくオーケストラヒットが出てくるのは、ま〜この時代らしい。

 

 

 19. ダイアモンドダストが消えぬまに('87)松任谷由実

f:id:ongakubakufu:20181101220526j:plain

前作では落ち着きを見せていたサウンドだったが、ここに来て一気に80年代後半のいわゆるド派手なバブリーサウンドに突入!
そのデジタルな肌触りはこれまでとは明らかに一線を画す。
このタイミングだったか〜。

調べてみると今作からシンクラヴィアを導入したとのこと。

シンクラヴィアか〜…、当時雑誌などで「1億円近くする世界一高価な楽器」として存在は知っていたが、「日本で所有しているのは加山雄三だけ」などというまことしやかな噂が囁かれるほどで、当然のごとくそんな庶民にはとても手の届かないような楽器は楽器屋さんにも置いているはずはなく、一体どんな音がするのかはいくら想像を膨らませてもサッパリわからなかった。

どうやらサンプラーでもありFMシンセでもありワークステーションでもあり、当時出来ないことはないとまで言われるほど万能で画期的な楽器だったようだ。

だから何でも出来る分、DX7のようなその楽器特有のコレといった個性的な音があるわけでもなく、音色としてはとらえどころのない正体不明な楽器だったことは仕方のないところか。

まあとにかくこのアルバムのデジタルな質感はそのシンクラヴィアによるもののようで、ドラムの音はドッカンバッシャンとにかく派手でうるさくなり、打ち込み主体のデジタルで硬質なサウンドになった。

しかしそれにより相対的に歌のレベルが小さくなってしまった。
今回の歌詞の世界は以前にも増して更に研ぎ澄まされた感があり非常に面白いのに、歌が小さくなったことでせっかくの歌詞が聴き取りづらくなってしまったのは残念。

とはいえ楽曲のレベルは相変わらず非常に高く、今回も良曲揃い。

全体的に派手な音作りではあるが、ラストの『霧雨で見えない』は今までのようなアナログで暖かいサウンドで安心させてくれる。

★9

 

【この1曲】

『ダイアモンドダストが消えぬまに』

キャッチーなメロの『思い出に間にあいたくて』と迷ったが、ここはやはり表題曲で。

聴いていて気分がワクワク高揚してくるポップでお洒落で本当に素敵な曲。
それなのにこの曲がシングルじゃなかったというのが驚き。
といっても歌詞は意外と寂しかったりするのね。

イントロでは「あ〜ジョー・ジャクソンが好きだったのね〜」というのが伝わり過ぎるくらい伝わってきて微笑ましい(^_^;)

 

 

20. Delight Slight Light KISS('88)松任谷由実

f:id:ongakubakufu:20181101220621j:plain

さて、前作では一気にバブリーサウンド全開に変貌したわけだが、今作のサウンドは前作から更にドッカンキラキラと派手さを増し、ドラムがとにかく硬くて耳に痛くてうるさい。
前作はそれでも相変わらず高クオリティの楽曲が揃っていたのだが、今作は…、あれれ?ユーミンどうしちゃった???と言いたくなってしまうくらい楽曲が低調な感じ。

まるでこれまで曲にかかっていた魔法が一気に解けてしまったかのよう。

ここまでずっと連続して何作も生涯愛聴したいほどの愛聴盤を連発してくれていたのが、ここに来てさすがのユーミンにも疲れが見えてきたか。
売上は凄かったようだが、この先どうなってしまうのか一抹の不安が募る。

★5

 

【この1曲】

『リフレインが叫んでる』

そんな中でも唯一この曲だけは別格。

冒頭の「♪どうしてどうして僕たちは出会ってしまったのだろう」というフレーズは、これをキャッチーと言わずして何をキャッチーと言うのかと思うほど超強力で、ユーミンの楽曲の中でも一二を争うくらいのキャッチーなメロディと歌詞の融合ではないだろうか。

 

 

ongakubakufu.hatenablog.com

 

今更ながらの後追いで聴くユーミンアルバムレビューーその4ー(1982-1984)

前作、名盤『昨晩お会いしましょう』からいよいよユーミンの80年代快進撃が始まった。

13. PEARL PIERCE('82)松任谷由実

f:id:ongakubakufu:20181024212414j:plain

前作『昨晩お会いしましょう』に引き続き、落ち着いたAORサウンドに更にブラック・コンテンポラリー要素が加わった感じで、聴いていてとても心地よい。

 これも前作同様、1曲目の『ようこそ輝く時間へ』のイントロが始まった瞬間の名盤の予感ひしひしのワクワク感がハンパない。
そしてその後の展開もその期待を裏切らない、お洒落で落ち着いた良曲が満載。

ユーミンの楽曲と松任谷正隆氏はじめ制作陣が冴え渡っている。
この時期の絶好調が伝わってくる。

★10

 

【この1曲】

『DANG DANG』

このアルバムで有名曲と言えば『真珠のピアス』と並んでこの曲かな。

かなり渋めのメロディの曲が多い中で、この曲は特にキャッチーで耳に残る。

 

 

14. REINCARNATION('83)松任谷由実

f:id:ongakubakufu:20181024212434j:plain

『昨晩お会いしましょう』『PEARL PIERCE』と2枚連続で傑作が続いて、次もと期待したが、おっと何だこれは???

 これまではアルバム冒頭の1曲目で「おっ!」とワクワクさせてくれたが、これはその感覚は全くなく、それどころかアタマから2曲続けてダサダサで正直ガッカリ。

とはいえもちろんこの時代の作品を現代の感覚で振り返っているわけで、当時の「時代性」を加味しなくてはいけないことは充分承知しているつもりだが、それにしたってこれはちょっと…。

そもそもREINCARNATIONというタイトルからして仰々しいし、アルバム全体を通して、「姫、ご乱心!?」と言いたくなるような、どこか浮足立って地に足がついてない印象。

2作続けて落ち着いた良作を作ったことでイメージチェンジを図ろうと冒険したのかもしれない。

ユーミンの場合は、ロックに寄せてくると途端にダサくなるのかな〜。

★7

 

【この1曲】

『NIGHT WALKER』

そんなわけでこの中から1曲を選ぶのも難儀だが、強いて選ぶとすればこの曲か。

浮足立った雰囲気の中で唯一前2作のような落ち着いた音作りで、地に足がついている感じ。

 

 

 15. VOYAGER('83)松任谷由実

f:id:ongakubakufu:20181024212454j:plain

前作では驚かされたが、ここでは落ち着きを取り戻してくれたようでホッと一安心。

楽曲は、当時アイドルへの楽曲提供が盛んだったことを反映してか、 メロディアスでポップな佳曲が並ぶ。

個人的にはこのアルバムでユーミンがヒット曲のメソッドを完全に掴んだような気がする。

★9

 

【この1曲】

『不思議な体験』

このアルバムの有名曲と言えば『ダンデライオン〜遅咲きのたんぽぽ』と『時をかける少女』だと思うが、そのどちらもいいが自分が一番好きなのはこの曲。

とにかくサビのメロディとハーモニーには神が舞い降りている。

 

 

16. NO SIDE('84)松任谷由実

f:id:ongakubakufu:20181024212511j:plain

このアルバムはとにかく2曲目からの
ノーサイド
『DOWNTOWN BOY』
『BLIZZARD』
という怒涛の名曲3連発が強力すぎる!

この3曲だけでもう完全にノックアウトレベルなのだが、更にB面の
『破れた恋の繕し方教えます』
『午前4時の電話』
『木枯らしのダイアリー』
の地味ながら隠れた強力3連発畳み掛けも凄い。

『破れた恋の繕し方教えます』なんかはイントロで「えっ、CCBか!?」と一瞬あ然としてしまうだが、歌が入れば大丈夫(笑)。
サビなんかホントにキャッチーで最高のメロディ。
ルイス・ジョンソンのベースは正直うるさい(^o^;)

それにしてもよくぞこんなにいい曲を集めたものだ。
ノリにノッてるユーミンの文句無しの傑作アルバム。

しかし自分は『SHANGRILAをめざせ』だけはダメ(;´Д`)
あまりにもギャップが激しすぎるが、こういう振れ幅の大きさもユーミンの特徴の一つなのだろう。

★10

 

【この1曲】

『BLIZZARD』

本当に名曲揃いのこのアルバムだが、自分にとってはやはり、ある時この曲と同じ状況の吹雪の中スキー場に向かう車の中で偶然聴いて感動し、それまで聴かず嫌いだったユーミンを改めて聴いてみようと思わせてくれたこの曲に感謝したい。

本当にアレンジも含めてよく出来た素晴らしい名曲で、特にサビの「♪包め〜世界を〜」で、ⅥマイナーからⅥメジャーに変わる瞬間の、歌の伸ばしにエレピの上昇フレーズが追い越していく所がギリギリ際どくてスリリングでドキドキして何度聴いてもたまらない(*°∀°)=3

 

 

ongakubakufu.hatenablog.com

 

高橋ユキヒロ『Saravah Saravah!』

f:id:ongakubakufu:20181025134306j:plain

1978年発売の高橋ユキヒロ『Saravah!』。

数年あと追いだったが、子供の頃の自分にとって多大な影響を及ぼし、まさに擦り切れるほど聴き倒した「超」をいくつ付けても足りないほどの超名盤。

そんな名盤がこの度、40年の年月を経てヴォーカル新録音でリミックス(!)・リマスター盤として現代に蘇った。

早速聴いてみると、薄皮が何枚も剥がれ、全ての楽器がまるで目の前で演奏しているかのようにクリアになったことで奥行きと立体感が幾倍にも増し、坂本龍一の弦とブラスをふんだんに使った洒脱でゴージャスなアレンジが一層引き立つ素晴らしい出来上がり。

奇跡的に当時のマスターテープが現存しており、リミックス&リマスターが成されたことで、例えば『C'EST SI BON』の冒頭ヴァース直後のスネアのフィルのキレの良さだったり、才気ほとばしる若き坂本教授のハードコア・フュージョン『ELASTIC DUMMY』でのブラスの生々しさで改めてこんなにカッコいい曲だったのか!と気付かされたり、『LA ROSA』のとろけるようなハモンドの音は何度聴いてもいい。

高橋ユキヒロも坂本龍一も当時26歳。この若さでこんな音楽を作れた才能と実力は尊敬するしかない。
26歳にしてエリントンナンバーの『ムード・インディゴ』をカヴァーするなんていくらなんでも渋すぎる。

ふと気づいたのだが、このアルバムがリリースされた1978年というのは、自分にとって好きなアルバムがとても多い。

たとえばYMOにしてみたら結成直前、ユキヒロさんのこのアルバムをはじめ、坂本龍一千のナイフ』、細野晴臣『はらいそ』と、3人とも素晴らしいソロアルバムを作っている。

他に考えてみると、この界隈だけでも大貫妙子『MIGNONNE』だったり、ムーンライダーズだと『NOUVELLES VAGUES』だったりとか、ユーミンの『悲しいほどお天気』とオフコースの『Three and Two』は…どちらも79年か、まあとにかくこの時代は好きなアルバムばかり。

フェンダーローズとウォームなギター、きっと自分はこの年の音が特に好きなんだろうと思う。

翌年の79年になると、ニューウェーヴの嵐が押し寄せ、尖った音ばかりになる直前、成熟しきった最後の幸せで優しい音の中にも、その後の時代を担う若き才能が現れ、ニューウェーヴ前夜の高揚が密かに伝わってくる感じ。

細野さんが『はらいそ』のラストで、曲が終わった後わざわざ走って戻ってきて「この次はモアベターよ!」とエコー付きで叫びたくなった興奮がよく分かる、そんな高揚した時代。

そんな年にまるで何かに引き寄せられるように出会った3人の若き才能が、YMOとして次代の音楽を引っ張っていったのは必然だったのだろう。