チェリーの音楽幕府

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『おかえりモネ』を振り返る

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連続テレビ小説『おかえりモネ』が終わって1週間が経った。
この作品を最後に朝ドラ視聴をやめてしまうつもりでいたので、できることならこのまま振り返らずに「なかったこと」として記憶の奥底に封印して忘れ去ってしまおうと思ったが、次の『カムカムエヴリバディ』の出来があまりにも素晴らしく、一気にまた朝ドラの世界にどっぷりハマりそうなので、自分の中で気持ちよく次に進めるようにきちんと『おかえりモネ』を総括しておくことにする。

まずドラマが始まる前の制作発表で驚いた。
脚本安達奈緒子、主演清原果耶といえばあの名作『透明なゆりかご』と同じ組み合わせであり、清原果耶さんは『精霊の守り人』や『螢草 菜々の剣』での清冽な佇まいと演技が光る個人的に最も注目している若手女優だったので、近年低迷傾向にある朝ドラの救世主としてこの作品に大いに期待していた。

しかし始まってみればドラマ全体にどうも精彩がなく、朝ドラに絶対必要なキラキラ・ワクワク感が全く感じられないまま「この布陣ならいつか必ず面白くなるはず」と自分に言い聞かせながら我慢して観続けるも、物語が進めば進むほど停滞し、一言で言うと「全く面白くない」まま最後まで観続けてしまった。

こうなってしまった原因は、何と言っても主人公百音とその周辺、特に相手役の菅波医師と、妹役の未知のどんよりボソボソとした覇気のない演技に尽きるだろう。
清原さんは元々「元気はつらつ!」というタイプではないにしても、あまりにも無表情でどんよりボソボソしすぎていて、その名前のような清らかな魅力が全く活かされていなかった。
菅波医師とのロマンスに至っては、二人が愛し合っているようには最後まで見えなかったし、同様に未知と亮のカップルもみーちゃんの執着ばかりが目立って、りょーちんがみーちゃんのことを好きになった風にはとても思えなかったように、このドラマでは恋愛パートのキラキラキュンキュン感は一切感じることができなかった。
最近の朝ドラはどの作品でもスタート前は期待が大きかったヒロインを演じる役者のそれまで感じていた魅力が全く活かされずに「どうしてこうなった?」と疑問を抱くことが多かったが、やはり今作でもそうだった。
演技プランは一体どうなっているのだろうか?
そんな中でもとりわけ期待が大きかった清原さんだが、このドラマ以前に彼女に感じていた魅力は錯覚だったのだろうか?、とすら思わせてしまうのは彼女にとっても本意ではないだろう。
どうか彼女には次の出演作ではあの清冽な魅力を取り戻してほしい。

ひたすらどんよりしたまま物語は進み、最終週でようやくこのドラマの本題とも言える震災を絡めたテーマが出てきたが、時既に遅し。
残された最後の数回ではアリバイのようにサラッと触れることしかできずに何となく終わってしまった。

この最後に出てきた震災によるPTSD的な心の傷、その経験の有無の差異のギャップ、そして故郷に残った者と出た者の心のすれ違いをいかにして埋めるかなどにテーマを絞って、菅波との恋愛パートをバッサリカットして夜のドラマ10あたりの枠で全10回くらいに凝縮すれば、もしかするととてもいいドラマになったような気もする。
それなら演技もどんよりボソボソで雰囲気としてはOKだろう。

しかし以上のように、個人的に期待が非常に大きかったこのドラマは、残念ながら朝ドラとしては大失敗作だったと言わざるを得ない。
そもそもここ数年の朝ドラは期待を裏切る作品ばかりだったが、今作でとどめを刺した感じになり、毎日継続して観続けるのが精魂ともに疲れ果ててしまった。

次作の『カムカムエヴリバディ』のテーマや役者にも始まる前はさほどの興味を惹かれなかったこともあり、『おかえりモネ』を最後にもう朝ドラからは離れるつもりでいたが、やはり気になって最初だけ観たところ、第1週目にして『カムカムエヴリバディ』のあまりの面白さにいきなりハマってしまった。
キラキラ・ワクワク・ドキドキ、、、朝ドラの魅力がこれでもかと詰まっているではないか。
こういうのを観たかった。
1日に繰り返し2度観、3度観したりして、こんなのは『あまちゃん』以来実に8年ぶりで楽しんでいる。
一度は離れようと思った朝ドラの世界にまた戻ることができて、これから半年間が楽しみでならない。

さよならモネ。